|
| |
 |
|
|
金澤 信二郎
東洋医学修士(MTOM)
全米及びカリフォルニア鍼灸師免許取得。日本における経路治療の第一人者である首藤傳明先生に師事。和漢薬学会員。北米東洋医学会々員。東京教育大(現・筑波大)哲学科卒。現在、カフォルニア州のリッジクレスト(Ridgecrest) で夫婦で鍼灸漢方に従事。
ご質問、ご連絡はこちらまで
|
| |
|
|
|
 |
| |
| ヴァレー・フィーヴァーをご存知ですか? |
| |
|
|
|
今、患者さんの一人が病院で亡くなったと知らされ、非常に悔しい思いをしています。亡くなったのではなく、はっきり言って「殺された」と言いたいくらいで
す。患者さんが患っていたヴァレー・フィーヴァー(Valley Fever =谷熱)
は、本来現代医学に携わる方々に書いて頂く話題なのですが、今回、いろいろ調べてみましたので、紹介することにしました。
(出典:University of Arizona's ValleyFever Center for Excellence, US)
アメリカ西南部の風土病
ヴァ
レー・フィーヴァーとはアメリカ西南部、メキシコ北西部一帯の乾燥地帯の風土病です(地図参照)。初めてサン・ホアキン・ヴァレーで発見されたのでヴァ
レー・フィーヴァー(直訳すれば「谷熱」ですか)と呼ばれ、一般的には肺がやられますが、アメリカインデアン系、メキシコ系、アジア系の男性では関節に拡
散することもあるのでヴァレー関節痛(arthritis:アースライテス) とも言われます。
(出典:University of Arizona's Valley FeverCenter for Excellence, US)
コクシ・カビ
原因はコクシディオイデス(略してコクシ)という土に住むカビで、強い風で胞子が飛んで、それを吸い込むことで感染します。宮崎駿の『風の谷のナウシカ』
を思い出しますね。6 ~ 7 月から11
月が被害の出る時期です。肺に感染したときの症状は風邪の症状と変わらず、だるくなってやる気がなくなり、微熱が出たり、咳が出るようになったり ̶̶
だそうです。どうも風邪とは違うようだと感じたときは血液検査をしてもらって下さい。肺に入った胞子はパンにつくカビのようになって広がり、肺結核に似た
塊(かたまり)
となったり、肺胞を壊して空洞にしたりします(イラスト参照)。レントゲンで肺がんと間違われることもあるそうです。肺のほかに皮膚、関節、脳に拡散する
こともあります。
住人の3 分の1 が感染?
残念ながら、ヴァレー・フィーヴァーにはワクチンがないので予防法はありませんが、免疫力が通常なら発病する心配はありません。罹っても一般的には治療し
なくても治り、医者に行くとカビに効く薬で治療します。健康ならあまり心配することがないので、カリフォルニアやアリゾナを旅するといっても保健所で注意
されることはないでしょう。それでも、ある調査では、ベーカーズフィールドの住人の調査対象の1/3が自覚のあるなしに関わらず感染していたといいます。
ベーカーズフィールドに強風が吹くとサンフランシスコにまでコクシの胞子が飛ぶと言われます。人間だけではなく動物、特に犬も罹ることが知られています。
体力を無視した治療?
さて、件(くだん)
の患者さんは高齢の白人男性で、数年前にヴァレー・フィーヴァーに左肺をやられ、それも程度がひどかったので左肺葉を切除する手術を受けました。術後、体
の左側全体が痛くて眠れないと言って、私の所に来ました。手術で切られた筋肉が痛みの原因のようでした。1 月(ひとつき)
の治療で痛みはほぼ治まり、それからは1 か月に1 度くらいの治療、さらに数か月に1
度の治療ペースになり、息苦しさも、私が勧めた漢方の免疫力を高める玉屏風散が効いてとても健康そうになってきました。
ところが、先週、奥さんから痰(たん)
が気管に詰まるので入院したという連絡がありました。その連絡があった次の日に、亡くなったという報せが入りました。パイプを気管に入れている最中に心臓
マヒが起きて亡くなったのだそうです。あの元気な笑顔を思い出すと、とても信じられない結果です。現代医学では東洋医学のように患者の体力を治療の前提に
することがあまりありません。従って、治療は間違っていないのに、患者の体力がついていけなかったというケースがよくあるようです。
唯一の予防法
ヴァレー・フィーヴァーの胞子の真ん中「風の谷」に住む私たちに可能な唯一の予防法は免疫力を維持することです。高齢になると自然に免疫力も落ちてきま
す。日々の食事で免疫力を高め、ストレスを避けて体内に入ったカビの胞子を食べる白血球を増やし、特に心配な場合は、足の三里へのお灸で免疫力を高めてお
くことがお勧めです。
|
|
|
(2006年7月16日号掲載)
|
|
|
|

|