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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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関節炎(Arthritis)
       

関節炎と一口に言っても、その原因となる疾患は100以上もあり、そのすべてを説明するのは不可能ですので、今回はその中でも、代表的な変形性関節症、関節リウマチ、痛風を取り上げます。

高齢の方で、関節痛や関節の腫れがあると、一般的に「リウマチ」と呼ばれることがありますが、この一般的に言われている「リウマチ」と医学的に診断された関節リウマチは必ずしも同じとは限りません。「リウマチ」と言われている関節炎の大半は変形性関節症という高齢に伴う関節炎で、本当の関節リウマチとは異なります。便宜上「リウマチ」という病名が使われているだけのこともあります。

 

関節炎とは

関節炎は関節の炎症のことですが、体のどの関節も炎症を起こす可能性を持っています。関節炎が進行すると、関節内の軟骨が破壊されていき、関節の変形が起こり、最終的には関節そのものが破壊されていきますが、関節炎によっては治療によって治癒したり、進行が抑えられることがあるので、すべての関節炎が同じような経過をたどるわけではありません。

関節リウマチや乾癬 (かんせん) 性関節炎は自己免疫疾患で、細菌性関節炎は細菌の感染で起こります。痛風は尿酸の結晶で、偽痛風はピロリン酸カルシウムの結晶で、変形性関節症は年齢的変化、関節の感染、あるいは関節への外傷をきっかけに起こります。解剖学的な異常があれば、年齢的に若いうちから始まります。

変形性関節症は、典型的には夜や休んだ後に痛くなります。関節リウマチは朝に症状がひどく、その後、改善してきます。高齢者や子供の場合、関節痛の代わりに、関節炎の関節を使わないとか、関節炎のある足を動かさないといった症状を呈することがあります。

関節の音を鳴らすと関節炎になりやすい —— との誤解がありますが。関節の「ポッキ」とする音は骨と骨が擦 (こす) れて鳴るわけではなく、関節液に大きな圧力がかかって鳴る音なのです。

変形性関節症(変形性関節炎/Osteoarthritis=OA)

変形性関節症は、年齢そのものが原因になっているわけではありませんが、年齢が上がるに従って起こりやすくなるので、一種の老化現象とも言えます。加齢と共に関節内軟骨のプロテオグリカンという構成物が少なくなると、軟骨に含まれる水分が減少し、弾力性が落ち、衝撃や摩擦に対する抵抗力が低下します。そして、軟骨が年と共に磨り減っていきます(英語では wear and tear と表現されています)。

ショックアブソーバーである関節軟骨が磨り減ると、痛みなどの症状が起こります。関節の炎症や関節の骨端表面にできる骨棘 (こつきょく) という突起状物も痛みの原因になります。

変形性関節症は、高齢化によるもの以外に、スポーツ外傷、肥満、関節への手術、事故、腱 (けん) の傷害、糖尿病、ホルモン異常などを原因として2次的に起こることがあります。

変形性関節症はどの関節にも起こりますが、体重の負荷がかかる関節 (膝など) によく起こります。膝以外の好発部位としては、手指、股関節、膝、首、腰などです。手指は遠位指関節 (第一関節) に起こることが多く、近位指関節に好発する関節リウマチとの鑑別になります。 

症状としては、関節痛、関節の腫れ、関節のこわばり、骨と骨が擦り合うような感覚などです。X線では、関節軟骨の変化が顕著にならないと診断できないので、診断は主に臨床症状・所見で行われます。

治療は痛みのコントロールと関節機能の向上に焦点が当てられますが、これには運動、休養、体重コントロール、薬物療法、外科手術、代替医療などがあります。残念ながら、変形性関節症そのものを治す治療法はありません。特に、運動は痛みを和らげ、関節の柔軟性を増し、体重のコントロールも助けるのでとても重要です。

痛みを和らげる方法としては、温かいタオルやホットパック、温水シャワーやお風呂の利用などが挙げられます。但し、冷やした方がよい時もあります。膝が痛い時は、靴の中にインソールやクッションを入れます。鎮痛薬としては、市販の薬であるタイラノール (アセトアミノフェン)、イブプロフェン (モトリン、アドビル)、ナプロキシンがあります。処方薬としては celecoxib やvaldecoxib などの長時間作用型の薬があります。ステロイド、ヒアルロン酸、塗り薬も使われます。 

関節ブレース、補助具、ウォーカーの使用や理学療法。場合によっては外科的手術の対象になります。8割以上が股関節や膝の人工関節手術です。鍼灸などの代替療法。グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントは、研究の結果では限られた効果しかなく、効果にも個人差があるようです。他に、軟骨細胞の自家移植、細胞工学法による軟骨の再生術などの治療法もあります。

 

関節リウマチ(Rheumatoid arthritis) *

関節リウマチは、遺伝、ホルモン、環境など様々な要因の相好作用により起こりますが、自己免疫疾患の一つと考えられています。

関節は赤く熱く張れ、痛みを伴います。気分不快、疲れやすさも起こり、時には発熱します。通常、関節症状は左右対称に起こります。初期の場合は診断が難しい場合があり、何らかの検査で診断できるわけではありません。症状も個人差があります。血液検査ではリウマチ因子、抗核抗体、シトルリン抗体などを調べますが、関節リウマチでもリウマチ因子が陰性の場合があります。

診断にはアメリカリウマチ学会の診断基準が一般的に使われます。1時間以上続く「朝のこわばり」や3領域以上の関節炎、手の関節の腫れ、対称性の関節の腫れ、リウマトイド因子陽性などの基準です。朝起きて、1時間以上も手指がこわばって指が使えない症状が6週間以上続くと、関節リウマチの可能性が高くなります。

関節リウマチは関節以外に、眼、心臓、肺など多臓器に合併症を起こす可能性もあります。

治療は薬物治療が中心になりますが、運動も重要な治療の一つになります。関節の痛みが和らいでいる時には、運動を奨励しますが、関節痛がひどい場合は休養が必要です。薬物療法は、痛みや炎症を緩和させる対症療法から、関節リウマチの病気の進行を抑える抗リウマチ薬 (DMARDs=メトトレサート、レフルノマイド、スルファサラジン、シクロスポリン等) などがあります。現在は、早期に抗リウマチ薬を使用し、病気の進行を抑えることが推奨されています。ステロイドもよく使われています。

新しい薬として、関節のダメージを緩和するetanercept、infliximab、anakinra のような薬があります。病気の初期に、こうした新しい薬や DMARDs を組み合わせて使うと、関節破壊の進行を食い止められる効果があると考えられています。

 

痛風性関節炎(Gouty arthritis)

痛風は、関節内の尿酸結晶によって起こる関節炎ですが、原因は遺伝的要素以外に、食事、体重、アルコールなどがあります。血中の尿酸値が上がるメカニズムは、体内で尿酸が多く産出されるか、体内からの尿酸の排泄が低下しているかのどちらかなので、原因を突き止めるためには24時間尿を取って、尿中の尿酸値を検査する必要があります。

発作はよく夜間に起こります。普通は一つの関節を侵します。特に、足の親指の付け根、足首、膝などですが、足の親指はとりわけ頻度が高くなります。関節穿刺 (せんし) をして、関節液の中に尿酸結晶があれば診断は確実です。

治療の目標は、痛みを抑える、将来の発作を抑える、尿酸が関節や組織の中に溜まるのを防ぐ、腎結石になるのを防ぐということです。抗炎症鎮痛薬、ステロイド、コルヒチン (特に、発作から12時間以内に取る) などがありますが、実際に痛風発作がなく、血中の尿酸値が高いだけでは治療の対象にはなりません。

*慢性関節リウマチという病名は、2002年日本リウマチ学会により「関節リウマチ」に変更されました。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年6月1日号掲載)
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