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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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幼児のしつけ (Discipline)
       
しつけは、両親や知り合いから聞いたやり方で行っている人もいれば、有名な著者の育児書を参考にしている人もいます。しかし、中には間違った育児方法が長年伝わっていたり、育児書によっては、著者の主張が前面に出て、少し極端な助言をしているものもあります。育児書の中では、アメリカ小児科学会が出版しているものが最も信頼できるので、今回はその育児書に沿って、1才から3才までの幼児のしつけのポイントを解説してみます。


三つ子の魂百まで
 
昔から「三つ子の魂百まで」(幼い頃の性格は年を取っても変わらない) と言われていますが、これはある意味では本当かもしれません。1才の誕生日を過ぎ、言葉を少しずつ子供が覚えていくと、それに伴って、自己主張が増えていきます。1才半から2才頃までに「いや!」を連発する反抗期に入っていきます。そこから3才くらいまでにどうしつけるかによって、子供のその後の行動に影響していくのです。


しつけは罰を与えることではない
 
しつけと言うと、子供が間違ったことをした時に罰を与えることだと誤解している人がいますが、Discipline is not punishment. すなわち、しつけは罰を与えることではないのです。しつけとは (社会的に) 適応していくためのルールを子供に教えることであって、それは愛情を注ぐことによって達成できるものなのです。

1〜3才の幼児にとって、子猫を叩いたり、道路に飛び出したり、他の子供の髪の毛を引っぱったりすることが悪いことだという自覚はありません。こういう善悪の判断ができないので、それを教えるのがしつけなのです。幼児が理解しないで行ったことを親が大声で叱ったり、お尻を叩いても何の意味もないのです。


子供は親の鏡である
 
しつけは愛情を持って行うわけですが、一番いい方法は、幼児にしてほしい行為を親自らが手本を見せることです。幼児が悪いことをした時に、親がどなったり叩いたりすると、幼児は自分もそうした行為をしていいと誤解をしてしまいます。親が子猫を優しく撫でる —— という手本を見せると、幼児はそれを真似て、優しく子猫を撫でるようになります。幼児にしてほしくない行為は、決して幼児に対してしてはいけません。親が幼児に対して優しく接する限り、その子供は他の子供に対して優しく接することができます。子供をしつけるということは、親が行っている行為を真似てもらうということでもあるのです。


最大のごほうびは褒めてあげること
 
幼児がいいことをした時、大いに褒 (ほ) めてあげましょう。そして喜んで、抱いてあげましょう。親から構ってもらうこと、褒めてもらうことが子供にとって最大のごほうびなのです。菓子類をあげることよりずっと大切です。

逆に、子供が最も恐れていることは、親から無視されることです。子供は親から構われていないと思うと、わざと悪いことをして、親の怒りを買うこともあります。そこまでしても親の関心が欲しいのです。


しつけには忍耐が必要
 
幼児は何度も何度も間違いを犯しながら学んでいきます。そうした学習の過程を受容する態度が親に必要になってきます。根気よく「教える」「理解してもらう」ということを行うのです。幼児はまた衝撃に基づいて行動するので、1度や2度間違ったからといって、怒ったり、大声を出したりしないで、暖かく見守ってあげてください。親業 (おやぎょう) には愛情と共に根気も必要なのです。


ルールには優先順位を
 
子供にルールを多く与えすぎると、子供は混乱してきます。そして、ルールが守られないことで親は失望し、子供は傷つきます。ルールは先ず優先順位を決め、大事なものから教えていきます。例えば、人を噛んだり、叩いたり、蹴ったりしないように理解させます。また、外で叫んだり、食べ物を投げたり、場違いな所で服を脱いだりしないように教えます。そうした優先順位の高いルールが守れるようになってから、次のレベルのルールを教えます。


自由に遊べる空間を
 
1才以上の子供の死因の第1位は事故によるものです。子供がけがをしたり、物を壊したりしない安全な空間を設けることは、事故防止だけでなく、しつけの面からも大事になってきます。壊れやすい物がいっぱい置いてあるような部屋は子供のプレイルームには適しません。子供に自由に遊んでもらう空間を設けることで、「これを壊してはいけない」という余計なルールを省くことができるからです。


叱り方
 
子供が大切なルールに従ってくれない時に、「〇〇ちゃんダメよ」と笑いながら言ってもしつけにはなりません。顔の表情で「ダメ!」ということを意思表示し、不満足 (不快) な声で注意します。そして、子供を他の場所に移すのです。

他の場所に移して一人にさせること。すなわち、time-out させることで子供に過ちを自覚させるのです。ただ、この time-out の時間はせいぜい数分間 (5分間以内)、または子供が泣き止むまでです。あまり長く time-out させても、子供は何故 time-out されたかの理由を忘れてしまいます。前にも述べたように、子供にとって一番いやなことは親から無視されることなのです。ですから、子供が悪いことをした場合の一番いい対処法は、短時間、子供を無視することなのです。

例えば、子供が悪い行為をした場合、まず大声で怒鳴る代わりに「ダメ。XXするのは止めなさい」とはっきり不満足というような声で注意して、子供を背後から抱き上げます。前方から抱き上げると、子供は嬉しくて、また同じ行為を繰り返す可能性があるからです。そして、子供一人で time-out させる安全な場所に連れていきます。そこにはおもちゃとか楽しく遊べるものを置かないようにします。そして、そこで2〜3分間独りにさせます。心配であれば、監視カメラで他の部屋で見ていても構いません。


体罰や怒りをぶつけるのはしつけではない
 
体を叩いたり、つねったり、手を叩くのはしつけではありません。大きな声でなじったり、怒鳴ったりするのもしつけではありません。親が子供に体罰を加えたり、あるいは言葉でなじるのは physical abuse や verbal abuse (身体的あるいは言葉での虐待) になってしまいます。

親が叩いたり、大きな声で怒鳴ったりすると、子供も自分が欲求不満の時は親と同じように他の人を叩いたり、大きな声で怒鳴ったりしてもいいと理解するようになります。


しつけは冷静に一貫して行う
 
しつけには一貫性が必要です。ルールがその場ごとに変わるようでは子供にルールを理解してもらうことはできません。また、両親の間でルールが違うと子供は混乱します。夫婦でよく話し合い、共通のルールを作る必要があります。すなわち、一貫性を持たせるのです。

そして、しつけを行う時は、親は冷静性さを保ちます。決して大声で怒鳴ってはいけません。冷静に注意をするのです。どうしても怒鳴りたくなる時は、大きく息を吸って、1から10まで数えて気を静めてください。そして、忘れないでください。「子供へのしつけは、まず親から手本を示す」ということを ——。


かんしゃくへの対応
 
1〜3才の子供は、自分の要求が満たされないとかんしゃくを起こすことがあります。かんしゃく自体は正常な発達過程の一現象ですが、その対処を間違えると、子供はもっとかんしゃくを起こすようになって、自分の欲求不満をコントロールできなくなってしまいます。以下はかんしゃくへの対処法です。

  1. 自宅で子供がかんしゃくを起こした場合は、子供を独りにする。外出先で起こした場合は、決して大声で怒ったりしないで、冷静沈着に子供を他の人のいない所に連れていく。(自分の車など)

  2. かんしゃくのきっかけが子供に何かを頼んだ後であれば、かんしゃくが終わってから、子供に冷静にそのことを再び繰り返す。

  3. かんしゃくを起こした時、子供がしばらく (1分以内) 息を止めることがあるが、決してあわてない。あわてて冷静さを失えば失うほど、子供はまた同じことを繰り返す。

  4. 子供に何かを頼む時は、命令口調よりは優しい言葉で頼む。

  5. 子供が「いや」と答えても動揺したり怒らない。冷静に、また同じように頼んでみる。この年頃の子供の「いや」にはあまり「No」という意味はない。

  6. 子供に「だめ」という言葉をあまり頻回に使用しないで、必要最小限に使う。

  7. 道路に飛び出さない、入浴、就寝などの基本的なことは子供と取引して行うことではなく「Must 」なので、菓子類などで取引しない。

  8. 選択枝はなるべく少なく設定する。どのお話を聞きたい、どのおもちゃで遊ぶ —— など。

  9. いつも同じ外出先でかんしゃくを起こす場合は、しばらく子供とそこへ行かないようにする。他の特定の子供と一緒の時にかんしゃくを起こす場合は、その子供としばらく一緒にさせない。

  10. 子供が良い行ないをした時は、大いに褒めてあげる。


最後に
 
しつけとは、絶えず子供の視点で物事を見るということなのです。子育てがうまくいかない時、一度子供の視点に立って考えてみてください。すると、どうして子供がそんな行動をするかが理解できるかもしれません。

しつけをする時は、決して他の子供と比べないで、ご自分の子供のペースに合わせて、楽しんでしつけを実践してください。子供のしつけとは、実は親自身が自分を教育する機会でもあるのです。子供が成長するだけでなく、親自身も成長することになるのです。(ですから、こんなに楽しいことはありませんね)
 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年7月1日号掲載)
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