August 21, 2025

米国に内戦の危険が高まる? その要因と回避策 UCSD バーバラ・ウォルター教授が警鐘、KPBS報道

7/15/2025

CIAの諮問パネルで各国の内戦を予測してきたカリフォルニア大学サンディエゴ校の政治学者バーバラウォルター教授は、米国にも同じ予兆が出現しつつあると指摘する。

KPBSのインタビューで語った。

同教授によれば、アノクラシー (anocracy独裁色が際立つ不完全な民主主義) と人種宗教民族に基づく政党化の2つが内戦発生の最大要因になるという

米国は2016年以降、急速な民主主義の劣化によりアノクラシー領域へ転落し、トランプ前大統領の再登場後には史上最速のペースで民主度が低下していると警鐘を鳴らす。

共和党は選挙時点で「白人が8割超」という構成を保ち、民主党にはアフリカ系、ヒスパニック系、アジア系、ユダヤ系、イスラム教徒が集中するなど、政党がアイデンティティ軸で分断されている。ウォルター教授は「人々は貧困や失業には耐えるが自らの地位喪失だけは許容しない」と説き、かつて特権的立場にあった集団が衰退を感じると暴力を正当化しやすいと警告する。

想定される内戦像は南北戦争 (1861-65) 型の全面衝突ではなく、各地の武装民兵によるゲリラ的蜂起。正規軍と正面対決すれば壊滅することを理解する民兵は、独立して小規模な破壊活動を展開しながら互いに緩く連携する可能性が高いという。

内戦を防ぐ処方箋は「民主主義の強化」と「政党の包摂性向上」に尽きる。特に、即効的かつ低コストの対策として教授が挙げるのが、SNSアルゴリズムの規制だ。これはコンテンツ推奨の制限個人情報の収集利用における年齢制限時間制限などが含まれる。投稿内容そのものではなく「恐怖・怒り・脅威」を煽る投稿を拡散させる仕組みを抑制すべきという。

多くの米国市民が「自国で内戦など起こるはずがない」と考える背景には、戦後の平和と繁栄による「現状維持バイアス (status quo bias)」がある。しかし、米国は歴史上すでに壊滅的な内戦を経験しており再発の可能性を過小評価すべきではないと教授は強調する。

教授が最も懸念するのは「トランプ大統領または類似指導者が権威主義体制を確立するシナリオ」であり、それが米国内外に深刻な影響を及ぼすと語る。一方で、制度改革と社会統合が実現すれば、デンマークのように内戦リスクを無視できる水準まで下げることは十分可能だと語っている。


▪️KPBS:公共の利益のために運営される非営利の放送ネットワーク (Public Broadcasting ServicePBS) で、視聴エリアはサンディエゴ都市圏。60年以上にわたり、地元や全国的に制作されたニュース、エンターテイメント、教育、ライフスタイルなど、あらゆる年齢層向けの番組を提供している。