ウイルス性肺炎 (Viral Pneumonia)(2020.5.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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ウイルス性肺炎


(Viral Pneumonia)

       
       

肺炎は、肺の末端組織である肺胞レベルの感染で、細菌、ウイルス、真菌などが原因になります。

ウイルス性肺炎は、ウイルスが原因の肺の感染症で、現在、世界中を席巻している新型コロナウイルスもウイルス性肺炎を起こします。

最も一般的なウイルス性肺炎はインフルエンザによるものです。

 

感染のメカニズム

ウイルスは口や鼻から体内に入り、吸気時に液滴に含まれて肺まで移動し、肺の末端の気道や肺胞の粘膜細胞に侵入します。

細胞内に侵入したウイルスは増殖して数を増やします。

細胞はウイルスに直接攻撃されるかアポトーシス (細胞の自然死) で死にます。

感染に対する人体の免疫反応で、肺にさらにダメージが起こります。リンパ球などの血球がサイトカインという生体化学物質を放出し、血液中の液体成分が血管外に出て肺胞に貯留します。

こうした細胞死と液体成分の肺胞内貯留で、空気中の酸素を血液中に取り込むことが困難になってきます。

体内に侵入したウイルスは肺だけではなく、他の臓器にも影響を及ぼし多くの生体機能を障害します。

ウイルスの中には、細菌感染にかかりやすくするものもあります。このため、細菌性肺炎がウイルス肺炎に伴うことがあります。

 

 

肺炎の種類

肺炎は、医療機関以外で感染する市中肺炎、病院など医療機関で感染する院内肺炎、老人ホームや介護施設などで感染する医療ケア関連肺炎に分類されます。

この中で、市中肺炎が最も一般的で、その大半が細菌感染によるものですが、5歳以下の小児はウイルス性肺炎が多くなります。

高齢者や後述するリスクの高い人は細菌性肺炎にもウイルス性肺炎にもかかりやすくなります。

 

 

ウイルス性肺炎の原因になるウイルス

インフルエンザAとB、RSウイルス、HPV、ライノウイルス、アデノウイルス、ヒトメタニューモウイルス、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、新型コロナウイルス、ハンタウイルスなどが原因になります。

その他にヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、麻疹ウイルス (はしか) 、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、天然痘ウイルス、デングウイルス、パラインフルエンザなども頻度は低いですが原因になることがあります。

 

 

ウイルス性肺炎にかかりやすい人

5歳以下の小児、65歳以上の高齢者、入院者、特にICUに入っている人はウイルス性肺炎にかかりやすく、以下の疾患や状態のある人もリスクになります。

糖尿病などの慢性疾患、免疫の低下している状態、喘息や肺気腫など慢性の肺疾患、 うっ血性心不全などの慢性の心疾患、慢性腎疾患、外科手術の回復期、バランスの良い食事を取らない、喫煙、アルコール中毒、HIV、臓器移植後、悪性腫瘍、白血病、リンパ腫などです。

 

 

ウイルス性肺炎の症状

症状としては、咳、痰、発熱、悪寒、頭痛、鼻水、咽頭痛、筋肉痛、胸痛、呼吸苦、全身倦怠感、意識障害、嘔気、嘔吐、食欲不振、 サイアノーシス、 下痢などです。

合併症としては、呼吸不全、細菌感染症、急性呼吸窮迫症候群 (ARDS)、敗血症などがあります。

 

 

ウイルス性肺炎の診断

診断は、問診と診察、パルスオキシメーターによる血中酸素濃度検査、血液検査、ウイルス抗原や抗体検査、ウイルスPCR検査、ウイルスの分離や培養検査、胸部X線、痰の培養、胸部CT、胸水検査、気管支鏡などで行います。

ウイルス性肺炎か細菌性肺炎か簡単には区別できない場合もあります。

 

 

ウイルス性肺炎の治療

治療は、抗ウイルス薬が存在する場合は、それが使われます。

インフルエンザAやBであれば、発症後48時間以内にオセルタミビア (商品名タミフル)、ザナミビル (リレンザ) などの抗インフルエンザ薬を使います。

RSウイルスの重症例にはリバビリン、ヘルペスや水痘帯状疱疹にはアシクロビル (ゾビラックス) やバラシクロビア (バルトレックス)、サイトメガロウイルスにはガンシクロビルなどの抗ウイルス薬があります。

新型コロナウイルス、SARSコロナウイルス、MERSコロナウイルス、アデノウイルス、ハンタウイルス、パラインフルエンザに対して有効性が証明された治療法は現時点ではありません。

血中酸素濃度が低い場合は酸素が投与されます。

重症または、重症化する可能性のある時は、入院の適応になります。

重症の場合は人工呼吸管理が必要になることもあります。

症状が軽度の場合は、咳止め (完全に咳は止めません)、解熱剤、痛み止め、抗生物質の使用を勧める専門家もいます。

それは細菌性肺炎の合併を完全に除外できないからです。

入院の適応になるのは、高齢者、意識障害、腎不全、低血圧、頻呼吸、低酸素血症 (酸素が必要)、低体温、脈が非常に速かったり逆に遅い場合などですが、現在のように新型コロナウイルス肺炎の人が多い場合は入院基準が厳しくなることがあります。

 

 

ウイルス性肺炎の予防

予防としては、手洗いの敢行、禁煙、くだものと野菜を十分摂取、運動、十分な睡眠、病気の人と接触をしない、ワクチンの存在するものはそのワクチンを受けるのが最大の予防法です。

現在あるワクチンとしては、インフルエンザ、水疱瘡、帯状疱疹、はしか、風疹などです。

 
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(2020年5月1日号掲載)