Saturday, 24 May 2025

反リンチ法成立、人種差別で禁錮30年 1世紀経て、連邦法の憎悪犯罪に規定

2022年3月31日

バイデン大統領は3月29日、人種差別に基づくリンチを連邦法の憎悪犯罪とする反リンチ法案に署名、同法は成立した。

リンチで相手を死傷させた場合、最高で禁錮30年の刑に処せられる。

人種差別が合法だった時代もあった米国で長年、保守派の抵抗などで廃案となってきたが、黒人に対する暴力事件の続発で機運が高まり、1世紀以上の歳月を要して成立に漕 (こ) ぎ着けた。

「無実の男女や子どもが首を絞められ、焼かれた。黒人というだけで、投票や学校に行こうとするのが罪とされた」。

バイデン氏はホワイトハウスの庭園で開いた署名式で、黒人に対するリンチの歴史を振り返った。


ティム・スコット上院議員 (共和党、サウスカロライナ州) は、バイデン大統領が反リンチ法案に署名したことについて声明を出した。


 「この4年間、私は友人・同志とともに、何度も不成立に追い込まれた法案『反リンチ法』に懸命に取り組んできた。

1世紀にわたる試みが失敗を繰り返した後、我々は遂に目的を果たした。

共和党や民主党のためではなく、党派を超えて、全てのアメリカ人のために正しいことを行った。

邪心を持つ者が撒 (ま) き散らす暴力や憎悪を決して許さない、この歴史的な法案可決の瞬間に立ち会い、自分たちが一役担えたことを誇りに思っている」 と述べた。


スコット上院議員は、2018年に初めて反リンチ法案を提出し、2019年にはコーリー・ブッカー上院議員(民主党、ニュージャージー州)、カマラ・ハリス上院議員(現・副大統領=民主党、カリフォルニア州)とともに再び法案を出した。


米国では「リンチ」という言葉から、法の枠を超えて証拠も裁判もなく黒人を殺害したり、吊 (つ) るしたりした負の歴史を想起する人が多い。

奴隷解放後に人種隔離政策が取られた南部を中心に横行

米メディアによると、18821968年には4,000人以上がリンチを受け加害者の99%が刑罰を逃れた


米議会では1900年に同種の法案が初めて提出されて以来、200回近く廃案に追い込まれてきた。

2020年に南部ジョージア州でジョギング中の黒人男性が白人3人に射殺される事件が起きるなどして、リンチに注目が集まり、上下両院で法案が可決された。


成立した法律は、1955年に南部ミシシッピ州を訪れて白人女性に口笛を吹いたとして白人の男2人に拉致、射殺された14歳の黒人少年の名前にちなみ「エメットティル反リンチ法」 (Emmett Till Antilynching Act) と名付けられた。

67年前に起きた事件の容疑者2人は、全員白人の陪審員の評決で無罪となっている。



(2022年4月16日号掲載)