Thursday, 28 March 2024

間質性膀胱炎 Interstitial Cystitis = IC(2014.1.1)

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dr kim new     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。
その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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間質性膀胱炎

Interstitial Cystitis = IC

       
       

間質性膀胱炎は、原因不明の慢性の病気で、膀胱の痛みや頻尿など、細菌性膀胱炎に似た症状を起こしますが、感染によるものではなく炎症による病気です。

 

性別や年齢に関係なく誰でもなる病気ですが、女性に多く、アメリカでは330万人以上の女性が、そしてその半数程度の男性が間質性膀胱炎に悩まされています。

 

 

 

 

間質性膀胱炎の原因

 

 

間質性膀胱炎は原因不明の病気ですが、いろいろな説があります。

 

 

膀胱内の上皮に損傷があり、尿中の刺激物により膀胱壁が刺激される。脳からのシグナルが混乱して、膀胱に尿が溜まっていないのに尿意を感じるようになる、などです。

 

 

 

 

他に、自己免疫反応、遺伝、感染、アレルギーなどの要素が関与しているのではないかと考えられています。

 

 

 

 

間質性膀胱炎の症状

 

 

主な症状としては、膀胱痛、頻尿、尿意切迫感、膀胱不快感、残尿感、会陰 (えいん) 部の痛みや、慢性的な下腹部痛、性交痛、排尿困難、尿道痛など。慢性の細菌性膀胱炎と似た症状です。

 

 

 

また、細菌性膀胱炎になると間質性膀胱炎の症状が悪化します。

 

 

 

 

個人差がありますが、生理、長時間の座位、ストレス、運動、セックスなどがきっかけになって悪化することがあります。

 

 

 

 

間質性膀胱炎の診断

 

 

症状が他の膀胱疾患の症状と類似し、間質性膀胱炎を確実に診断する方法がないため、間質性膀胱炎の可能性を考える前にまず、他の治療可能な膀胱疾患の除外をする必要があります。

 

 

特に、細菌性膀胱炎と膀胱がんです。

 

 

あと男性には慢性前立腺炎の除外が、女性の場合は子宮内膜症の除外が必要です。

 

 

 

 

間質性膀胱炎の診断は、膀胱に痛みがあり、頻尿や尿意切迫感が伴います。

 

 

検査には、尿検査、尿培養、膀胱鏡、膀胱壁や尿道の組織検査。過

 

 

 

去に細菌性の尿路感染症のない男性は、前立腺の分泌液の培養を行います。

 

 

 

 

膀胱鏡検査では、膀胱内上皮に点状出血やハンナー潰瘍が見えることがあります。また、膀胱がんの除外を行います。

 

 

組織を取って組織検査も行います。

 

 

 

 

間質性膀胱炎の治療

 

 

原因が不明のため、現在の治療は症状を改善する対症療法のみです。

 

 

様々な治療法があり、単独、あるいは治療の組み合わせによって症状が改善される可能性があります。

 

 

軽度の人は、まず食事療法、ストレスマネジメント、理学療法、膀胱訓練、経口薬の服用を行います。

 

 

さらに、膀胱鏡によるハンナー潰瘍などの治療。さらに症状が続く人には、膀胱水圧拡張術、膀胱内注入療法、外科手術などの治療法があります。

 

 

 

 

・食事:アルコール、トマト、香辛料、チョコレート、カフェインを含む飲み物、かんきつ類、酸性の食品、人工甘味料などは間質性膀胱炎の症状の悪化に関与しているのではないかと考えられていますが、科学的根拠はありません。可能性のある食品をすべて除外して一つずつ復帰させていくと、どれが症状に関与しているか分かるかもしれません。

 

 

 

 

・運動:軽度のストレッチ運動をすると症状が改善するようです。

 

・禁煙:喫煙は症状の悪化に関与しているようです。たばこの成分の何が症状の悪化に関与しているのかは分かっていませんが、喫煙は膀胱がんの原因にもなります。 禁煙すると症状の改善につながるかもしれません。

 

 

 

 

・膀胱訓練:膀胱訓練で痛みや頻尿が改善される可能性があります。これは例えば、最初は30分毎に排尿し、徐々に排尿の間隔を開けていく方法です。尿意ではなく、スケジュールに沿って決まった時間に排尿するのです。排尿日記をつけるとより効果的です。

 

 

 

 

・経口薬治療:ペントサン (Elmiron) はアメリカで認可されている唯一の間質性膀胱炎用の薬です。膀胱の表皮の損傷を回復させる可能性があります。膀胱の表皮は尿中に含まれるいろいろな刺激物から防御しています。膀胱痛の改善には2〜4か月かかります。また、頻尿に効果が出るのはは最大6か月かかります。副作用は胃腸症状と抜毛です。肝臓機能に影響を及ぼす場合があるので、定期的な血液検査によるモニターが必要です。軽度の出血傾向を及ぼすことがあるので、手術の前には服用を中止します。

 

 

 

 

・他の経口薬:アスピリンとイブプロフェンは軽度の痛みなどの不快症状を改善する可能性があります。三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン (Elavil) は 膀胱をリラックスさせて痛みをブロックします。頻尿や夜尿を改善する作用があります。でも、痛みのひどい人はバイコディンのような強力な痛み止めが必要です。抗ヒスタミン薬は、頻尿、尿意切迫感、それ以外の症状を改善する可能性があります。

 

・膀胱水圧拡張術:膀胱内に液体を入れ、膀胱の容量を増やすと、膀胱の神経から出る痛みのシグナルを妨害するのではないかと考えられています。ただ、この治療を行うと、最初の4〜48時間は悪化します。それで2〜4週間以内に元の状態に戻るか改善します。

 

 

 

 

・膀胱注入法:膀胱注入法は、膀胱を液体で充満させて15分後に排出します。アメリカではジメチルスルフォオキサイド (DMSO = Rimso-50) という液体を使います。このDMSOによる治療法は1〜2週間に1回行い、6〜8週間続けます。このサイクルを何度か繰り返します。医師に指導を受けて、自分でカテーテルを挿入して注入を家で行う人もいます。

DMSOは膀胱壁に浸透し、炎症を取り、痛みをブロックするのではないかと考えられています。また、膀胱の収縮を予防することによって、痛み、頻尿、尿意切迫感を抑えています。

DMSOの副作用としては、治療後最大7時間程度、にんにくのような味やにおいがすることです。長期治療によって白内障の可能性が高くなるかもしれません。副作用チェックの血液検査が半年毎に必要です。

最近の方法としては、局所麻酔薬のリドカイン、重炭酸ナトリウム (重曹)、ペントサンあるいはヘパリンと混ぜて、痛みと尿意切迫感を改善する方法もあります。他に、ヒアルロン酸、コンドロイチン、オキシブチニンなどの溶液も現在研究されています。

 

 

 

 

・電気的神経刺激:経皮的電気神経刺激 (TENS) とは、軽度の電気刺激を皮膚を通じて数分から数時間、1日2〜3回通電します。電極は腰か恥骨の上方に留置します。あるいは、女性であれば膣内に挿入したり、男性であれば肛門の中に留置します。電気刺激が膀胱への血流を増加させ、膀胱をコントロールしている骨盤内の筋肉を強化しているか、痛みをブロックする物質を放出しているのではないかと考えられています。

規則的な刺激を膀胱に与える埋め込み式の装置があります。電極を尾骨の近くに固定し、装置を皮下に埋め込みます。他の治療の効果のない人が対症になります。

 

 

 

 

・外科手術:内科的治療が効果なく、痛みが強い場合は手術を考慮します。いろいろな手術がありますが、それぞれ利点と欠点があります。体外から尿道を通じて管などを挿入し、ハンナー潰瘍を電気的あるいはレーザーで焼く方法。他に、膀胱を拡大する方法もあります。膀胱除去術は究極的な方法です。これは非常に稀 (まれ) な手術方法ですが、この手術後には大腸の一部を利用した人工膀胱を使うことになります。

 

 

 

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2014年1月1日号掲載)

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