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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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胸痛 (Chest Pain)
       
胸痛で救急室を訪れる人の大半は、心筋梗塞(心臓まひ)など心臓に関係のある病気を心配するようですが、実際には心臓以外の原因も多く、胸痛イコール心臓 の病気というわけではありません。ただ、心臓に関係のない病気でも、解離性大動脈瘤や肺塞栓症のように重症の病気があるので、胸痛は例えその原因が筋肉痛 であっても軽く考えることはできません。以下、胸痛の原因になる代表的な病気について簡単に説明をします。


・心筋梗塞(心臓まひ=Myocardial infarction=Heart attack)

心臓に血液を供給する冠動脈が血栓により閉塞することによって起こる病気ですが、血栓の詰まった冠動脈の部位や範囲によっては、心臓のポンプ機能障害、重 症の不整脈につながり、突然死の原因になります。痛みは、圧迫感や苦悶感、あるいは締めつけられるような胸痛として表現されます。左顎や両肩甲骨の間、左 腕、みぞおちなどに痛みが放散することがあります。痛みは通常20分以上続き、呼吸苦、冷汗、めまい、吐き気のような症状も伴います。高齢者や糖尿病のあ る人は胸痛を感じないことがあるので要注意です。


・狭心症 (Angina)

冠動脈の内腔がコレステロールなどの粥(じゅく)状物で狭くなると、血液が末端に行きにくくなります。血液必要量が増加する運動時や、精神的ストレス・情 緒的不安定時にその傾向が高まり、胸痛が起こります。胸痛は心筋梗塞時と似ていますが程度はより軽く、持続時間も数分以内です。不安定狭心症になると、軽 い運動や安静時にも胸痛が起こるようになります。

動脈硬化を原因とする狭心症以外に、冠動脈のれん縮(けいれん)で起こる狭心症もあります。冠動脈のれん縮は一時的に血液の流れを遮断し、それによって胸 痛がおこります。れん縮は自然に起こることもあれば、ニコチン、カフェイン、コカインなどの刺激物により誘発されることもあります。胸痛は安静時でも起こ り、就寝中に痛みで目覚めることがあります。


・心膜炎(Pericarditis)


心臓の周りを囲んでいる心膜の炎症である心膜炎は、ウィルス感染と関係のあることが多く、胸の中央部に鋭い痛みを起こします。他の症状は発熱や不快感などです。


・心筋炎 (Myocarditis)


心臓の筋肉(心筋)の炎症のことですが、大半はウィルスの感染で起こります。発熱、咽頭痛、頭痛などの風邪症状の後に、胸痛、呼吸苦、頻脈、関節痛、疲労 などがあると心筋炎を疑います。軽症であれば、風邪およびウィルス感染症とほとんど区別がつきません。重症の場合は心不全や不整脈を起こすことがありま す。


・喘息(Asthma)


大人でも子供でも、喘息は胸痛の原因になります。特に、子供の胸痛では心臓以外の原因が多く、喘息はその代表です。喘息の胸痛は締めつけられるような痛み や、だるい痛みですが、子供の場合、その痛みをうまく表現できないかもしれません。胸痛以外の症状には呼吸苦、喘鳴(ぜんめい)などがあります。


・解離性大動脈瘤(Dissecting Anuerysm)


心臓から出て行く大動脈の壁の内層が解離して、その間に血液が流れると、突然に、裂けるような胸痛と背部痛が起こります。胸部への鋭い衝撃や、高血圧が原因になります。


・肺塞栓症(Pulmonary embolism)


エコノミークラス症候群のように、高齢者や糖尿病などリスクのある人が長時間飛行機に乗って体を動かさなかったり、手術後のように長期臥床(がしょう)を すると、下肢の深部静脈に血栓ができて、それが肺動脈に飛んで詰まり、血液の流れを阻害します。胸痛は鋭い痛みで、咳や深呼吸をすると痛みがひどくなりま す。呼吸苦、頻脈、不安などの症状も伴うことがあります。先天的・後天的に血栓ができやすい、長期臥床や手術、癌(がん)、薬、血管内の空気、脂肪(骨折 時)、羊水なども肺塞栓症の原因になります。


・気胸 (Pnemothorax)


気胸は胸壁と肺の間にある胸膜腔に空気が溜まって起こりますが、自然気胸は若い細身・長身の男性に多く、症状は胸痛以外に呼吸苦、咳などです。胸痛の程度 はごく軽度のものから激痛に至るまであり、どちらか一方の胸部で起こります。自然気胸には、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、結核などの肺疾患の合併 症として起こる二次性のものもあります。


・胃食道逆流症(GERD=Gastroesophageal Reflux Disease)


胃食道逆流症は、食道と胃の間にある括約筋の異常による病気ですが、胸骨辺りの痛みや胸焼けを起こし、口の中が酸っぱくなったり、食べ物が口の中に逆流し てくるような感じがすることがあります。胸痛・胸焼けは食後30〜60分後に起こることが多く、特に食後、横になると症状が出やすくなります。


・胸膜炎(肋膜炎=Pleurisy=Pleuritis)


胸膜炎は肺を被う胸膜の炎症のことですが、胸痛は鋭い局所的な痛みで、深呼吸や咳をすると悪化します。多くは肺炎に伴い、他の原因としては自己免疫疾患などがあります。


・肋軟骨炎(Costochondritis


肋骨と胸骨の間にある肋軟骨の炎症です。痛みは軽度ですが、突発性の激しい痛みが起こることもあります。胸骨や胸骨近くの肋骨を押すと圧痛があります。


・パニックアタック(Panic attack


パニックアタックで胸痛が起こることがあります。他の症状としては頻脈、頻呼吸、激しい発汗、息苦しさなどです。


・筋肉痛(Myalgia)


筋肉性の胸痛は、上半身を左右に動かしたり、腕を挙げたりする動作で感じるようになります。慢性の線維筋痛症は持続性の胸痛を起こします。


・食道けいれん(Esophageal spasm


普通、食べ物を咀嚼(そしゃく)後に飲み込むと、食道の筋肉は食べ物を胃の方向に移動させるように動きます。ところが、食道けいれんでは食道の筋肉が正常 に働かず、痛みを伴う筋肉のけいれん(収縮)を起こします。食道けいれんはニトログリセリンでも痛みが軽減するので、虚血性心疾患と間違われることがあり ます。


・アカラシア(Acalacia)


食道下部にある括約筋の開閉の異常で、食べ物が胃に入りにくくなります。結果、食べ物の食道への逆流で胸痛が起こります。


・帯状疱疹(Herpes zoster=Shingles


水疱瘡(ぼうそう)にかかると、症状は改善しても、水疱瘡のウィルスは体の中に一生隠れて潜んでいます。そのウィルスが免疫が下がった時などに胸部などに 現れてきます。通常は小さな水疱群が神経支配に沿った範囲(帯状)に出てきます。水疱が出現する前から痛みが始まることも多く、その場合、鋭い胸痛が起 こっても診断は難しくなります。


その他の原因


胆石、胆のう炎、膵炎(すいえん)などの上腹部の病気があると、痛みが胸部に放散して胸痛を感じることがあります。肺癌や癌の肺転移も痛みを起こすことが ありますが希(まれ)です。肺炎、乳房の病気、線筋痛症、不整脈、胸部の外傷、過度の筋肉運動なども胸痛の原因になります。


症状による胸痛の鑑別


胸痛の原因を考える上で一番大切なのは、胸痛の性状です。それによって考える病気が変わってきます。胸痛の種類(圧迫感、鋭い痛み、焼けるような痛み、し ぼられるような痛み、重い痛みなど)、痛みの程度、部位、持続時間、発症の仕方(突然、徐々に)、痛みの起こる時間帯(朝、昼間、就寝前、就寝後、食 後)、痛みが悪化しているか。痛みが移動または他の体の部分に放散しているか。増悪因子(深呼吸、咳、食事、上半身の前傾)。運動との関係(運動中か安静 時か)、痛みは、ニトログリセリン、抗酸剤(胃薬)、ミルク、食後などの後に軽快したかどうか。


胸痛の検査


検査は可能性のある病気を考えながら進めていきます。狭心症を疑うと普通の心電図は正常なので、負荷心電図、または核医学的な心臓画像診断を行ないます。 虚血性心疾患の可能性が高い場合、心臓カテーテル検査が行なわれることがあります。血液検査で心臓の酵素であるCPKやトロポニン、LDH、血液算定、生 化学検査、Dダイマーといった項目を検査します。肺シンチなどの核医学検査も肺塞栓症などを疑えば行われます。虚血性心疾患や肺塞栓症の検査で、最近は CT(コンピューター断層撮影)や MRI(核磁気共鳴画像)による検査も行なわれることがあります。その他、考える原因によっては胸部X線、胃カメラ、胃のバリウム検査、心エコー、スパイ ラルCTなどの検査が選択されます。

次のような場合は救急車を呼ぶか、他の人に頼んで至急に救急室まで行って下さい。

・ 突然の激しい痛み・胸部苦悶感や圧迫感
・ 胸痛が顎や左腕、肩甲骨の間に放散
・ 胸痛と共に吐き気、めまい、発汗、動悸、呼吸苦がある時
・ 狭心症のある人で、痛みが突然普段よりも激しくなったり、軽い運動でも起こったり、長く続く場 合
・ 長時間の旅行の最中や後、あるいは長い臥床、手術の後、呼吸を伴う鋭い胸痛が起こった時
 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2007年4月1日号掲載)      



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