2025年2月8日石破茂首相は2月6日にドナルド・トランプ大統領とホワイトハウスで会談し、日米同盟の強固な関係を再確認した。アジア太平洋地域が不安定化する中、日本にとって重要な会談となった。
■ 日米関係の安定を強調、波乱なし
今回の首脳会談では、トランプ政権に見られがちな対立や波乱が表面化せず、穏やかで友好的な雰囲気で進行したことが特徴的だった。石破首相は会談後、「テレビでは怖い印象だったが、実際に会うと誠実で、意志が強く力強い人物だった」とトランプ大統領の印象を語った。
日米関係は、経済・安全保障の両面で深いつながりを持つ。日本は5年連続で米国への最大の外国投資国であり、数千人規模の雇用を創出している。さらに、日本国内には54,000人の米軍が駐留し、日米同盟の要となっている。
しかし、トランプ大統領の外交政策は予測不能な側面があり、過去には中国、カナダ、メキシコとの貿易摩擦や国際刑事裁判所への制裁措置などが問題視されてきた。日本国内でも、トランプ大統領が突如として高関税を課すのではないかという懸念があったが、今回の会談ではそうした事態にはならなかった。
■ 首相の周到な準備が成功へ
今回の会談を成功に導いた要因の一つは、石破首相の徹底した事前準備だった。首相はスタッフと「勉強会」を重ね、岸田文雄前首相にも助言を求めるなどの入念な準備を行った。さらに、トランプ大統領と親交が深かった故安倍晋三元首相の夫人からもアドバイスを受けたとされる。
その成果もあり、会談では特に大きなトラブルは発生しなかった。トランプ大統領が「新日鉄」を「日産」と誤って呼ぶ場面はあったものの、他の会談に比べると目立った失言や衝撃的な発言は少なかった。
両首脳は、貿易と防衛協力を強化することで合意し「日米関係の黄金時代」を迎えることを宣言した。
■ 日米経済関係の強化
経済面では、日本が米国への投資を1兆ドル(約150兆円)に増額する方針を示した。また、日本の自動車メーカーが米国内での投資を拡大し、東京が米国産の液化天然ガス(LNG)の輸入を増やす計画も発表された。
この発表は、トランプ大統領の就任演説で掲げられた “Drill baby, drill” (石油・天然ガスの採掘を推進するスローガン) と一致するものであり、トランプ大統領にとって大きな成功と受け取られた。
さらに、トランプ政権が安全保障上の理由で阻止した新日鉄によるUSスチール (USS) 買収問題についても進展が見られた。新日鉄はペンシルベニア州にあるUSスチールに「大規模投資」を行うが、経営権は取得しないという形で妥協が成立した。
■ 首相の「結論を先に」戦略
石破首相は、日本国内では難解な国会答弁を行うことで知られ、「演説が詳細すぎて相手を混乱させる」と評されることもあった。しかし、今回はスタッフの助言に従い、「結論を先に述べる」シンプルな話法を採用したことが功を奏した。
トランプ大統領に対し、直接的な対立を避けながらも、日本の経済投資と協力関係を強調することで、外交的な成功を収めたと評価されている。
■ 米国と対立しない「イエス・フレンド」戦略
日米間には依然として意見の対立がある。例えば、トランプ大統領が提案した「ガザ地区の米国統治」構想に対し、日本政府は「二国家共存案を支持する」との立場を崩さなかった。また、米中貿易戦争に対しても、日本は慎重な立場を維持している。
中国は日本にとって最大の貿易相手国であり、日本企業にとって重要な投資先でもある。一方、安全保障面では、中国軍が台湾周辺で挑発的な行動を強める中、日米両国は防衛協力を強化する必要に迫られている。
日本は2022年に防衛費を2027年までに倍増させる計画を発表し、敵基地攻撃能力の取得を決定。第二次世界大戦後の平和憲法の下での安全保障戦略の大きな転換点となった。
現在、北朝鮮の核開発問題、韓国の政治的混乱、米中対立の激化など、アジア太平洋地域は不安定な状況が続いている。その中で、日本は「トランプ大統領と正面衝突を避けつつ、米国の最も安定した同盟国としての立場を維持する」方針を取ると見られている。
今回の会談は、石破首相にとって日本国内での支持を回復する大きな成果となるかもしれない。