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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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子供の風邪薬は安全か?
       

日本でもアメリカでも、子供が風邪を引くと、親は市販の風邪薬を購入して子供に与えます。しかし、そうしたごく普通に子供に与える風邪薬が、効果があり、子供に対して安全なのかどうか、長い間あまり研究されてきませんでした。市販の風邪薬の子供に対する安全性が、最近になってアメリカでは大きな議論の対象になってきました。これには、市販の風邪薬による子供の死亡数が1969年以来123人に上ってきた背景があります。123人の死は、鼻づまりの薬と抗ヒスタミン剤の使用によって起ったものですが、規定量以上の薬を服用した可能性も示唆されています。これまで積み重ねられてきた調査・研究の結果を基にして、今年10月18・19日の両日、米国食品薬品管理局 (FDA) の市販薬諮問委員会は子供の風邪薬の安全について会合を開き、その結果を公表したのです。


FDA諮問委員会の発表

ニューヨーク・タイムズによると、諮問委員会は、21対1の圧倒的多数の賛成で、2才以下の子供に対する風邪薬の使用禁止を決定しました。2才以上6才以下の子供に対する風邪薬の使用は、13対9の比較的接近した賛成で禁止が決まりました。6才以上12才以下の子供に対しては禁止は決っていません。こうした諮問委員会の決定がFDAの方策になっていくかどうかは現時点ではわかりませんが、2才以下の子供の風邪薬はすでに大手の製薬会社が市場から回収していますので、事実上、禁止の状態になっています。

2才から6才以下の子供に対する風邪薬の使用は、今後、FDAと製薬会社の駆け引きによって決まっていくのではないかと思われますが、諮問委員会の「まれに重症の副作用を起こすことが報告されている一方で、市販の風邪薬が子供の風邪症状を改善するという証拠はない」という発表は、6才以下の子供の風邪薬も恐らく、禁止または、警告付きの使用という方向に向かうのではないかと思われます。


効果のはっきりしない風邪薬

現在、アメリカで市販されている子供用の風邪薬は1970年代に承認・販売されましたが、承認時、これらの風邪薬が子供に効果があるかどうかは実証されていませんでした。ただ、大人に対する効果をそのまま子供にも適応し、効果があるのではという推論に基づいて承認されたのです。FDAの諮問委員会を始め、米国小児科学会などの学会も、子供の風邪薬が風邪の症状を改善するものでもなければ、風邪を治す薬でもないことを訴えています。「子供の風邪には、昔ながらのチキンスープがいいのだ」とコメントを言う専門医もいるくらいです。「子供が風邪を引いた時に、何も使うのがないのも困る」と、情緒的なコメントをする諮問委員会の委員もいたようですが、風邪薬は子供のためではなくて、ひょっとしたら医師と親の精神安定剤の代わりに使われているのではないかと思われるくらいです。いずれにせよ、風邪はウィルスで起こるもので、自然に治癒します。風邪の薬を服用したからといって、風邪の期間が短縮したり、症状が改善するとは限りません。場合によっては、風邪症状が悪化することもあるのです。

 

FDAの推奨する風邪薬の与え方

今年8月15日、FDAは一般向けに風邪薬の与え方のアドバイスを発表しました。子供に風邪薬を通常よりも大目に与えたり、回数多く与えたり、複数の風邪薬を与えて共通の薬が含まれている場合は、身体に害を与えることがあると警告しています。それを避けるには、風邪薬の箱に書かれている用法を正しく守ることで、もし自信のない時は、医療機関にアドバイスを求めることも推奨しています。

以下が、8月に発表されたFDAの推奨する子供への風邪薬の使い方ですが、今回の諮問委員会の発表を含めて、少し改正しています。今後、FDAの方策が変わる可能性がありますので、注意して下さい。


  1. 2才以下の子供には、風邪薬や咳止めは与えない。
  2. 2才以上6才以下の子供にも原則として風邪薬は与えない。


    以下は6才以上の子供に関して:

  1. 大人用の薬を子供には与えない。
  2. 風邪薬や咳止めはいろいろな濃度のものがあり、正しい薬かどうか自信のない時は医師・看護師などに聞く。
  3. もし、ある風邪薬をすでに使用している場合、他の風邪薬を使っていいかどうかは医師・看護師に聞く。
  4. 薬の箱に書かれている注意書きを読んで、また、含まれている薬品(active ingredients) に注意をする。
  5. 薬の箱に書かれている以上の量の薬を与えない。
  6. 薬を与えすぎると、重症の副作用につながることがある。
  7. シロップなど液体の薬は、その薬に付いてきたスポイトやカップを使用する。食事に使うスプーンは使用しない。
  8. もし、スポイトや計測カップが一緒に付いていない時は、薬局で購入する。そして正しい容量を与える。
  9. もし、書かれている薬の用法が分からない場合や、付属の計測器の使い方が分からない場合は、その薬を使用しない。
  10. せき止めや、風邪薬は風邪そのものを治すものではなくて、単に症状を抑えるだけのもので、その効果もはっきりしていない。子供はたいていの場合、時間の経過と共に症状が改善することを理解する。
  11. もし、子供の容態が悪化したり、良くならないようであれば、風邪薬の使用を止めて医療機関を受診する。

   

風邪薬を使わない風邪の治療と予防

鼻づまりには、生食水を鼻孔にたらし、鼻水はゴム製の吸引ボールで吸入します。子供の部屋に超音波加湿器を使用して、鼻や咳の症状を緩和します。発熱にはタイラノールやイブプロフェンを使用 (熱ざましは、今回の風邪薬の中には含まれていません)。風邪の予防には、家庭の全員の手洗いをよく行ない、子供を風邪を引いた人に近づけないようにします。また、子供の近くでたばこを吸わないようにして下さい。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2007年11月1日号掲載)      
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