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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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腹痛 (Abdominal pain)
       
腹痛は、腹部に感じる痛みのことですが、腹部には腹痛の原因になるいろいろな臓器が存在します。 胃、十二指腸、小腸、大腸、肝臓、胆のう、胆管、膵(すい)臓、脾(ひ)臓、腎臓、尿管、膀胱、大動脈、腹膜、腹壁などです。腹痛の原因は、消化器系の病 気、腎臓尿路系の病気、大動脈など血管系の病気、婦人科系あるいは男性性器に関する病気、腹部の筋肉や皮膚などの腹壁の病気などがあります。従って、単に 腹痛と言っても可能性のある病気は極めて広範囲のものになります。

 
腹痛の原因

腹痛の原因を考える時、腹部の部位を考慮すると原因を考えやすい場合があります。例えば、腹部を上腹部と下腹部に分けるだけでも可能性のある病気がかなり 限られてきます。さらに、腹部を右上腹部、左上腹部、右下腹部、左下腹部の4つに区切ると、原因をより絞り込むことができます。それ以外に、みぞおちであ る心窩部(しんかぶ)、左右側腹部などに区切ることもできます。こうした腹部の部位による原因追究は、原因を絞り込みやすいかわりに、絞り込まれたもの以 外の病気を無視する結果にもつながり、必ずしも最適な方法というわけではありません。以下、腹痛を起こす代表的な病気について簡単に説明してみましょう。

便秘 (Constipation)
便秘による腹痛は、子供や高齢者によくみられますが、慢性の便秘症に悩む女性や若い人でも起こります。腹痛の部位はへその左側や左下腹部が多く、排便で痛みは軽減します。

ガス痛 (Gas pains)
腸の中にガスが溜まって痛みが起こります。痛みは短時間ですが、痛みの部位が移動したり、激痛の時があります。便秘、下痢、抗生物質の使用などがリスクになりますが、痛みはガスが外に出る(おならとして)ことによって軽減します。

胃腸炎 (Gastroenteritis)
胃腸炎は、原因によってウィルス性や細菌性などがありますが、腹痛は腹部のどこでも起こります。腸の絞られるような痛みや胃痛が起こり、通常は吐き気・嘔吐・下痢を伴います。


消化性潰瘍 (Peptic ulcer)
胃潰瘍の8割以上、十二指腸潰瘍の9割以上はピロリ菌が原因と考えれられています。典型的には、胃潰瘍 は食後、十二指腸潰瘍は空腹時や夜中に腹痛が起こります。両方ともみぞおち、上腹部痛で、腰痛を感じることがあります。時には激痛になります。便が黒くな ると消化性潰瘍などによる上部消化管からの出血を考えます。


胃炎 (Gastritis)
胃の粘膜の炎症のことですが、原因はアルコールの多量摂取、ピロリ菌感染、抗炎症鎮痛薬の服用などで、主にみぞおちの痛みを起こします。「しくしく痛い」と表現する人が多くいます。


急性胆のう炎 (Acute cholecystitis)
急性胆のう炎の大半は胆石が原因で、胆のう内の細菌感染により症状が出ます。腹痛は右上腹部で、特に脂っこい食事の後に起こりやすく、吐き気・嘔吐・発熱などを伴います。総胆管炎などを起こすと緊急手術が必要になる時があります。


胆石 (Gallstones)
胆のう内に出来る結石ですが、コレステロール結石とビリルビン結石があり、主に右上腹部からみぞおちにかけての突発性の痛みを起こします。また、腰や肩の辺りに痛みを感じることがあります。


虫垂炎 (Appendicitis)
一般に盲腸(炎)と言われていますが、虫垂が便や異物で塞がれて感染が始まると痛みを起こします。へそ の周りやみぞおちの痛みから始まり、通常は短時間(24時間以内)に悪化し、右下腹部痛になります。吐き気・微熱などを伴います。虫垂が破裂すると一時腹 痛は軽くなりますが、腹膜炎が始まると症状は急速に悪化します。


腸閉塞 (Bowel obstruction)
腸閉塞には腸が物理的に閉塞する機械的腸閉塞、イレウスなどの機能的腸閉塞(日本ではイレウスは腸閉塞と訳されていますが、アメリカでイレウスというと一 般的に機能的腸閉塞を意味します)、麻痺性腸閉塞などがあります。吐き気・嘔吐・腹部の膨れ以外にも大便やおならが出ないこともあります。乳幼児に起こる 腸重積も腸閉塞の一種です。


食物アレルギー (Food allergy)
食べ物アレルギーがあると、摂取後すぐ(2時間以内)に腹痛、吐き気・嘔吐、下痢、のどの違和感、下痢、かゆみ、呼吸困難などの症状が始まります。


鼠径(そけい)ヘルニア (Groin hernia= Inguinal hernia)
足のつけ根にふくらみが出てきます。ふくらみの中味は通常は腸の一部で、腹壁の弱くなった部分から出てきますが、陰嚢(いんのう)に出ることもあります。ふくらみや痛みは、腹部に力を入れたときだけ起こることがあります。


腎結石 (Kidney stones)
腎臓に結石が出来ると、その結石が尿管などを移動するのに伴い、腰痛、側腹痛、下腹部痛などを起こします。痛みは通常激しく血尿を伴いますが、激痛や血尿のない場合もあります。


尿路感染症 (Urinary tract infections)
膀胱炎の場合は下腹部痛で、主に排尿中や排尿後に痛みを感じます。急性腎盂腎炎の場合は、高熱・寒気と共に腰痛や側腹痛が起こりますが、排尿時痛や頻尿など泌尿器系の症状が全くない場合があります。


膵炎 (Pancreatitis)
膵炎は急性と慢性に区別され、アルコールの多量摂取や胆石などが原因になり、上腹部の痛みを起こします。痛みは激痛であったり、あるいは食べ物の摂取後にひどくなったりします。腰痛、背中の痛みも起こることがあります。


腹部解離性大動脈瘤 (Dissecting abdominal aortic aneurysm)
 解離性大動脈瘤は普通は胸部大動脈の病気ですが、腹部の大動脈でも起こります。大動脈内の内膜の解離で、突然の激痛(裂けるような痛みや鋭い痛み)が起こり、足などに感覚異常の出る時があります。


炎症性腸炎 (Inflammatory bowel disease)
炎症性腸炎はクローン病と潰瘍性大腸炎に区別され、共に腹痛、血便、下痢、微熱などの症状が出ますが、症状の程度は個人差があります。


過敏性大腸炎 (Irritable bowel syndrome)
腸管壁を構成する平滑筋運動の異常やストレスが原因で起こる過敏性大腸炎は、慢性的な下痢や便秘を伴います。腹痛は腹部のどこでも起こり、特に食後に起こりやすく、排便後に軽快する傾向があります。


憩室炎 (Diverticulitis)
腸の一部が袋状に外側へ飛び出ていると憩室と呼ばれます。そこに炎症や感染が起こると憩室炎になります。大腸の憩室の位置によって腹痛の場所が変わり、右側大腸の憩室炎は虫垂炎と区別するのが難しくなります。


虚血性大腸炎 (Ischemic colitis)
大腸に供給される血液量が減少することによって起こりますが、末梢血管閉塞症や脳梗塞などのある50歳以上の人に多く、重症の場合、大腸全体が死んでしまうことがあります。血便、下痢、発熱などの症状を伴います。


婦人科系の疾患 (Female disease)
婦人科系の疾患による痛みは主に下腹部痛ですが、下腹部以外の腹部にも痛みを起こすことがあります。痛みの原因としては、生理痛、子宮外妊娠、卵巣嚢腫、骨盤炎症性疾患、子宮内膜症などがあります。


その他の原因
大腸癌(がん)・胃癌・肝臓癌・膵臓癌・腎臓癌・卵巣癌・子宮癌などの悪性腫瘍、精巣上体炎など男性特有の病気、腹部の筋肉痛、帯状疱疹(ほうしん)、皮膚の感染、血管の病気あるいは精神的な理由でも腹痛が起こります。

 

腹痛の痛みは必ずしも腹部から発生しているとは限りません。肺炎などの肺の病気や心筋梗塞などの心臓の病気、あるいは食道の病気で腹痛を感じることもあるからです。
 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2007年8月1日号掲載)      
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