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夜尿症は子供に一般的な疾患ですが、子供に与える精神的影響は大きく、自信喪失、不安、心配などの原因になります。また、親への精神的・肉体的負担も多大で、そのために夜尿症が子供の虐待につながることもあります。
アメリカでは500〜700万人の子供が夜尿症に悩まされていますが、医療機関に相談に来るのはその約3分の1にすぎません。
夜尿症とは
夜尿症は睡眠中に起こる尿もれのことですが、年齢が5歳を過ぎないと異常ではないので、5歳以上の子供の病気ということになります。6歳の子供で1か月に2回以上、6歳以上の子供では1か月に1度以上夜尿をすると夜尿症と定義されます。
夜尿症は一次性夜尿症と二次性夜尿症に分類され、一次性夜尿症は生来ある夜尿症のことですが、二次性夜尿症は6か月間以上夜尿から自立した後に起こる夜尿症を意味します。
年齢別による夜尿症の頻度は、5歳では15〜25%。7歳では5〜10%、10歳では5%以下になります。思春期の男女では1〜3%で、18歳以上でも1〜2%の人は夜尿をしています。夜尿症の15〜25%が二次性です。
夜尿症の原因
夜尿症の原因は一つではなく、複数の原因で起こるのではないかと考えられています。また、成長発達には個人差があるので、発達の遅延も原因の一つになります。
=遺伝=
これまでの研究では、両親とも子供の時に夜尿症があると、その子供は77%の確率で夜尿症になり、片親だけが子供の時に夜尿症がある場合は43〜44%、そして両親とも子供の時に夜尿症がなければ、その確率は15%まで落ちます。
=心理的原因=
過去に夜尿症が心理的原因で起こると考えられた時期がありましたが、現在では否定的です。心理的問題は夜尿症の結果として起こるものであって、夜尿症の原因になるものではありません。夜尿症の結果、戸惑い、不安、自信喪失などの心理的状態に陥ってしまうのです。それには、両親からの叱責や罰なども関与していることがあります。但し、二次的夜尿症の場合は心理的な理由が原因になることがあります。
=夜間の多尿=
夜尿症の子供は、夜間に抗利尿ホルモン量が上昇しない結果、夜間尿量が増えて夜尿が起こると考えている専門家がいます。ただ、尿量が増えるだけでは、何故子供が夜間に排尿のために起きないのかを説明することができません。また、利尿には抗利尿ホルモンだけでなく、ANP (心房性ナトリウム利尿ペプチド) やアルドステロンなども関与しています。
=膀胱の機能的障害=
膀胱の排尿機能に異常 (例えば、耐えられる膀胱内尿量の減少) があるのではないかという説もあります。これも「夜間多尿」の場合と同じく、どうしてその子供が夜間起きないのかの説明にはなりません。
=睡眠からの覚醒障害=
夜尿症の子供は深い眠りに入っているので、膀胱内の尿量が増えても、それを自覚しにくいと考えている人もいますが、ある報告によると、夜尿症を起こす子供もそうでない子供も睡眠中の脳波に変化はなく、睡眠の深さには差がないとされています。ただ、夜尿症の子供は、音などの刺激に対して睡眠から覚醒が困難なようです。
夜尿症の診断
夜尿の診断には詳しい問診と診察が必要です。問診、診察、尿検査で夜尿を起こすいろいろな疾患を先ず除外するのです。夜尿を起こす疾患としては、脊髄疾患による神経性膀胱、尿路感染症、後部尿道弁、尿管異所開口、慢性便秘、大便失禁、糖尿病、尿崩症などがあります。
問診では、夜尿の家族歴、子供の既往歴、1〜2週間以上の排尿日誌 (水分摂取量、昼間の排尿の頻度、排尿のパターン、排尿量、夜尿の回数と夜尿をした時間)、睡眠の記録 (就寝時間、起床時間、睡眠時間、睡眠の深さ、いびき、夜に何回くらい起きるか)、飲水と食事の記録 (量、回数、時間) などを調べます。
尿検査以外の検査は通常必要ではありませんが、他の疾患を除外するために、血液検査や膀胱検査、画像検査が行なわれる時があります。
夜尿症の治療
夜尿症治療の一番の目的は、子供の夜尿症に対する罪悪感、不安、心配などを和らげ、親の精神的・肉体的負担を軽減することです。親に夜尿症の経験があれば、その経験を子供と共有するのもいい方法です。子供を励ますような態度が必要なのです。子供に不満をぶつけたり、怒ったり、罰を与えることは治療には逆効果になります。
家庭で行なえる治療としては、日中一定時間毎 (例えば2時間毎) に排尿するよう促し、夕方以降は水分摂取を制限し、寝る前に必ず排尿させます。子供が夜尿をしなかった翌日にステッカーなどをあげる方法もあります。こうした方法を3か月程度試みて、効果がなければ医療機関を受診して下さい。
昼間に頻回に排尿をし、1回当たりの排尿量が少なく、ほとんど毎日夜尿をしたり、一晩に何回も夜尿をする子供は夜尿アラームが効果があるかもしれません。逆に、日中、ごく普通の排尿パターンで多量の夜尿を1週間に1〜2回程度する場合は、夜間多尿の可能性があり、抗利尿ホルモン療法の適応かもしれません。
=夜尿アラーム (Bedwetting Alarm)=
夜尿アラームは、子供がベッドや下着を濡らすとアラームが鳴るようになっています。この夜尿アラームによる方法が最も夜尿症に効果があり、再発率も低いと考えられています。
夜尿アラームは睡眠中の膀胱の尿保持力を高め、覚醒を促すことによって夜尿症を改善します。アラームは寝るときに下着やパジャマに装着します。子供の大半は夜尿アラームで覚醒することはありませんが、排尿を控えるようになります。アラームが鳴ると両親は子供を起こし、トイレでの排尿を促します。但し、子供を完全に覚醒させる必要はありません。シーツ、下着、パジャマを替えた後で、またアラームをセットします。
改善に要する期間は2週間程度から数か月の間ですが、成功率は7割前後です。子供のモチベーションが高ければ成功率も高くなります。両親のモチベーションも大切です。
先ず、少なくとも3か月間は試す覚悟で行ない、夜尿が改善したら、数週間から3か月程度アラームを継続します。
夜間にアラームが鳴ると、他の子供や大人の睡眠の妨害になるかもしれないので、アラームを使える環境があるかどうかがこの治療には重要になってきます。
夜尿アラームは、薬局でも購入できます。以下が夜尿アラームの発売元です。
Nytone Alarm : www.nytone.com
Potty Pager (silent alarm) : www.pottypager.com
DRI Sleeper : www.dri-sleeper.com/
=抗利尿ホルモン=
6歳以上の子供では薬物による治療が可能で、第一選択薬はデスモプレッシン (DDAVP) という抗利尿ホルモンです。
抗利尿ホルモンを就寝時や就寝の1時間前に服用すると、睡眠中の尿量が下がり、夜尿の頻度も下がります。抗利尿ホルモンには鼻スプレーと経口薬がありますが、アメリカでは鼻スプレーによる夜尿症の治療は2007年12月より禁止されています。経口薬では錠剤以外に口の中で溶けるタイプのものもありますが、アメリカではまだ販売されていません。錠剤では0.2 mgから始めます。最大量は0.6mgです。
副作用は鼻スプレーによるものが多く、最も重篤な副作用は水中毒によるけいれんなどです。水中毒の副作用を最小限にするには、水分を多く摂取しないことですが、特に夕方以降の水分摂取を控えるようにします。水中毒の初期症状は頭痛、嘔気、嘔吐です。
完全に治癒できるのは2〜3割程度ですが、再発率は高いのです。治療に反応した場合は治療を3〜6か月継続します。
=イミプラミン (Imipramine)=
この薬も6歳以上が対象です。イミプラミンは三環系抗うつ薬で、何故この薬が夜尿症に効果があるのかよく理解されていませんが、この薬の持つ抗コリン作用によって膀胱の収縮性が低下し、夜尿症が改善するのではないかと考えられています。この薬によって完全に改善するのは25%程度で、再発率も高いです。
副作用は不整脈など心臓に対する副作用があるため、夜尿症の薬物療法としては第一選択薬ではありません。もし、他の治療でダメな場合に始めて、3〜6か月治療した後、徐々に服用量を下げていきます。副作用は、便秘、排尿困難、眠気、食欲低下、人格の変化などです。重篤な副作用の可能性があるため、WHO (世界保健機構) からは夜尿症の治療としては勧められていません。
夜尿の治療については、日本夜尿症学会のウェブページに詳しく紹介されています。関心のある方はそちらを参考にして下さい。
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