9/9/2025
カリフォルニア州で16歳の少年が自殺した事件をめぐり、両親がChatGPT開発元のOpenAI社を相手取り提訴した問題で、同社が発表した新しいペアレンタルコントロール機能 (保護者管理システム) に対し、遺族側弁護士は「危機対応の域を出ない」と批判した。
▪️訴訟の経緯
自殺したのは高校生のアダム・レインさん (当時16歳)。彼の両親は9月初め、同社を「過失と不法行為による死亡」で提訴した。訴状にはアダムさんがChatGPTに自殺願望を打ち明けた記録が添付されており、AIが彼の破壊的な思考を「肯定した」と主張している。これが米国で初の「生成AIによる不法死亡訴訟」となった。
▪️OpenAIの対応と新機能
提訴報道を受け、OpenAIは「困難な状況にある利用者には専門的支援を勧めるよう設計しているが、意図通りに作動しなかった事例がある」と批判を認めた上で改善を約束した。さらに、今回の追加措置として、保護者が次のような管理を行える新機能を発表した。
• 保護者アカウントと未成年アカウントの連携
• メモリーやチャット履歴など機能の制限設定
• 子どもが「深刻な危機状態」にあると検知された際の通知受信
同社は「青年発達、精神保健、人間とコンピュータの相互作用」分野の専門家と連携し、科学的根拠に基づく方針を策定するとしている。
▪️遺族側の反発
しかし、遺族代理人のジェイ・エデルソン弁護士は「危険な製品を市場から撤去するのではなく、曖昧な改善策で矛先を逸 (そら) そうとしている」と批判を緩めない。「ChatGPTは即時に停止すべきだ」と強調した。OpenAIはこの批判に対して現時点でコメントしていない。
▪️広がる安全対策の潮流
ChatGPTは13歳以上が利用可能で、18歳未満は保護者の同意が必要とされている。今回の発表は、未成年のオンライン利用安全を強化する世界的潮流の一環でもある。英国ではオンライン安全法に基づき、RedditやX、アダルトサイトで年齢確認が導入された。また今週、Meta社 (Facebook、Instagramを運営)は、自社AIチャットボットが未成年者に自殺や摂食障害といった話題に触れないよう制限を強化すると発表した。米上院議員は、同社AIが「未成年者と性的な会話をする恐れがある」との内部文書を受け調査を開始しており、大手IT各社は未成年保護への姿勢を問われている。
▪️今後の課題
シャープな規制強化が進む一方で、AIと若者の関わりは依然として不透明な部分が多い。子どもたちに及ぼす潜在的リスクが軽視されてきた例と同様に、AIにおける心の健康被害も「想定外」で済ませられない段階に入りつつある。今回の訴訟は、AI企業の責任と未成年保護のあり方を問う試金石となりそうだ。