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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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ノロウィルス (Norovirus)
       
今回は、この冬日本で大流行し、過去最高を記録したノロウィルスによる感染性胃腸炎を取り上げます。新聞報道などによると、この冬の大流行は、これまで多かった生カキなどによる食中毒というよりも、人から人への感染が中心になっているとのことです。


ノロウィルスとは?

ノロウィルスは感染性胃腸炎を起こすウィルスグループのことですが、名前の由来は、1968 年にオハイオ州ノーウォークで集団発生を起こしたノーウォーク・ウィルスから来ています。これまで、小型球形ウィルスとか、ノーウォーク様ウィルスなどとも呼ばれていましたが、2002 年の国際ウィルス学会でノロウィルスに統一命名されました。

ノロウィルスの胃腸炎はStomach flu( お腹の風邪、お腹のインフルエンザ) などと誤解されることがありましたが、インフルエンザとは何の関係もありません。ノロウィルスによる胃腸炎は、他にウィルス性胃腸炎、急性胃腸炎、非細菌性胃腸炎、Food poisoning ( 食あたり) などと診断されることもあります。



感染経路


ノロウィルスの感染経路は3 通りあります。先ずは、ノロウィルスに汚染された食物や飲料水の摂取による感染。2 番目は、ノロウィルスに汚染した衣服、物品、何かの表面を手指で触った後で口に触れたり、手指を口の中に入れることによる感染。3 番目は、感染している人からの直接感染。例えば、感染者の世話をしたり、感染者と食物、食器などを共有することからの感染。日本での報告では、これらの感 染経路以外にも飛沫( ひまつ)による感染も示唆されています。例えば、嘔吐物が乾燥して空中に舞い上がり、空調などで広がるといった具合で、ホテルで集団発生した例もありま す。

ノロウィルスは感染した人の便や嘔吐物に多く含まれています。それが、上述したような経路で広がっていくのです。日本では、生カキによる発症がよく知られていますが、火の通っていないカキやアサリなどの貝類も原因になります。ノロウィルスに感染した調理従事者や配膳 者の手指から食材が汚染することがあり、貝類とはまったく関係のない食物( パン、サラダなど) による集団食中毒も報告されています。

このウィルスは非常に感染力が強く、幼少の子供や高齢者が集団生活をする施設、保育所や老人ホームでは極めて早く感染が広がり集団発生する可能性があるので、それらの施設での予防措置は極めて重要になってきます。


症 状
 

ノロウィルスによる感染性胃腸炎の症状は、感染後24 ~ 48 時間くらいで始まりますが、早いと12 時間程度で発病します。症状は下痢と嘔吐が主なものですが、腹痛、微熱、寒気、頭痛、筋肉痛、疲労感などの症状を訴える人もいます。小児では嘔吐が多く、大人では下痢が多い のが特徴です。これらの症状は重症化したり、後遺症を起こすことはまれですが、何度も嘔吐して気分が極めて悪くなることがあります。

下痢の回数は、通常、1 日数回から10数回程度。下痢症状は普通1 ~ 2 日過ぎると改善していきますが、中には数日以上続く人もいます。元々健康な人は重症化することはありませんが、乳幼児や高齢者は脱水や電解質異常を起こし やすく、また、高齢者は嘔吐物の誤嚥( ごえん)などによって誤嚥性肺炎を起こす可能性があります。ノロウィルスが感染する期間は、通常、症状出現から回復後3 日間までですが、中には回復後2 週間以上も感染性のある人もいるので、回復した後も手洗いや感染の予防が必要になってきます。



ノロウィルスに感染しやすい人


誰でもこのウィルスにかかる可能性がありますが、特に乳幼児、高齢者、免疫の低下した人はかかりやすく、脱水などの症状も重症化する傾向があります。こう したリスクの高い人の施設では、集団発生が起こりやすくなります。31 もの違う遺伝型が存在するので、感染しても、免疫を獲得して二度と感染しないということはありません。従って、一生の間に何度もノロウィルスに感染するこ とがあるのです。また、遺伝型が違うので、特定の人がかかりやすくなったり、症状が重症化しやすくなったりします。


ノロウィルス感染症の診断と治療


ノロウィルスの胃腸炎は軽症の病気なので、普通は便の検査をすることはありません。重症の人や集団発生の場合は、便や嘔吐物からPCR 法などの検査をすることがあります。

ノロウィルスの特効薬やワクチンは現在のところ存在しません。また、抗生物質は何の効果もないばかりか、下痢をひどくする可能性もあるので使用しません。 幸いなことに、健康な人は症状が軽いので、十分な水分を取って脱水の予防を心掛けます。水分はなるべくスポーツドリンク(Gatorade、ポカリス ウェットなど) のような電解質( 特にナトリウム)・糖分の含まれた飲み物で補給して下さい。但し、スポーツドリンクは下痢や嘔吐で失われたすべての電解質を補給するわけでもないので、栄 養の代わりにはなりません。

乳児は、基本的に母乳や人工調製乳を飲める間は継続し、飲めなくなるとPedialyte のような電解質・糖分の入った飲み物を与えます。普通の水やお茶だけを与えると、血液中の塩分( ナトリウム)が薄まって低ナトリウム血症という状態になり、重症の場合はけいれんを起こしたり、死に至ることもあるので注意が必要です。また、糖分の多い ジュースを飲むと下痢がひどくなる可能性があるので、ジュースの与え過ぎにも注意が必要です。大人や高齢者も基本的には小児と同じですが、食事ができる間 は食事を継続して下さい。


予 防


手洗いは予防の中でも特に重要です。トイレに行ったりオムツを替えた後、食事をしたり料理をする前、感染者の世話をした後などには、必ず流水と石鹸で手洗 いをして下さい。新鮮野菜や果物はよく洗って下さい。汚染された表面はよく消毒し、汚染された衣服や寝具は洗剤とお湯で洗濯します。感染した人の便や吐物 は速やかにトイレに流して下さい。また、ノロウィルスには塩素系消毒剤( 次亜塩素酸ナトリウム、漂白剤をベースにした家庭用クレンザー) を利用して下さい。細菌感染によく用いられる塩化ベンザルコニウム、アルコール消毒、逆性石鹸はあまり効果がありません。
 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2007年2月1日号掲載)      


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