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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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新しい喘息 (ぜんそく) 治療の指針  (Asthma)
       

アメリカでの喘息人口は2200万人で、そのうち600万人が子供です。喘息がアメリカ社会に与える影響は大きく、喘息の理解、そして予防と治療はアメリカ医療の大きな課題になっています。

アメリカでは、厚労省のアメリカ版であるNIH (国立健康機関) が中心になって喘息の専門家が集まり、膨大な研究資料を吟味し、1991年に「喘息の診断と治療の指針」の第1版を出しました。それ以来、アメリカでの喘息の診断と治療はその指針に沿って行われるようになりました。これは、アメリカだけではなく、世界中の喘息の治療にも大きく影響を与えたのです。1997年にその第2版、そして2002年に改訂版が出て、昨年10月に第3版が出ました。

この第3版「喘息の診断と治療の指針」はおびただしい数の研究成果を吟味し、Evidence-based medicine「証拠に基づく医療」を標榜 (ひょうぼう) するアメリカ医療の真髄を物語るものになっています。以下、417ページもの膨大な報告書である第3版を、ごく簡単に紹介します。

 

喘息とは?

喘息は慢性の呼吸器の病気で、主に気道に影響します。気道は空気の出入りをする通路ですが、アレルギー源や刺激物に対して反応を起こすと炎症が起こり、気道が過敏になります。さらに、気道は狭くなり、空気の出入りが悪くなります。この結果、ひゅーひゅーという喘鳴 (ぜんめい)、咳、胸の締めつけ感、呼吸苦が出ます。

喘息が悪化すると、喘息発作の状態になります。気道外側の筋肉が収縮し、気道内の粘液が増え、空気の出入りはさらに悪くなります。普段使用している喘息の薬で発作をコントロールすることができなければ、かかり付けの医師のところへ行くか、緊急医療センターや救急室に行くことになります。

 

喘息の原因

喘息の原因はいろいろ考えられていますが、「衛生仮説」によると、体内に存在するTh-1型サイトカイン (生体化学物質の一つ) とTh-2型サイトカインのバランスによって喘息は起こると考えられています。Th-1型サイトカインは感染と闘うことに関与し、Th-2型サイトカインはアレルギーに関与します。

乳幼児期にある種の感染をしたり、他の子供と多く接触したり (託児所の子供たちや年長の兄弟との接触 → 呼吸器感染症の可能性が高くなる)、抗生物質の使用が少なかったり、田舎に住んでいたりすると、Th-1型サイトカインの関与が高くなり、相対的にTh-2型サイトカインの関与が下がり、喘息などのアレルギーになりにくくなります。その逆だと、Th-2型サイトカインの関与が増大して、喘息になりやすくなるというものです。

家族に喘息の人がいると、喘息になる確率が高くなるので、遺伝的な関与も示唆されます。環境要因としては、空気中のハウスダストのダニとアルテルナリア (Alternaria) という真菌の関与、それにウィルス性の上気道感染症 (ライノウィルス、RSVなど) との関与が重要です。

 

喘息の症状と診断

症状としては、夜や早朝の咳、喘鳴、息苦しさ、胸部苦悶感などですが、乾いた咳だけのこともあります。こうした症状は、気管支の収縮、気道の過敏性、そして気道の浮腫が原因で起こります。1才以下の赤ちゃんは気道が狭いため、粘液の過剰分泌と粘液塞栓で突然呼吸不全に陥ったり、呼吸が止まってしまうこともあります。また、運動中に胸が苦しくなったり、咳が出たり、呼吸が苦しくなる運動誘発性の喘息もあります。

喘息の診断はスパイロメトリーという肺機能検査で行ないますが、5才以上でないと判断できないので、幼少の子供は臨床的に判断することになります。喘息は慢性の呼吸疾患なので、1、2回軽い喘鳴があっただけで喘息と診断することはありません。

 

治療開始前に

今回の「指針」で、喘息の治療は3つの年齢グループに基づいて行なうようになりました。すなわち0才から4才、5才から11才、それに12才以上。そして、治療はステップ1からステップ6までの6段階で、ステップ毎に行うことになっています。

治療を開始する前に、喘息の重症度を決めます。喘息の重症度は、軽症間欠型、軽症持続型、中等症持続型、重症持続型の4つに分類され、その定義は詳しく決められています。簡単に行なう方法としてはピークフローを測定します。これが期待値の80%以上あれば軽症、60〜80%以上であれば中等症、60%以下は重症ということになります。そして、間欠型か持続型かの区別は、1週間に2日以上症状があるかどうかで決めます。但し、年齢によって、より詳しい定義があります。持続型の喘息はステップ2から6までの段階的治療を受けることになります。

 

「指針」の治療ハイライト

 
全年齢、重症度を通じて、吸入型気管支拡張薬とステロイド吸入薬が治療の基本になりますが、今回の「指針」における治療のハイライトとしては、(1)ステロイド吸入薬が全年齢層で最も好ましい長期管理薬 (コントローラー) であることの再確認。(2) 5才以上でステップ3以上では、ステロイド吸入薬単独治療の代わりに、ステロイド吸入薬+長時間型の気管支拡張薬の組み合わを使うこともできるということ。これは、気管支拡張薬の頻回の使用による喘息の悪化を起こす可能性のある子供や大人にも使えます。(3)12才以上の重症の子供と大人には、免疫グロブリンEの拮抗薬である Omalizumab (商品名=Xolair) オマリズマブの注射が長期コントロールの選択肢の一つとして薦められています。(4)軽症もしくは中等症の持続型で喘息の原因のはっきりしている人は、減感作療法も薦められています。

 

その他、喘息治療で重要なこと

治療開始の重症度、発作時の重症度を決めるのは、発作の頻度やピークフローの値が重要になってきます。ピークフローメーターで普段の値を記録して、ベストの値を知ることは重要です。

継続診療が大切です。治療開始後、あるいは発作のコントロールを行なっている間は比較的頻回に、そして、長期コントロール後も最低数か月に1度は診察を受けるようにします。

スパリロメトリーの肺機能検査は1〜2年に1回は行ないます。

 

その他、年齢別注意点

<0〜4才児>

頻回の喘鳴 (過去1年以内に4回以上)、喘息の家族歴 (特に親)、アトピー性皮膚炎、食べ物アレルギー、他のアレルギー、血球算定中4%以上の好酸球、風邪以外の時の喘鳴などが存在すると長期治療の可能性が高くなります。

喘息の治療を継続して4〜6週間以内に改善がなければ、治療法を変えるか、喘息でない可能性も考えます。もし、治療効果があれば、最低3か月以上治療を継続します。

週に2日以上吸入型気管支拡張薬を必要とし、それが4週間以上続く場合、あるいは過去6か月以内に経口ステロイドの治療を2回以上必要とした場合は、長期のステロイド吸入薬による治療が必要です。

 

<5〜11才児>

運動誘発性喘息があれば治療をします。その場合は学校との協力が必要です。

 

<12才以上>

長期ステロイド吸入を使っている人はカルシウムとビタミンDを摂取します。抗高血圧薬であるベーターブロッカーや非ステロイド性抗炎症鎮痛薬を服用している人は、気管支拡張薬の効果が落ちたり、喘息を誘発する可能性もあります。

 

妊娠中の喘息治療

妊娠中は喘息が悪化する人が3分の1、改善する人が3分の1で、喘息を治療しないで症状が出るよりは、薬を使って治療をした方が安全と説明されています。肺機能を正常に維持することは胎児に十分な酸素が行くのに重要なのです。妊娠中には、吸入気管支拡張薬は Alubuterol、ステロイド吸入薬は Budesonide (商品名=Pulmicort Turbuhaler) を使用します。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年2月1日号掲載)      
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