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nagano_face.jpg   永野 文久

米国公認会計士

昭和17 年生まれ。  昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
昭和58 年米国公認会計士。

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FIN 48 「法人税の不確実性に関する会計処理」の非公開会社への適用(2)
 

FIN48 (FASB Interpretation No. 48、現行ASB 740) は、2009年12月末決算から、初めて非公開会社にも適用される見通しとなりました。

FIN48は、すべてのタックス・ポジションを対象とします。

つまり、会社側は将来的に税務調査を受けることを前提として、調査対象となり得るあらゆる税務上のポジションを洗い出し、それらの不確実性 (uncertainty) を検証しなければなりません。

税務調査の入り得る全てのタックス・ポジションの検証過程であるがゆえに、対象範囲は広いものの、 日系企業の場合、実際には移転価格に焦点が絞られるように思われます。

今月は、移転価格スタディーと FIN48 との関わりについて考察することとします。

 

 

移転価格

移転価格 (Transfer Pricing) とは、国際間にまたがる関連会社間の取引価格のことです。

関連会社間の海外取引価格は、恣意的に操作される可能性があり、その結果、2国間に配分される利益が妥当性を欠く恐れが出てきます。

そのため各国の税当局は、妥当な取引価格、つまり自国に対し適正な課税所得を申告しているか否かを、 税務調査を通じて確認しています。

つまり、第三者取引原理 (Arm's length Principle) を用いて、関連会社間取引価格が独立企業間価格で行われたものとして課税所得金額を再計算します。

関連会社間取引が適正価格から乖離していると判断された場合には、追徴課税およびペナルティー ("IRC 6662 Penalty") が課されます。

 

 

通常の移転価格比準法

関連会社間の適正な取引価格を調べるための代表的な手法としては、次の3つの比準法 (基本三法) が挙げられます。

  1. CUP法 (Comparable Uncontrolled Price Method)

    対象となっている関連会社間の商品販売価格を、同等の条件・環境下における独立企業間で行なわれている販売価格と比較する方法です。


  2. RP法 (Resale Price method)

    国外関連取引に係る商品の買手が、その商品(類似商品を含む)を第三者に販売した価格から通常の利潤を引いた金額を以って、独立企業間価格とする手法です。


  3. CP法 (Cost Plus Method)

    国外関連取引に係る商品の売手が、その商品(類似商品を含む)の購入、製造等による取得の原価の額に、通常の利潤の額を加算して計算した金額を独立企業間価格とする方法です。

    しかしながら、上記基本三法による移転価格スタディーによる書類化の難易度は極めて高く、現実的には、次に述べるCPM法が一般的です。


  4. CPM法 (Comparative Profit Method)

    比較対象会社の取引価格ないし、利潤に着目するのではなく、利益率(一般的には営業利益率)を比較する方法です。


誤解してはならないのは、いずれの手法を用いるにせよ、移転価格スタディーがあったからといっても、必ずしも追徴課税が回避できる保証はないことです。

即ち、IRC6662 Penalty (40%) からは免除されますが、IRSは必ずしも納税者側の移転価格スタディーに同意するものではなく、課税所得の更正および追徴課税が課される可能性は依然として残されています。

 

 

FIN48と移転価格の関わり

FIN48が求めるのは、税務調査が入ることの可能な年度 (Open Tax Years) について、タックス・ベネフィット (税務上の損金算入、収益認識) をMore likely than not (MLTN) 基準で判定し (Recognition)、タックス・ベネフィットが享受できると判断した場合、累積可能性計算 (Commutative probability) が50%を超えた時点におけるベネフィット金額までを認識します。

残余ベネフィットについては、IRSから否認される可能性 (不確実性) が高いと見なされ、追徴課税並びにペナルティーを FIN48 Liability として計上 (Measurement) せよというものです。

前述の通り、移転価格は数あるタックス・ポジションの1つですので、Recognition および Measurement を経て金額が確定されます。

具体的な手続きとしては、基本三法やCPM法のような比準法を用いて、IRS調査による更正結果を予想することになります。

更正予想に当たっては、MLTN判定が用いられるため、移転価格スタディーで得られた結果がそのまま採用されることにはなりません。

例えば、CPM法を用いた場合には、IRC482対応においては最終結論が適性範囲の特定であるのに対し、FIN48では中央値 (メディアン) の計算を行うことになるでしょう。

従って、FIN48目的で採用される適正利益率は、IRC482目的で採用される数値より高めに収斂する可能性があります。

この FIN48 における移転価格対応の手続きは、USGAAP条件を満たすためのものです。

いわゆる IRC482 対応移転価格スタディーとは内容の重複部分はあるものの、目的が異なる点に留意しておく必要があります。




※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。
 
(2010年1月1日号掲載)