Tuesday, 16 April 2024

敗血症 Sepsis(2018.5.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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敗血症 

Sepsis

       
       

敗血症は、肺炎や急性腎盂 (じんう) 腎炎など、いろいろな感染症が悪化して起こる全身性の炎症反応ですが、近年、敗血症になる人が増加してきていると言われています。

その原因としては、高齢者の増加、抗菌薬に耐性のある細菌の増加、それと免疫が低下している人の増加だと考えられています。

 

 

敗血症とは

体が肺炎や尿路感染症などによって感染し、適切な治療が行われないと、体は免疫反応によって様々な生体化学物質を血液内に放ちます。それによって体は炎症反応を引き起こし、いろいろな生体反応が起こるのです。

これが全身性炎症症候群 (SIRS) と呼ばれている状態ですが、これが悪化すると、様々な臓器に影響し、組織や臓器を破壊し、臓器の機能がシャットダウンする臓器不全の状態になり、死に至ります。

 

 

敗血症の段階

敗血症はその重症度に応じて、敗血症、重症敗血症、敗血症ショック3段階に区別されます。

 

<敗血症>は次のうち2つを満たし、感染のあることが条件になります。

  • 体温が摂氏38.3度 (華氏101度) 以上または、摂氏36度 (華氏96.8度) 以下
  • 心拍数が1分間で90以上
  • 呼吸数が1分間で20回以上

<重症敗血症>は敗血症の条件を満たし、次のうち1つでもあればその範疇に入ります。

  • 尿量の著明な低下
  • 精神状態の著しい悪化
  • 血小板低下症
  • 呼吸困難
  • 心機能の低下
  • 腹痛

 

<敗血症性ショック>は重症敗血症の条件を満たし、なおかつ極度の低血圧があり、容易に補液 (点滴) では補正されない状態です。

 

なお、最近は感染症があるとqSOFAの2項目以上で敗血症を疑うことも推奨されています。

  •  呼吸数が1分間で22回以上
  •  意識レベルの低下
  •  収縮期血圧が100以下

 

 

 

原因になる感染症

原因になる感染症としては、肺炎、急性腎盂腎炎、胆管炎、胆嚢 (のう) 炎、皮膚の感染などで、原因菌としてはブドウ球菌、大腸菌、ある連鎖球菌などですが、細菌以外のウイルス、真菌 (シンキン=カビ) なども原因になります。

 

 

敗血症になりやすい人

免疫が低下している人、例えば65歳以上の高齢者、1歳未満の赤ちゃん、HIVなど免疫低下症のある人、糖尿病、抗がん治療を受けている (化学療法)、腎臓病、ステロイド治療や抗免疫療法を継続して受けている人、臓器移植をした人などは敗血症になりやすいのです。

 

 

敗血症の症状

発熱、あるいは逆に低体温、悪寒、精神的混乱、意識障害、呼吸苦、痛み、不快感、発汗、頻呼吸、頻拍、尿量低下など。

 

 

敗血症の診断

敗血症の診断はまず、問診と診察から始まります。

呼吸数の増加、心拍数の増加、血圧の低下、意識レベルの低下などの有無を調べます。

血液検査、尿検査、レントゲンなどで感染の有無を確かめます。

感染があると、その感染源を特定します。

そのために、さらに超音波検査、CTやMRIなどの画像診断、血液培養、尿培養、痰の培養、膿の培養などを調べます。

血液中に原因菌がなくても敗血症は否定できません。

 

 

敗血症の治療

敗血症は入院して治療します。

抗菌薬を速やかに投与するのがその後の予後にとって極めて重要です。

原因菌や原因の感染源が不明な時は、まず広域の抗菌薬から始め、原因菌が特定された後で、その原因菌に効果の高い抗菌薬に切り替えます。

血圧の維持のために点滴による補液が必要ですが、それでも血圧が維持できない時は昇圧剤が使われます。

重症の場合は、中心静脈カテーテルや動脈カテーテルを挿入したり、人工呼吸器管理なども必要になる時があります。

敗血症の治療のために膿瘍 (のうよう) の切開排膿や感染した部位を切除する方法もあります。

場合によっては、低用量のステロイドや高血糖があるとインスリンが使われます。

 

 
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(2018年5月1日号掲載)