2021年2月16日
共和党のトランプ前大統領の弾劾裁判は2月13日、無罪評決となった。
民主党は議会襲撃への怒りを原動力に発生から1週間で弾劾訴追にこぎ着けたが、トランプ氏の退任や裁判開始まで時間が空いたことで機運を逸した。
この間に国民の関心は低下し、共和党の大量造反を誘うような世論を喚起できなかった。
「われわれが今日、目の当たりにしたのは共和党の臆病者集団だ」。
民主党のペロシ下院議長は13日、身を震わせながら無罪票を入れた共和党上院議員を非難した。
トランプ氏との4年間にわたる対立の果てに起きた議会襲撃で、暴徒から標的の1人に挙げられたペロシ氏。
「個人的な思い」 (米メディア) が2回目の弾劾手続きを推し進めた側面があった。
裁判で有罪になれば、トランプ氏が今後出馬する資格を剝奪する道も開け、共和党内にくすぶる「脱トランプ」の動きを促す思惑もあった。
だが、1月13日に弾劾訴追決議を可決したものの、上院で議席が同数の民主、共和両党の協議で2月9日まで審理が開かれないことが決まった。
「“政治中毒”の友人でさえ裁判中継を見なかった。米国民は早く終わりにしてほしいと思っていた」 (政治学者) との分析も出た。
上院共和党トップのマコネル院内総務は当初、裁判内容を見て有罪か無罪のいずれに投じるか判断すると語った。
しかし、党派で分断した世論に変化がなく、大統領を退いた一般市民を罷免することは「不可能」という形式論を用いて無罪票を投じた。
バイデン大統領は声明で「米国に暴力や過激主義の居場所はない。真実を守り、嘘 (うそ) を打ち破る義務と責任がある」と強調、トランプ時代との早期決別を呼びかけた
◆ディキンソン大 ( ペンシルベニア州/私立大) のデービッド・オコネル准教授 ( アメリカ政治学) の話:
弾劾裁判の結果はアメリカの政治に大きな影響を与えないだろう。
民主党は有罪に持ち込み、トランプ前大統領の今後の出馬資格を奪うことを狙ったが、もはやトランプ氏は有力な大統領候補になり得ない。
昨年の大統領選で予想以上に善戦したものの、敗北を認めず結果を覆すよう圧力をかけ、議会襲撃が起きて自滅した。
共和党指導部がトランプ氏を党候補選びで再び支持することはないだろう。
民主党はトランプ氏や陰謀論に加担する議員を「共和党の顔」と強調し、有権者に過激な政党という印象付けを図っている。
現時点では上手くいっているが、長くは通用しない。
共和党は州レベルで優位を保っており、来年の中間選挙では下院多数派を奪還するのではないか。(ワシントン共同)
(2021年3月1日号掲載)