Wednesday, 23 April 2025

共和の牙城、民主が攻勢

共和の牙城、民主が攻勢

「反トランプ」追い風に

2019年11月5日

来年の大統領選に向け、トランプ大統領ら共和党の牙城だったテキサス州に異変が起きている。

民主党支持層の多いヒスパニック (中南米系) が国境を接するメキシコから流入している上、弾劾調査に直面するトランプ氏への反発を追い風に民主党が攻勢を掛けており、トランプ陣営は大票田の死守に躍起だ。

                                                         * * * * *

「テキサスはメキシコとの往来を通じて発展してきた。私にもヒスパニックの親戚がいる。差別的発言を繰り返すトランプ氏には賛同できない」。

9月中旬、最大都市ヒューストン郊外での民主党の地方選挙集会で、保険業界で働く年配の男性が語った。 1980年代のレーガン政権から一貫して共和党を支持してきたが、初めて民主党の集会に顔を出した。

「民主も共和も無党派も歓迎だ。多様な米国を取り戻そう」。

同州出身の民主党大統領候補を目指すオルーク元下院議員が登壇し呼び掛けると、熱心に耳を傾けた。

テキサスでは1980年以降、大統領選で共和党候補が全勝しているが、昨秋の連邦上院選でオルーク氏が共和党現職に約3ポイント差と肉薄。

シンボルカラーが赤の共和党から青の民主党に変わる可能性のある中間色の「パープルステート (紫色の州) 」 になったと言われた。

                                                        * * * * *

人種構成の変化が背景にある。

2018年の推計によるとテキサスのヒスパニックは2010年比で約190万人増加。

白人の約48万人増を大きく上回り、2022年にも最大勢力となる勢い。

大都市にはインド系、ベトナム系も多く、移民に寛容な政策を掲げる民主党が浸透している。

大統領選では、人口などに基づき各州に割り当てられた選挙人の獲得数を争う。

テキサスは全米トップのカリフォルニア州の55人に次ぐ38人で、当選に必要な過半数270人の約14%を占める。民主党が獲得すればトランプ陣営には致命傷だ。

                                                        * * * * *

トランプ氏は9月にヒューストンで、国連総会のため来米したインドのモディ首相とともに、インド系の大規模集会に参加し「規制撤廃や減税で多くの雇用を生み出した」と実績を誇示した。

外国首脳との地方集会参加は異例で危機感がにじむ。

10月にはダラスで集会を開いた。

民主党は対ウクライナ圧力疑惑をめぐる下院の大統領弾劾の動きもにらみ、支持拡大を狙う。

気に入らない相手を中傷し攻撃するトランプ氏への嫌悪感は、無党派層や穏健派の共和党員の間にも広がっている。

同州の民主党幹部ヒノホサ氏はそう指摘し、「完璧な追い風が吹いている」と手応えを語った。


(2019年11月16日号掲載)