Friday, 29 March 2024

あの店

東京郊外に暮らしていた40年ほど前、伝説の中華料理店『喜楽』があった。激安で食材を惜しまず、味も格別というピカイチの店。本物のカニを使った豪華な五目炒飯が好きだった。ボリュームもスゴい。1品がドンブリ2杯分! 餃子1皿で20個! 店内はカウンター席のみで、ほぼ全員が常連客。『喜楽』で食事をする時は、当日の朝昼食を控えるなど、完食できるよう体調を整えてから出かけた。「持ち帰り」は許されなかった。そこに、頑固一徹で無口な店主の心意気が感じられた。「最高の素材、最大の量を出すから、見事に平らげてくれ」という、無言のメッセージが —— 。カウンター越しの調理場には強面 (こわもて) の店主と若いコックの2人だけ。店主は若いコックを「小僧」 と呼び、その扱い方は粗暴だった (今ならパワハラか)。「お客さんを待たせるな、小僧!」 客の前で店主の怒号が飛ぶ。ある時、「仕事が遅いぞ、小僧!」と小突かれたコックがキレた。「オレは腕2本しかないんスよ!」彼の右手にはキャベツを切っていた包丁が! 客は「これはヤバイ」と固唾 (かたず) をのんでいたが、突然、コックが「オレが悪かったス!」と詫びを入れた。ふと見ると、店主の大鍋には鶏の唐揚げに使う大量の油がグラグラと煮立っていた。究極の大サービスが祟ってか、数年後に『喜楽』 は姿を消してしまった。 (SS)
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▽日本に里帰りした時に、友人が「まじ、面白いから行こーよ」と、小学校居酒屋『6年4組 渋谷分校』に誘ってくれた。店内、料理、BGMなど全て “あの頃” を思い出させるものばかり。あげパン、わかめごはん、ソフト麺など、懐かしの給食メニューを楽しんで、ランドセルを背負って写真を撮りまくった。「学校でビール、やばくない! 抜き打ちテストもあるんだって! この店で、同窓会やろうよ! 絶対やろう!」と友人が異様に盛り上がっていた。このユニークなお店は全国展開しているそうで、本店は笑いの聖地、大阪とのことだ。▽その昔、友人のピンチヒッターとして2週間ほど、夜のバイトをしたことがある。現役の女子大生が働くスナックで、自然体の接客とトークが楽しめる店という触れ込みで人気だった。品川という土地柄もあって、若さを注入され、笑顔もツヤツヤになったところで、お店を後にするビジネスマンが多かった。学費が足りずに大学を中退したママさんが立ち上げた店だけあって、“大学&バイト卒業” への思い入れが皆、強かった。「掃除は上から」「挨拶する」「時間守る」「公私混同しない」など、皆、社会人としてのマナーをビシバシ叩き込まれた。あれから40年、あの店は、皆の心のオアシスとして今でもキラキラ輝いているように思う。 (NS)
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sheau-ching-san.gif つい最近、千葉で暮らしている “日本のお母さん”、金子おばさんに会ってきた。考えてみたら、おばさんと最初に出会ったのは23年も前のこと! 日本語学校の3か月と大学留学の4年間、学校の近くにあるおばさんのアパートを借りていた。あの時、日本舞踊の先生だったおばさんはいつも着物を着ていて、昼間はアパートのすぐ隣で 「山崎パン屋」さんもやっていた。学校から帰ってくると、おばさんはいつもパン屋さんで誰かとお喋りしていて、お茶を飲んでいた。通りに私の姿を見かけると「ちょっと入って!」といつも声をかけてくれた。あのパン屋さんで皆さんとお喋りをしたり、パンを食べたり、お茶を飲んだり、、、本当に楽しかったし、暖かい日本人と出会えたことに感謝! そして、日本語もそのため、短期間でかなり上達した! 大学卒業と同時に就職先の社員寮に引っ越した。その後、おばさんの足が悪くなり、あの店をクローズ。私の日本の青春はあの店にあって、おばさんとの長いお付き合いもあの店からスタート。あの店は恋しい! けど、おばさんに会えるだけで嬉しい! そして、元気で長生きしてもらいたい! (S.C.C.N.)
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yoko 2009年頃までOld Town内にあったハンドメイドソープ、アロマ、コスメ&ボディケア製品のお店 “US House Apothecary & Soap Shop” がお気に入りの店だった。家から近く、オールドタウンの裏の駐車場 (空いている!) から歩いてすぐのロケーションが便利だし、こぢんまりしたお店の中は、いつもアロマの良い香りがしていた。手作り石鹸は多種類あり、大きさも選べて、店の奥にはハーブピローが置いてあった。いろいろな可愛い木綿や、麻の布で作られた長方形のものから、ネコや犬をかたどったものまであった。温めて使うハーブショルダーピローもあって、試してみると肩こりに効きそう〜 そして良い香り〜 いつか買いたいなと思っていた。そのお店でリピートしていたのは香りの良い Rosehip Water のアイクリーム。お手頃価格でたっぷり入っていて、伸びが良く、しっとりしたクリーム。毎日ふんだんに使っても半年もっていた。いつもアイクリームがなくなる頃 (半年に一度) にお店に行っていたので、ある時、行くと無くなっていた。ショックだった! あれから、まだ気に入るアイクリームに出会えていない。 (YA)
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reiko-san 日本の実家に帰省すると、必ず滞在中に数回は食べに行くラーメン屋がある。家から近いというのが一番の理由だったりもするのだが、
ラーメンも餃子も美味しい。外観も内装もコテコテの、日本全国どこにでもある中華ラーメン屋なのだが、他とちょっと違うところがひとつ。ラーメン屋というと、ワイドショーやら野球の試合をテレビで流していたり、テレビがなければ、歌謡曲やポップミュージックなどの音楽を流しているのが定番だと思うが、この店は、いつ行ってもクラシック音楽が流れている。このことを教えてくれたのは父。「あの店に行くと、クラシックミュージックがちょうど良い感じの音量で流れていて、ゆっくりとラーメンが食べられるから好きなんだ」と。店にかかっている音楽なんて、私は父に言われなければ気づかなかったかもしれない。モーツァルトを聴きながら、ニラレバ定食。なかなか良い! カウンターの向こうのキッチンで物静かに調理をしている店主らしき初老の男性。ラーメン店の常識(そういうものがあるかどうか知らないが)をものともせず、自分の好きな(と勝手に解釈している)クラシック音楽を頑固一徹に流し続ける(と、これまた私の勝手な想像)店主さん、私の父のためにも、これからも商売繁盛で頑張ってください! (RN)
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suzuko-san 私には、私の人生を賑やかにしてくれた、忘れられない「あの店」がある。20代の後半、地下鉄に乗っていた時のこと。あるインド人が英語で私に話しかけてきて、しどろもどろで応え、10分ほどで彼は下車。その際、私に名刺をくれた。「へえ~インド料理屋さんか」。半年後にその店に行ってみると、当時はマネージャーだった彼は私のことを覚えていて、日本語で「マガジンの人ですね」。なんだ、日本語はできるじゃん! それ以来、その味の素晴らしさも相まって、その店に通い続けることに。週5回なんてこともざら。そんなことがきっかけで、その人と、当時日本に来たばかりの弟と友達になり、私の女友達と4人でよく遊んだもんだ。このインド人と知り合ったことで、私の世界も大いに変わった。彼らのパーティーに招かれ、インドの世界を垣間見ることもできた。こういうことがきっかけで、インドにインド料理を習いに行くことになり、結果、インド料理教室も始めて、私の人生にバラエティを添えてくれた。私が知り合った頃は東京赤坂に1店だけだったが、その後、最多で全国に10店舗も開いたこともあった。その店は、今や皇后となられた雅子様も外務省時代に行ったこともあるという 『MOTI』。もちろん、今でも新橋、赤坂、六本木、二子玉、横浜で営業、繁盛している。 (Belle)
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jinnno-san イノシシ鍋は聞いたことあるし、食べたことある人もいるよね。でも、イノシシのお刺身って、聞いたこと、食べたことある? これが、なんとも言えず美味い! しかも、石垣島のイノシシではなく西表島のほうが美味い!って沖縄の人 (西表島の人 笑) が言うのよ。狩猟できる期間が決まっていて、なんと解禁日ちょうど過ぎたときに、西表島のお船のガイドさんにイノシシ刺しの話を聞いた。すっごい獣の味がするって (ひえーー!)。でも、他に比べるものがない美味さだって。・・・食べたいけど、イノシシ刺しは公で販売されるものでなく、猟師さんからもらうものなんだって。下船すると、すぐ島で聞き込み調査を開始。観光案内所へ直行 (笑)。去年はあの店で出してたな、おととしはあの店・・なんて感じで、今年の流通事情は分からない、ので、観光局の人が心当たりあるお店に片っ端から電話してくれた。あったのだよ。うっしっしっしー! 自転車で島を横断し、その店にまっしぐら。禁酒時代的な島の人だけが知る、隠れ家的な所を想像してたら、お店の外壁にでっかく “イノシシ入荷!”。そして、イノシシのかわいいイラストが! 笑。密かに取引してるんじゃぁないのね。他でも探したけど、あの店にしかイノシシ刺し置いてなかった。 恐るべし石垣島! (食したのは石垣島のイノシシ 笑)。 (りさ子と彩雲と那月と満星が姪)
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▽私は『食』にあまり興味がないので、グローサリーショッピングが苦手だ。しかし、家族の食事を作るための主婦の仕事の一部。店内でのマニューバを考えての買い物リストは必須。通路、配置は頭にある。大体は店内、右から入りのマニューバだ。なので、Vons、Costco、Target、Walmart ...「ここの店」じゃないと勝手が悪い。そして、チェックアウト。素早い動きのキャッシャーの顔を記憶。チットチャットが多いキャッシャーはごめんだ。そして、ハシゴは2件まで。仕事帰りの旦那を使うことも多々。週末の戦場 Zion に行く人の気が知れない。▽地元に大好きなディスカウントストアがある。『HERO』。店内は床にも商品が並べてあって、ストローラー突入なんてもってのほか。店内に “カメラがあんたを見ているからね!” という、盗難防止の手書きのサインが何枚も貼られているような少々小汚い店なのだが、安い! ヤバイくらい安い! すごくお得な買物をしたと優越感を感じさせてくれる、この店『HERO』。同僚RNさん、隣の中学校出身。RNさんも『HERO』好き? (IE)


(2019年7月1日号に掲載)