6/3/2026
▪️コロラド川流域の危機が背景に
サンディエゴ郡のカールスバッドにある米国最大の海水淡水化プラント「クロード "バッド" ルイス・カールスバッド・デサリネーション・プラント」で、6月3日、歴史的な州際水融通協定の調印式が行われた。サンディエゴ郡水道局 (SDCWA) 、南カリフォルニア大都市圏水道局、南ネバダ水道局、アリゾナ州水資源局、セントラル・アリゾナ・プロジェクト、ソルトリバー・プロジェクト、そして米国開拓局が覚書 (MOU) に署名した。コロラド川流域の長期にわたる干ばつにより、レイク・ミードやレイク・パウエルなどの貯水量は容量の約36%にまで低下しており、各州は新たな水源確保を急いでいた。
▪️サンディエゴの余剰水が鍵に
今回の協定の核心は、カールスバッドのプラントがサンディエゴにとって過剰な生産能力を持っていることにある。同プラントの年間生産能力は約56,000エーカーフィートで、現在サンディエゴが使用しているのは約40,000エーカーフィートにとどまる。「テイク・オア・ペイ」契約により、水道局は使用しない分の水についても料金を支払い続けてきた。この余剰分、約10,000エーカーフィートを6か月から1年以内にアリゾナやネバダへ州際移転できる可能性があると、水道局のダン・デナム局長は語った。長期的には、サンディエゴのリサイクル水なども含めると最大100,000エーカーフィートの融通が可能で、これはフェニックス市の約3か月分の飲料水に相当する。
▪️「紙の上」の取引で既存インフラを活用
この協定で特筆すべき点は、実際には水が州をまたいで物理的に移動するわけではないことだ。サンディエゴが海水淡水化によって賄う水量を増やし、コロラド川からの取水を減らす。その分の「川の権利」をアリゾナやネバダに移転するという、いわゆる「紙の上での取引 (ペーパー・トランスファー)」の仕組みだ。既存のインフラを活用するため、新たな大規模建設も不要となる。デナム局長は「州の枠を越えた水の移動を可能にする革新的な協力の形だ」と意義を強調した。
▪️全米初の試み 今後の交渉に注目
この協定はあくまでも枠組みであり、実際の水量、価格、スケジュールなどの詳細はこれから協議される。アリゾナ州立大学カイル水政策センターのキャスリーン・ソレンセン研究部長は「コロラド川の過剰配分という問題に比べれば、規模はごく小さい。しかしその1%を最も必要な場所に届けることができれば、大きな意味を持ちうる」と分析する。将来的には、この協定がカリフォルニア沿岸に新たな淡水化プラントを建設する動きに火をつけるとの期待もある。コロラド川という水資源をめぐる西部3州の連携は、乾燥地帯に暮らす4300万人の未来を左右する重要な一歩となった。
▪️サンディエゴにもコスト削減の恩恵
サンディエゴの立場からも、この協定にはメリットがある。余剰水を他州に売却することで、使わずに支払い続けてきた淡水化費用の一部を回収できる可能性があるからだ。水道局のニック・セラーノ委員長は「このプラントを最大限に活用する今回の協定は、サンディエゴの水道料金負担の軽減にもつながる可能性があり、皆にとって理にかなっている」と期待を示した。水を「売る」立場となったサンディエゴが、西部の水危機解決の鍵を握るという新たな役割は、地域の誇りでもある。
✳︎上の画像は AI が生成したイメージです。