自閉症が初めて紹介されたのは今から60年以上も前ですが、今日においても、自閉症の原因は解明されていません。但し、自閉症が母親の誤った育児の結果であるといった誤解や、予防接種との関連性は、現在では否定されています。
アメリカでは1,000人に3〜6人程度の人が自閉症ではないかと推測されています。近年、その数が増えてきているのですが、それは新しい自閉症の定義
が、より広範囲の子供を自閉症の範疇に入れている結果だと考えられています。自閉症は、人種や社会経済的地位に関係なく等しく認められますが、男子は女子
より3〜4倍高い確率で自閉症になります。
自閉症とは
自閉症は、遺伝子レベルの異常によって引き起こされる脳の障害で、主に乳幼児期に発達障害を起こします。但し、乳幼児期だけでなく、一生を通じて様々な遅
滞・障害を起こします。成長と共に自閉症の症状が改善することもあります。自閉症は、対人関係、コミュニケーション、そして行動・興味の3つの領域での異
常です。
自閉症の症状はかなり個人差があり、自閉症を単一の障害というより、「スペクトラム」=連続体の障害で、類似の症状を起こす一群の障害との考え方もありま
す。すなわち、健常者から重度自閉症者まで障害の度合いは連続していて、各々(おのおの)の障害間にははっきりした境界がないと考えるのです。従って、自
閉症スペクトラム障害(ASD)というと「広義の自閉症」ということになります。また、自閉度が低く知能指数の高い、いわゆる「高機能自閉症」はアスペル
ガー症候群(Asperger syndrome)と呼ばれています。
米国精神医学会のDSM-IV「精神疾患の分類と診断の手引」による分類では、自閉症は広汎性発達障害(PPD=Pervasive
developmental Disorder)の中の自閉的障害(Autistic
disorder)として位置づけられます。それ以外には、前述のアスペルガー症候群、レット症候群、小児崩壊性障害、分類不能の広汎性発達障害(非典型
的自閉症)が含まれます。
自閉症の原因
自閉症の原因は分かっていません。遺伝子の異常が原因として一番考えられていますが、ウィルス、神経学的因子、感染、代謝、免疫学的因子など、遺伝子以外
の要因も自閉症に関与しているのではないかと考えている研究者もいます。自閉症は、複雑な症状を有する障害なので、一つの原因ではなくて、多くの原因に
よって起こっている可能性もあります。
脳のいくつかの領域の異常が存在するので複数の遺伝子の関与が示唆されています。自閉症児は、脳内に異常なレベルのセロトニンや他の神経伝達物質が存在す
るので、胎児の時に、遺伝子の欠陥によって脳の正常な発達が阻害されたのではないかと思われています。母親の育児が原因だとする説が過去に存在しました
が、現在では否定されています。
現在までのところ、予防接種と自閉症間の因果関係は、アメリカのCDC(疾病対策センター)での多くの疫学的研究の結果、否定されています。
自閉症の症状
主な症状は、対人関係 (社会的スキル)、コミュニケーション (言語と非言語)、そして行動・興味の3つの領域での症状ですが、最も著明な症状は人との係わり合いとコミュニケーションが上手くいかないということでしょう。以下、3つの領域に関する症状を説明します。
1)対人関係(社会的スキル)
自分の名前を呼ばれても反応しない。相手との視線を避ける。抱かれたり寄り添うことを嫌がる。他の子供と遊ばないで一人遊びをする。他の子供に興味がない。他の人と楽しみや成し遂げたものなどを共有できない。他の子供の感情や気持が理解できない。
2)コミュニケーション
話し言葉の発達が遅い。以前使っていた単語や文章が使えなくなる。普通でない調子やリズムでしゃべる、例えば、ロボットのようにしゃべったり、歌うような調子でしゃべる。会話が始められなかったり、会話を続けることができない。同じ句や言葉を反復使用する。
3)行動と興味
ある特定の物だけに興味を示し、他のものに興味を示さない。手をひらひらさせたり、こまのように回転
したり、上半身を前後に揺するような反復動作をする。服を脱ぐ時に、必ず同じ順序で脱ぐというような儀式的な行為、自分のルーチンをつくる。絶えず体を動
かす。ある特定の物、例えばおもちゃの自動車の回転する車輪などに興味を示す。痛みは感じにくいが、光、音、接触などに対する感受性が極度に増す。おも
ちゃや何かの物で遊ぶ時に過度に繰り返したり、ある物を特有な方法や固執した方法で整えたりする。
自閉症の子供の中には、一時は正常に発達した後、一旦獲得した発達を止めてしまう「後退」も見られることがあります。普通は1才と2才で起こります。多く
の自閉症児が繰り返し行動をしたり、噛んだり、頭をぶつける自傷行為をします。また、自分のことを「わたし」や「ぼく」という一人称で言わないことがあり
ます。
また、異常に見えるような行動も、実は、反復した語句を言うのは自分を落ち着かせるためであり、腕で羽ばたくようにするのは自分が幸せであり、自身を傷つけるのは自分が不幸である —— というメッセージを人に伝えたいだけなのかもしれないのです。
自閉症の早期発見
自閉症の子供の症状を改善するには、早期発見・早期介入教育をすることが重要です。以下、前述の症状と重複するところがありますが、自閉症児のもつ症状を箇条書きにしてみました。
- 自分の名前に反応しない
- 何を欲しがっているか分からない
- 話し言葉の遅れ
- 何かを命令しても、それに従ってくれない
- 時々、耳が聞こえていないのではないかと思う時がある
- 聞こえている時があるかと思うと、聞こえていない時がある
- バイバイをしない
- 以前は2〜3の単語を使っていたり何かしゃべろうとしていたのに、今はしない
- 時々、暴力的になる
- 変わった動きをする
- 異常に活発であったり、非協力的だったり、抵抗をする
- おもちゃで遊ぶことができない
- こちらが微笑んでも、微笑まない
- 目を合わせない
- ある特定の行為を繰り返し、それ以外の行為をほとんどしない
- 一人遊びを好む
- 自分だけの世界に住んでいるように思える
- 他の子供に関心を示さない
- 特定のおもちゃや物に対して過度の執着心がある
- 長時間、あるものを並べたり置いたりする
自閉症は早ければ、生後8か月で診断されることもありますが、典型的症状は1才半(18か月)頃までに出ることが多く、一般的に自閉症が診断されるのは3才前後です。以下の症状がある場合は、小児科医に相談して下さい。
- 生後12か月を過ぎても声を出さなかったり、しゃべるまねをしない
- 生後12か月までに何かを指差したり、バイバイしたり、物をつかむような動作をしない
- 生後16か月までに一言もしゃべらない
- 生後24か月までに2語句を使わない
- 以前に獲得した言葉や社会的スキルを失う
次回は自閉症の診断の治療について説明します。 |