2023年7月1日
大リーグ機構 (MLB) は6月24日にロンドンで4年ぶりに公式戦を開催し、カブスの鈴木誠也外野手やワールド・ベースボール・クラシック (WBC) 日本代表で活躍したカージナルスのラーズ・ヌートバー外野手が巧打・攻守で欧州のファンを魅了した。約55,000人が詰めかけた4年ぶりのロンドン開催。
鈴木選手は「独特な雰囲気があった」と話し、ヌートバー選手は「セレモニーや選手紹介、音楽など全てが良かった」。
それぞれに、いつもとは少し違う試合を楽しんだ。
ヌートバー選手は欧州開催の意義について「野球を広める良い機会。とても重要」と語った。
欧州での野球普及を目指す大リーグ機構の目的に一役買った形の両選手。
鈴木選手は「観客を楽しませることができた。それが一番の目的」と強調する。
▽大盛況
MLBが海外展開を進め、市場拡大を狙う背景には、米国内での野球離れへの危機感がある。
会場は、2012年五輪・パラリンピックのメインスタジアムだったロンドン競技場。
野球がマイナーな英国で6月24、25日の2日間で約11万人を集めた。
新型コロナウイルス禍で3年延期されていただけに、29歳の英国人男性は「本場の野球を観戦できるのは本当にうれしい」と喜んだ。
4月29、30日のメキシコシティでの公式戦 (パドレス vs. ジャイアンツ) も満員で、MLB運営戦略統括のクリス・マリナク氏も「見たことがない盛り上がり」と語った。
大リーグは試合時間の長さなどを理由にファン離れや視聴者の高齢化が課題。
時間短縮のためのルール変更や海外進出で新たなファン層を切り開こうとしている。
▽後塵
MLBは2019年の初開催でも成功を収めたロンドンを足掛かりに、欧州での存在感を高めたい思惑だ。
同地では2024、26年も開催予定で、ヤンキースは2025年にパリでの試合を検討中と報じられている。
背景には、市場開拓で他の米プロスポーツの後塵 (こうじん) を拝していることがある。
プロフットボールNFLは2007年からロンドンで試合を開催し、昨季はドイツに進出。
バスケットボールNBAは欧州出身の有力選手も多く、国際的な人気を誇る。
AP通信は大谷翔平選手 (エンゼルス) を引き合いに「海外展開を進めるには、その地域出身のスター選手が不可欠」との米大学教授の言葉を紹介した。
日本を中心としたアジア市場の拡大にも野心を抱く。
ダルビッシュ有投手や韓国人内野手の金河成 (キム・ハソン) 内野手が所属するパドレスが、2024年の開幕戦をソウルで初めて行う計画が伝えられた。
2025年には日本で6年ぶりの公式戦を行うことも検討され、大谷選手の凱旋 (がいせん) 試合が実現するかもしれない。
マリナク氏は「大谷が所属するチームの意向や開催時期次第だが、可能性はある」と述べた。
*写真上:米大リーグの公式戦がロンドンで4年ぶりに開催。試合会場は2012年五輪・パラリンピックのメインスタジアムだったロンドン競技場 (6月24日)
(2023年7月16日号掲載)