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今回は、前回のCPR (大人編) に続き、その小児編を米国心臓協会の心肺蘇生術 (CPR) のプロトコールに沿って解説します。小児の場合、目撃者あるいは発見者によるCPRが大人以上に効果的で、特に呼吸停止による心肺停止の蘇生率は高いのですが、心肺停止の小児のうち半数以上は救急隊の到着までにCPRを受けずにいます。
小児の心肺停止の予防
小児の心肺停止の大半が、呼吸不全、乳児突然死症候群 (SIDS)、敗血症、神経学的疾患、外傷によって起こっていて、予防可能な場合が多いのです。
=外傷=
外傷は1才以上の小児の第1の死亡原因で、その多くは予防可能です。外傷は交通事故、自転車事故、溺水、火傷 (やけど)、銃火器によるものがありますが、大半は交通事故によるものです。そして、その原因の多くが、小児用のチェアやシートベルトの未使用、ティーンエージャーの運転によるものです。小児は車外でも交通事故に巻き込まれることが多く、親が注意をそらした瞬間、道路に飛び出したりして交通事故に遇います。
自転車による事故でも毎年150人近くが死んでいます、そのほとんどが頭部外傷によるもので、ヘルメット着用で予防が可能です。火事による死亡は、火災報知器があればその大半が防げると考えられています。アメリカでは銃器による事故もありますが、銃器を家の中に置かないことで防げます。
=SIDS (乳児突然死症候群)=
1才未満の赤ちゃんの突然の死をSIDSといいますが、未だに原因は不明です。生後2〜4か月に多く、リスクとしてはうつ伏せ寝、柔らかい表面に寝かせている、間接喫煙などです。1992年以降、アメリカでは仰向けに寝かせることが奨励されてきたため、頻度は4割も下がってきています。
=溺死=
溺死は5才以下の小児の外傷による死亡原因では第2位です。ほとんどの例が、親の監視を離れて、プールに落ちて起こります。ティーンエージャーの溺死は湖や川で泳いだりボート漕ぎの際に起こります。こうした溺死は、プールの周りにフェンスを付ける、あるいはライフジャケットを着ることで防げます。
小児のCPR
ここでは、主に1才以上8才未満の小児のCPRを解説します。
(1) 現場の安全確保。
救助者は自分と被害児の周りの安全を先ず確保します。被害児を移動するのは、被害児の安全を確保するのみに限ります。
(2)倒れている子供の反応を確かめる。
軽くたたいて「だいじょうぶ?」と大きな声で呼びかけます。被害児に反応があり、治療が必要と思われた場合は救急車を呼びます (アメリカの場合は911に電話)。そして、その被害児の状態を頻回にチェックします。呼吸苦がある場合は、その子供が最も楽に呼吸できる姿勢を保ちます。
(3)救急車を呼ぶ。AEDを取りに行く。
被害児に反応がなく、体を動かさない場合は、助けを求め、CPRを開始します。救助者が1人の場合は、CPRを5サイクル(約2分)続けます。1サイクルで30回心臓マッサージをして、2回息を吹き込みます。そして、5サイクルが終わったら救急車を呼びます。
救助者が2人の場合、1人がCPRを開始し、他の1人が直ちに救急隊を呼び、AED (Automated External Defibrillator=自動体外式除細動器) を取りに行きます。被害児に外傷があれば、1人が子供の首を支えます。被害児を安全な場所に移動しないといけない場合は、頭と首を支えながら移動します。
(4) 小児の心肺停止や、突然崩れて意識をなくしてしまった場面を目撃した場合 (例えば競技中の小児)。
救助者が1人の場合は、すぐに救急車を呼びます。そして、CPRを開始する前にAEDを取りに行きます。但し、(3)のように2分間のCPR (5サイクル) を開始した後で救急車を呼んだり、AEDを取りに行ってもかまいません。救助者が2人の場合は、1人がCPRを行ない、もう1人が救急隊を呼び、AEDを取りに行きます。
(5) 被害児の姿勢
被害児に反応のない場合は、子供を仰向けにし、表面が平らで硬いテーブルの上や床、地面などに横たえます。被害児を仰向けにする時、首と頭を支えながら行ないます。
(6)気道の確保
救助者が1人の場合、被害児の頭を後ろに傾け、あごを上げるようにします。これによって呼吸がしやすくなります。
(7)呼吸の確認
被害児の鼻に自分の耳を近づけ、呼吸音の有無を確かめます。同時に、胸の方を見て、胸やお腹が上下に動いているかを確認します。この呼吸の確認は10秒以内に行います。被害児が呼吸をしている場合で、外傷のない時は被害児の体を横に向けます。それによって気道は開き、誤嚥 (ごえん) の可能性を減らします。
(8)2回息を吹き込む
被害児が息をしていなければ息を吹き込みますが、相手の鼻を指でつまんで鼻孔を閉じ、口から息を吹き込みます (Mouth-to-Mouth)。但し、乳児の場合は鼻と口の両方から息を吹き込みます (mouth-to-mouth-and-nose)。
救助者が1人の場合、30回心臓マッサージをする毎に2回息を吹き込みます。救助者が2人の場合、15回の心臓マッサージ毎に2回息を吹き込みます。
息の吹き込みは1回につき1秒程度。胸壁が上がるくらいの強さで行い、あまり早過ぎたり、息を強く吹き込み過ぎてもいけません。息を吹き込んでいる時は普通に呼吸をし、深呼吸をする必要はありません。
息を吹き込むことができない場合は直ちに心臓マッサージを開始します。「あえぎ」を呼吸と誤解することがありますが、「あえぎ」は呼吸をしている状態ではありません。
(9)心臓マッサージ
心臓マッサージでは胸骨の下半分のところを押します。丁度、左右の乳頭を結ぶ線上の真ん中くらいです。そこに一方の手のひらを置き、もう片方の手のひらを重ね合わせます。そして、胸がその厚さの3分の1から半分くらい下がるまで押します。1回胸を押すたびに、下がった胸が元に上がってくるのを待ちます。1分間に100回押します。子供の場合、胸が十分に下がるようであれば片手で行なってもかまいません。赤ちゃんの場合は胸骨を2本の指で押します。
(10)心臓マッサージと呼吸との関係
心臓マッサージと息を吹き込む頻度は、30回心臓マッサージを行う毎に2回息を吹き込みます。これが1サイクルです。2人で行なう時は5サイクル毎に交替します。心臓マッサージは1分間に100回、息の吹き込みは1分8〜10回程度の頻度です。
AEDの使用
目の前で、小児が心停止すると (特に競技中)、心室細動や心室頻脈などの命に関わる不整脈の場合があるので、CPRのみならずAEDによる除細動が必要となります。AEDが到着した時はすぐにAEDを使用します。その後、CPRを5サイクル毎に必要があれば除細動をします。
小児のCPRで大切なこと
大人の心停止者の場合、心停止をしても、その後数分間は血中に十分量の酸素が含まれているので、心停止後の数分間は心臓マッサージの方が息を吹き込むことより重要だと説明をしましたが、小児の場合は窒息による心停止児が多いので、息を吹き込むことも重要になってきます。
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