San Diego Yu Yu
San Diego, CA
Temp: 57°F
Wind Chill: 57°F
Humidity: 88%
Show more details





パスワードを忘れました?
未登録ですか? 新規登録

kimu_top_new.jpg
 
dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


ご質問、ご連絡はこちらまで

       
koramu_560_new.jpg
 
その1: 母乳栄養 (Breast feeding)
       
母乳に対する認識と離乳食の考え方は最近大きく変わってきました。これには母乳や離乳食に関する研究が大きく寄与していますが、アメリカでも最近の母乳栄養の重要性の認識は、母乳栄養の普及に繋がってきています。
今回は、1 才未満の乳幼児の栄養に関係の深い母乳に焦点を当て、母乳栄養のメリットと問題点について解説します。


母乳栄養の普及

日本でもアメリカでも、母乳以外の育児用調製粉乳( 育児用ミルク) が存在していなかった昔は、当然のごとく母乳の授乳率は非常に高かったのです。ところが、アメリカでは第二次世界大戦後、多くの女性が家の外で働くように なったり、育児用調製粉乳( 育児用ミルク) の発達により、母乳の授乳率は極端に少なくなりました。

1970 年代になって、母乳栄養の大切さが医療関係者や一般人に見直されるに従って、母乳を始める母親の数は、1971 年には24.7%に過ぎなかったものが、1984 年には59.7%までに上昇したのです。途中、1980 年代に母乳栄養の普及率は低下するものの、2001 年には69.5%にまで増加しました。但し、以上の数値は母乳を始める母親の率で、赤ちゃんが生後6 か月になるまで母乳を続ける母親は未だに32.5%にすぎません。

アメリカ小児科学会やWHO ( 世界保健機構)では、母乳栄養の重要性を説き、医学的な必要性や乳児側・母親側の問題がない限り、乳児が生後6 か月になるまで母乳のみの栄養を推奨しています。



母乳栄養の重要性

母乳には乳児に必要な栄養素がバランスよく含まれているだけでなく、乳児に吸収されやすい形で含まれているのです。そして、母乳は乳児の栄養を満たすだけでなく、胃腸機能、免疫防御、神経系の発達、精神的な健康にも良い働きをしています。

母乳に含まれているカルシウムなどのミネラルの量は、育児用ミルクに比べて少ないのですが、乳児の体内で利用される率が高いため、乳児が生後6 か月を過ぎるまでは鉄分などを除いてあまり問題にはなりません。


母乳の効果 

母乳は、含まれているラクトフェリンやグルタミンなどが胃腸系の発達・機能・成長を助けます。また、免疫グロブリンA、ラクトフェリン、リゾチーム、成長 因子などは、赤ちゃんの免疫防御に関わっています。その結果、母乳栄養で育てられた赤ちゃんは、胃腸病、呼吸器系疾患、感染症( 特に中耳炎) などの病気にかかりにくくなります。

長期的に母乳を授乳することによって、赤ちゃんの認知能力や運動機能が発達することが認められています。授乳は赤ちゃんだけでなく母親にも利益があり、出 産後の体重減少や子宮が元の大きさに戻るのを助けます。また、授乳中は生理も起こりにくいので、出産後に短期の間に再び妊娠することを避けられます。



母乳のみ授乳

前述したように、母乳の重要性は世界的に証明され、WHO では生後6 か月間は母乳のみの授乳を推奨しています。入浴後に白湯やお茶、あるいはジュースを薄めてあげることを推奨している日本の育児書もありますが、その必要性 は特にありません。母乳以外のものをあげることによって、母乳を飲む量が少なくなる可能性もあるので、生後6 か月までは母乳のみを与えます。数年前に出されたWHO の勧告に沿って、日本の厚労省も新しい母乳栄養の指針を来年に発表するとの報道もありました。


母乳に不足するもの

母乳に含まれている鉄分は、生後6 か月を過ぎると赤ちゃんの需要を満たさなくなるので、何らかの形で鉄分の補給が必要になってきます。生後6か月を過ぎると離乳食を始めるので、離乳食には鉄分の含まれたものが望まれます。

母乳に含まれているビタミンK の量は少なく、多くの国では、生後すぐにビタミンK の筋肉注射をすることによってビタミンK 不足による弊害を防いでいます。また、母乳にはビタミンD の含有量も少ないので、適当な日光照射ができない乳児では、ビタミンD の補給が勧められています。乳幼児の日光照射は将来の皮膚癌( がん) の発生を高めるため、あまり推奨されてはいないので、ビタミンD を与える選択肢が重要になってきます。現在、アメリカ小児科学会の勧めでは、生後2 か月以内からビタミンD を1 日当たり200 ユニット(200 IU/d)乳児に与えることになっています。


生理的黄疸と母乳性黄疸

生理的黄疸( おうだん) は大半の新生児に起こりますが、特に、母乳栄養児はこの生理的黄疸の期間が長くなります。特に、生後1 週間以内に授乳量が少ない乳児にはこの黄疸は程度も悪化します( 母乳性黄疸)。母乳の授乳を止める必要はありませんが、母乳の出方が十分でないと、一時的に母乳に加えて調製人工乳を与えることになります。極端な黄疸に なると、一時的に母乳授乳を1 ~ 2日止め、光線療法などの治療を行います。


母乳栄養とアトピー性皮膚炎

「乳幼児では、育児用ミルクで育った乳幼児より、母乳栄養で育った乳幼児の方がアトピー性皮膚炎の発症頻度が高い」と解説する日本の育児関係のウェブサイ トもありますが、実際の研究では結果がまちまちです。母乳栄養は食べ物アレルギーに防御的に働くので、離乳食が開始すると重要になります。また、アトピー 性皮膚炎は食物制限している母親の母乳栄養児には少ないとか、アトピー性素因のある乳幼児の間でアトピー性疾患( アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性胃腸炎) になる確率は、母乳栄養児には少ないとの報告もあります。


母乳授乳中の乳房のケア

母乳授乳中の乳房の問題としては、乳房・乳頭の痛み、乳腺の詰まり、乳腺炎などがあります。乳頭の痛みが授乳開始から1 週間過ぎても改善しない時は、乳房に対する赤ちゃんの位置に問題があるかもしれないので、先ず、赤ちゃんの抱く姿勢を変えてみます。

乳房の一部が痛みを起こすと、多くの場合は乳菅の詰まりなので、優しくマッサージをしたり、授乳を頻回に行ったり、蒸したタオルなどで暖めるだけで治るこ とがあります。乳房の皮膚が赤くなってきたり、固くなって痛みが増すと、乳腺炎かもしれないので医師を受診して下さい。乳腺炎は抗生物質で治療しますが、 授乳は継続できます。 日本では、乳腺炎の場合、乳房を冷やすと指導されていることが多いようですが、これは一時的に痛みを抑える効果はあるかもしれませ んが、基本的な原因である乳栓の乳管への詰まりを改善するわけではありません。それを改善し、痛みなどの症状を抑えるためには患部を温めるのが一般的で す。この方法はWHO やアメリカ小児学会も推奨しています。

授乳期間は乳頭をなるべく乾かすことが重要です。普通、乳頭に軟膏やローションを塗る必要はありません。石鹸やアルコールの使用は避けて下さい。乳輪( 乳頭の周り) にあるモントゴメリー腺からの分泌液が、妊娠・授乳時期を通して、乳輪、乳頭に適度の潤滑を与えてくれるからです。乳頭がひりひりしてきたらなるべく乾燥 させます。乳房表面での乾燥した母乳も乳頭のひりひり感を改善すると言われています。乳頭の痛みが増す時は、乳頭の上に被せる乳頭カバー(breast shield,nipple shield, breast shell) を短期間使用するのもよいかもしれません。


母乳の中の薬


母親が服用する薬が母乳に出てくることがあります。母乳に出てきても赤ちゃんにほとんど影響のないものもありますが、重要な健康問題になる薬もあります。 一般的に危険性のある薬は化学療法で使用される薬、放射性薬物、違法なドラッグ、リチウム、エルゴタミン( 偏頭痛などで使用される)、抗けいれん薬、サルファ剤、キノロン系抗生物質、サリチル酸など。抗ヒスタミン剤は授乳量を下げる作用をすることがあります。 個々の薬で、授乳中は禁止されているかどうか確かでない時は医師に確認をして下さい。ハーブや漢方薬、あるいは民間療法薬に関しては十分なデーターがない ケースが多く、授乳中の安全性が分からないこともあります。
 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2006年12月1日号掲載)      




feed0 コメント

コメントを書く

busy

 
< 前へ   次へ >



Advanced Search