Thursday, 25 April 2024

発作性上室性頻拍 Paroxysmal supraventricular tachycardia = PSVT(2015.2.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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発作性上室性頻拍

Paroxysmal supraventricular tachycardia = PSVT

       
       

発作性上室性頻拍 (PSVT) は突然心拍が早くなり、また突然正常に戻る頻脈性の不整脈で、数分間の時もあれば数時間以上続く場合もあります。

 

通常、命に関わるようなことはありませんが、他に心臓の病気があると、うっ血性心不全や虚血性心疾患になりやすくなります。

 

赤ちゃんから高齢者まで、どの年齢層でもみられます。

 

 

 

PSVTとは?

 

発作性上室性頻拍はよくPSVTと省略されて呼ばれますが、心臓の上部から始まる頻脈です。

 

心臓は4つの部屋から成り、上の2つが心房、下の2つが心室で、心室より上の部分でこの不整脈が起こるので「上室性」という名が付けられています。

 

PSVTによく似た頻脈性の不整脈に心房細動、心房粗動、心室性頻脈などがあります。

 

正常な心拍数は 60~100回ですが、PSVTの場合は150~250回以上になることがあります。

 

発作時に脈を自分で計って150回以上あるとPSVTのような頻脈性の不整脈の可能性が高くなります。

 

 

 

PSVTの原因とリスク

 

心臓の収縮は、右心房にある洞房 (どうぼう) 結節から発生した電気的刺激が両心房、そして房室 (ぼうしつ) 結節を経てヒス束を通じて両心室に到達して起こります。

 

この洞房結節から発生した電気的刺激が、房室結節や房室間などに異常な伝導路が存在すると、リエントリー (回帰) を起こして余分に伝達され、PSVTが起こります。

 

PSVTは、WPW症候群、甲状腺機能亢進症、ジギタリスのような薬の服用、コカインのような薬物中毒、アルコール中毒、喫煙、カフェインの過剰摂取などがあると起こりやすくなります。

 

 

 

PSVTの症状

 

不安、胸部苦悶感、動悸、頻脈、息切れ、めまい、くらくら感などで、症状は数分から数時間程度ですが、医療機関で治療してもらうまで数日続く人もいます。

 

 

 

PSVTの検査

 

症状がある間に心電図をとれば、それで診断できますが、短時間のPSVTでは医療機関受診時には正常の心拍に戻っていることが多く、その場合、普通の心電図ではPSVTを診断できません。

 

 

症状が1日に1回以上ある時は、ポータブル心電図を装着して記録する24時間ホルター心電図検査を行います。

 

症状がたまにしかない場合は、イベントモニターやループモニターを使います。

 

イベントモニターは発作時に胸や腕に装着して記録、ループモニターは長期間装着して発作時にボタンを押して記録します。

 

皮下に埋め込んだ装置による長期モニター (LINQ) や、確定診断のために心臓の電気生理学的検査が必要になる時もあります。

 

他に、心エコー、トレッドミルなどの心臓負荷テスト、心カテ (冠動脈造影法) などが適応があれば行われます。

 

 

 

PSVTの発作時の治療

 

自分でできる治療としては、排便時のように息こらえをして気張る、座って上半身を前方に傾けて咳をする、氷水を顔にかけるなどがあります。

 

発作時の緊急治療として救急室で行われるのは、バルサルバ手技、アデノシン、ベラパミルなどのカルシウムチャネル遮断薬、メトプロロールのようなβ (ベーター) 遮断薬、あるいはアミオダロンなど薬物の静脈注射があります。 

 

こうした薬物の静脈注射で効果のない時や、血圧が低いなど全身状態が悪い時はカーディオバージョンという電気ショックが行われます。

 

 

 

長期治療

 

PSVTがほんのたまにしか起こらず、症状もあまりなく、他に心臓に問題なければ、治療は特に必要ありません。

 

長期薬物治療としては、カルシウムチャネル遮断薬、β (ベーター) 遮断薬、アミオダロンなどを内服します。

 

薬物以外の治療としては、心臓内の異常な伝導路を高周波で焼灼するRFAがあります。

 

 

 

PSVTの予防

 

予防としては、ストレスを減らす、運動をする、カフェインやアルコールの摂取を減らす、鼻づまりに対する市販の薬や不法ドラッグを使用しない、禁煙をするなどです。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。
 
(2015年2月1日号掲載)

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