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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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心肺蘇生術 =大人編=(Cardiopulmonary Resuscitation=CPR) 
       

突然死のうち、心臓突然死 (sudden cardiac death=SCD) の割合がアメリカでも日本でも約半数を占めます。アメリカでは年間約25万人の人が、日本では約5万人の人がこの心臓突然死で亡くなられています。

この半数以上の人が、CPR (心肺蘇生術) や除細動を、心停止してすぐ開始すれば救命できるのではないかと考えられています。多くの市民がCPRの仕方を知ることと、AED (Automated External Defibrillator=自動体外式除細動器) がどこでも利用できることが心臓突然死の救命に非常に重要だということが、日米を始め、世界的にも認識されるようになってきました。

今回は、2005年に改訂された米国心臓協会のCPRプロトコールに沿って、CPRのやり方を説明します。

 

心臓突然死とAED(自動体外式除細動器)

心臓突然死は、心筋梗塞 (こうそく) などの虚血性心疾患、心臓弁膜症、心筋肥大症などの心臓の病気が原因で起こる突然死ですが、その突然死の原因の半数近くは、心室細動という致死的な不整脈で起こっています。

そして、この心室細動があるうちにAEDなどで除細動すれば、救命率が上がります。逆に、除細動をしないでいると、心静止という心電図上フラットな状態になってしまい、救命が極めて困難になってきます。

アメリカでは、空港、駅、カジノなど多くの施設、公共の場でこのAEDが設置されていますが、日本でも2004年7月より一般の人でも使えるようになり、航空機、空港、駅、ホテル、学校、スポーツ施設、デパートなどに設置されるようになりました。

AEDの使用は特別な訓練を必要とせず、音声ガイドや視覚ガイドに従うだけで誰でも使用できます。心停止者の胸に電極バッドを重ならないように2枚貼り、後は音声ガイドや視覚ガイドにしたがって操作するだけです。

AEDは自動的に心電図を解析し、電気ショックが必要かどうかを判断して知らせてくれます。そして、誰も心停止者に触れていないことを確認してから、ボタンを押せばいいわけです。

 

心臓突然死とCPR

CPR (心肺蘇生術) は、AEDがすぐに利用できるかどうかに関わらず極めて重要です。CPRの開始時間によって心停止者の救命率が変わってくるからです。心停止者を目撃したら、すぐにCPRを始める必要があります。

心停止後3〜5分以内にCPRと除細動を行えば、半数から4分の3の人を救命することができます。AEDを使用し、除細動を行なって正常な心拍が再開しても、心静止を起こしたり除脈になったりすることもあるので、除細動後もCPRを継続して行なう必要があります。

CPRの講習会は多くの国、自治体、赤十字社、(日本では) 消防署などで素人向けに実施され、一定の成果を挙げています。アメリカの都市によっては、市民の多くがCPRをマスターし、心臓突然死の救命率を上げています。

アメリカではRed Cross (赤十字) などいろいろな機関がCPRの講習会を素人向けに行なっていますので、なるべく多くの人が受けることをお勧めします。

 

CPRを開始する前に先ず行うこと

(1)現場の安全確保:

救助する人は、現場の安全をまず確保します。外傷のある人は、建物の中で火災が起こっているような非常事態の場合を除いて、極力動かすことを避けます。

 

(2)倒れている人の反応を確かめる:

肩を少し軽くたたいて「だいじょうぶですか?」と大きな声で聞いてみます。もし、倒れている人に反応があり、怪我をしていたり、治療が必要な場合は救急車を呼びます (アメリカの場合は911に電話)。そして、その倒れている人の状態を頻回にチェックします。

 

(3)救急車を呼ぶ。AEDを取りに行く:

もし、倒れている人に反応がなければ、先ず救急車を呼び、近くにAEDがあれば取りにいきます。救急隊に電話する時は、場所、何が起こったか、犠牲者の数と状態、どのような救助を行ったかを報告します。911をした人は、救急機関の指示があるまでは電話を切らないでその指示に従います。

 

(4)CPRと除細動の開始:

もし、救助者が1人だけであれば、救急隊に電話後すぐにCPRを開始します。2人以上の人がいれば、1人はCPRを始め、もう1人が救急隊を呼び、AEDを取りにいきます。空港やカジノなど、救急隊がすぐに来れる所は、そこで助けを求めます。

 

CPRの行い方

(準備)

先ず、心停止者を表面が固い場所に仰向きに寝かせます。頭を後ろに傾け、あごを上げるようにします。

 
(1)呼吸の確認:

心停止者の鼻に自分の耳を近づけ、呼吸音の有無を確かめます。同時に、胸の方を見て、胸が上下に動いているかを見ます。この呼吸の確認は10秒以内に行います。

 
(2)2回息を吹き込む:

心停止者が息をしていなければ、相手の鼻を指でつまんで鼻孔を閉じ、口から息を吹き込みます (Mouth-to-Mouth)。息の吹き込みは1回につき1秒程度で、2回行ないます。胸壁が上がるくらいの強さで行い、あまり早くやり過ぎたり、息を強く吹き込み過ぎてもだめです。息を吹き込んでいる時は普通に呼吸をし、深呼吸をする必要はありません。

もし、息を吹き込むことができない場合は、直ちに心臓マッサージを開始します。「あえぎ」を呼吸と誤解することがありますが、「あえぎ」は呼吸をしている状態ではありません。

 
(3)心臓マッサージ:

心臓マッサージでは胸骨の下半分の所を押します。丁度、左右の乳頭を結ぶ線上の真ん中くらいです。そこに一方の手のひらを置き、もう片方の手のひらを重ね合わせます。そして、約4〜5センチ胸が下がるくらいに押します。1回胸を押すたびに、下がった胸が元に上がってくるのを待ちます。

 
(4)心臓マッサージと呼吸との関係:

心臓マッサージと息を吹き込む頻度は、30回心臓マッサージを行う毎に2回息を吹き込みます。これが1サイクルです。2人で行なう時は5サイクル毎に交替します。心臓マッサージは1分間に100回、息の吹き込みは1分8〜10回程度の頻度です。

 
(5)AEDの使用:

AEDが到着した時は、すぐにAEDを使用します。そして、その後CPRを5サイクル行うたびに必要があれば除細動をします。

 
(6)CPRの評価:

CPRのサイクルを5回繰り返す毎に、心停止者の呼吸の状態を調べます。そして上述したように、その時に必要があれば再度除細動をします。

 

CPRで大切なこと

心停止後の数分間は、心臓マッサージの方が息を吹き込むことより重要です。心停止をしても、その後数分間は血中に十分量の酸素が含まれているからです。従って、心臓マッサージで心臓や脳への循環血液量を増やすことが重要なのです。そのため、心臓マッサージを中断なしで継続して行うことが必要です。但し、CPRの時間が長くなってくると、息を吹き込むのも重要になってきます。

溺水など窒息による心停止者には、最初から息を吹き込むことが大切です。もちろん、心臓マッサージも同時に行います。溺水者には先ず2分間CPRを行い、それから救急車を呼びます。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年4月1日号掲載)      
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