Uビザ (2015.1.16)

yoshiwara new
吉原 今日子

yoshihara face米国カリフォルニア州弁護士

USDにて経営学修士(MBA)を取得。
その後、法学博士(JD)を取得。

会社の経営、組織体系、人材の重要性を常に念頭に置いた法的アドバイスを行います。カリフォルニア州弁護士会、米国移民法弁護士会所属。

 詳細はこちらまで



 
column line text932

 Uビザ

       

 

Q 私はアメリカ市民との結婚で1年前に永住権を取得しました。

現在、アメリカ人の主人の暴力に悩まされています。

現在の永住権が条件付永住権なので、彼と別れてしまうと、アメリカに滞在するステイタスを失う事態になることを心配しています。

そのような立場なので、警察に通報することもできずにいます。

永住権を失わず、主人と別れる方法はあるでしょうか?

 

 

A 2000年10月に立法化されたUビザは、ある種の犯罪行為の捜査や起訴について政府に協力する外国人被害者に対して有効なビザです。

Uビザの目的は、アメリカの主導的主義と一致して、外国人犯罪被害者に保護を提供する一方で、家庭内暴力、性販売、人身売買などのような犯罪を捜査し、告発する法律執行機関の能力を強化することにあります。

まず、Uビザは以下の4つの条件を充足することが要求されます。

① 申請者が指定された犯罪の犠牲者であり、その結果として、身体的、 あるいは精神的損害を受けたこと

② 申請者が当該犯罪行為に関する情報を持っていること

③ 当該犯罪の調査、起訴を行うにあたり、申請者が今まで手助けになってきたこと。あるいは今後手助けになること、あるいは手助けになるであろう可能性が高いこと

④ 当該犯罪行為が米国の法律に反していること。あるいは米国内において起きた行為であること。

 

Uビザの対象となる犯罪行為とは、連邦、州、地方の犯罪方に違反する、殺人、婦女暴行、拷問、恐喝罪、公務執行妨害、家庭内暴力などがあります。

対象とされている犯罪は

「Abduction, Abusive Sexual Content, Black mail, Domestic Violence, Extortion, False Imprisonment, Female Genital Mutilation, Felonious Assault, Hostage, Incest, Involuntary Servitude, Kidnapping, Manslaughter, Murder, Obstruction of Justice, Peonage, Perjury, Prostitution, Rape, Sexual Assault, Sexual Exploitation, Slave Trade, Torture, Trafficking, Witness Tempering, Unlawful Criminal Restraint, and Other Related Crimes」

です。

あなたの場合、ここで指定された犯罪では、特にドメスティック・バイオレンスに関連した犯罪がそれに当たります。

犯罪がUビザに値するものなのかは、裁判記録、警察証明、犯罪に関する記事、陳述書などを元に判断されます。

必要と判断されれば永住権申請も可能  申請は I-918 という申請書によって行います。

申請は犯罪の犠牲者であれば誰でもできるというものではなく、連邦・州・郡・市などにおいて犯罪行為を調査、あるいは起訴する権限を与えられている政府機関 (例えば警察、検察官、裁判官等) から「I-918 Supplement B」という書類において認可を受けなければなりません。  

また、このUビザは、米国内に滞在している人に限らず、日本からでもアメリカ大使館を通して申請することができます。

扶養家族に関しては、申請者の配偶者、18歳未満の子供も同じく取得することができ、申請者が21歳未満の場合は、両親も同時に申請することができます。

Uビザは、移民局の会計年度で年間1万件 (扶養家族の分のUビザはこの数に含まれません) しか発行されないことになっています。

しかし、これに漏れた場合でも Waiting List の中に入ることができ、順番が回ってくるまでの間、就労許可や再入国許可の申請が可能です。

Uビザは通常、4年以上の許可は下りないとされていますが、犯罪行為の調査を必要としている政府機関が、それ以上の期間が必要であると判断した場合には、それ以降の延長も可能です。

Uビザの申請料は政府の政策目的から無料とされており、指紋登録 (Fingerprint) の費用も申請者が負担する必要はありません。

Uビザにて3年以上滞在し、犯罪行為の調査を行う機関が必要と判断すれば、その後、グリーンカードを申請することも可能とされています。

また、あなたの場合はドメスティック・バイオレンスによる被害者であるため、このUビザを申請できるだけでなく、I-360という書類を移民局に提出することによって、3年間待つことなくグリーンカードの申請を行うこともできます。

この場合は、警察からのレポートだけでなく、事情を知っている人からの宣誓書、カウンセラーからのレポートなども有力な証拠になります。

Uビザの可能性については、専門の弁護士とご相談ください。

 

 

この記事は、参考として一般的な概要をお伝えすることを目的としたものです。各ケースのアドバイスは必ず弁護士及び専門機関にご相談下さい。

(2015年1月16日号掲載)

     

 

 

 

​