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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


ご質問、ご連絡はこちらまで

       
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乳がん (Breast cancer)
       
乳がんはアメリカ人女性に多い悪性腫瘍ですが、日本人女性でも1996年に罹患率第1位の悪性腫瘍になりました。日本人女性の20人に1人が乳がんになるとも言われています。毎年4万人以上の日本人女性が乳がんになり、1万人以上が乳がんで死亡しています。乳がんは早期発見すればほとんど治癒できますので、早期発見、早期治療が望まれます。


乳がん

乳房は3つの組織から成り立っています。腺房、乳管それに結合組織です。腺房が集まって構成された小葉で作られた乳汁は乳管を通り、乳頭へ達します。その少葉内や乳管に悪性腫瘍ができると乳がんと呼ばれます。そして、乳がんのほとんど (9割近く) が乳菅がんです。

乳がんは女性に最も多いがんですが、男性も稀(まれ)ですが乳がんになります。但し、その確率は女性の場合の100分の1以下です。

乳房にしこりができると乳がんと考えるかも知れませんが、実際には、大半のしこりはがんではなく、線維腺種や嚢胞 (のうほう) などの良性の腫瘍なのです。


乳がんのリスク
 
一般的に乳がんのリストとして報告されているもの。

  • 年齢:高齢(ただし、日本人は40歳代が好発年齢)
  • 家族歴:母親、姉妹、娘の誰かに乳がんの人がいる
  • 初経:初経が早い年齢で起こる
  • 肥満
  • 乳がんの遺伝子:BRCA1やBRCA2の遺伝上の異常があると、4〜8割の確率で一生の間に乳がんになる
  • 閉経:閉経が遅い
  • 妊娠歴:一度も出産したことがない
  • 母乳:与えたことがない
  • 放射線:乳房や胸部に放射線治療を受けたことがある
  • 出産:最初の出産が高齢
  • ホルモン剤:避妊ピルやホルモン療法。但し、乳がんのリスクはあっても非常に低い
  • 乳がん歴:片側の乳房に乳がんのあった人は、他の乳房に乳がんが起こるリスクが高い
  • 飲酒:1日に1杯以上(缶ビールは1本以上)
  • 運動:運動をしていない


乳がんの症状

乳がんの症状があるとすれば、乳房のしこり、腫れ、皮膚の変化、乳頭のくぼみなどですが、初期の乳がんはほとんど症状がありません。また、症状のない間に早期発見するのが理想です。


早期発見(乳がんスクリーニング)

乳がんの早期発見は、本人や医師の触診とマンモグラフィーで行いますが、特にマンモグラフィーによるスクリーニングが重要です。マンモグラフィーによる乳がんの発見率はアメリカでは8割以上ですが、日本では8割以下と報告されています。これは、日本人の乳房組織が密なため (好発年齢が低いため?)、異常が発見されにくいのではないかと考えられています。

マンモグラフィーはX腺によって乳房内のごく小さな乳がんを発見するための検査ですが、乳がんによる死亡率を3割程度下げます。乳房の触診以外に、マンモグラフィーは40歳を過ぎたら1,2年おきに受けるようにしましょう。

また、40歳以下の人、あるいは乳房組織の密度が高い人(日本人に多い)は乳房超音波検査も薦められています。

マンモグラフィーにはスクリーニング用と診断用があり、スクリーニング用で異常があると、異常の部分をフォーカスした診断用マンモグラフィーの適応になります。


乳がんの診断

乳がんの診断は、先ず診断用マンモグラフィーを撮るところから始めます。そして超音波検査をします。それでも良性の腫瘍か乳がんかの区別が難しい場合、MRI (核磁器共鳴画像)やPETスキャンという検査をすることもありますが、費用の高い検査なので用途は限られています。

MRIはマンモグラムや超音波で診断がつかない時や、触診上存在するしこりがマンモグラムや超音波で確認できない時、乳がんのリスクが非常に高い女性などに利用されます。

PETというのは乳がんの診断というよりも、乳がんがリンパ節に転移しているか、遠隔転移があるかなどの評価に使用されます。


病理検査

画像診断などで乳がんの可能性がはっきりしない場合や、可能性が高い場合は、病理検査をします。細い針をしこりに刺して細胞を吸い取って調べる穿刺 (せんし) 吸引細胞診や、太い針を入れてしこりの組織を取ってくる針生検。あるいはしこりの一部または全部を切除してくる外科的生検があります。採取した組織は病理医によって診断されます。


特殊検査

しこりが乳がんの場合、その後の治療に役立つようなホルモン受容体検査とHER2検査が行なわれます。

ホルモン受容体検査は、がん細胞にエストロゲンやプロゲステロンのホルモン受容体があるかどうかを調べます。

HER2検査は、HER2タンパクという蛋(たん)白質か HER2/neu という遺伝子を過剰に持っているかどうかを調べます。この蛋白質や遺伝子を過剰に持っていると治療後に再発する可能性が高くなります。


乳がんの種類

乳管がん(Ductal carcinoma)は最も一般的な乳がん(約9割)で、乳管から発生し、小葉がん(Lobular carcinoma)は乳汁を作る小葉から発生します。それらの乳がんは非浸潤性と浸潤性に区別され、がん細胞が乳管や小葉に留まっているか、周りの組織に浸潤しているかによって分けられます。

こうした乳がん以外にもパジェット病、炎症性乳がんがあります。


乳がんの病期 (ステージ) 分類

組織検査で乳がんが確かにあると診断されると、次に行われるのは乳がんの病期(ステージ)分類です。すなわち、乳がんが発生した組織に留まっているステージ0から遠隔転移のあるステージ4までを、がんの大きさやリンパ節への転移などを考慮しながら分類します。この分類によって治療法が決まるので大事です。


乳がんの治療

アメリカでは乳がんは外科医(Surgeon)、腫瘍学専門医(Oncologist)、放射線医(Radiologist)が協力して治療にあたります。乳房の全摘術をする人は形成外科医(Plastic surgeon)が乳房再建術を行います。

セカンドオピニオンが必要な人は、自分のプライマリケア医に言って、他の外科医を紹介してもらいましょう。アメリカではセカンドオピニオンは広く行われているので、躊躇する必要はありません。


主な治療法

乳がんの治療は病期に応じて、外科的療法、放射線療法、薬物療法の組み合わせで行なわれます(集学的治療)。外科的療法や放射線療法は局所療法、薬物療法は全身療法としても区別されます。

外科的療法には、腫瘍核出術や乳房部分切除などの乳房温存手術、乳房や胸の筋肉の一部も取るいくつかの乳房切除術があります。通常は、腋下リンパ節郭清という手術も同時に行なわれます。

放射線照射法は外科的手術の後に行れることが多く、特に乳房温存手術を行った後は手術後に放射線療法が行れます。これには体外から照射する外照射と体内に埋め込んで行う内照射があります。

薬物療法には、いくつかの抗がん剤を組み合わせて行なう化学療法、ホルモン受容体を持った乳がんに対して行なわれるホルモン療法があります。エストロゲンをブロックするタモキシフェン、エストラディオールをブロックするアロマターゼ阻害薬を利用したりします。また、エストロゲンを分泌する卵巣を除去する手術的療法もあります。

最も新しい治療法として、分子標的療法というのがあります。これは、がんと戦う免疫システムを促進する治療法ですで、Herceptin (trastuzumab)というモノクローナル抗体を与えます。これは、HER2タンパクかHER2/neu遺伝子の多い乳がんの患者さんが対象になります。


乳がんの予防

乳がんの予防として一般的に行えることは、十分な野菜と果物を食べる、定期的に運動をする、適正体重を保つ、アルコールは1日に1杯まで (缶ビールであれば1本以下)、喫煙をしない。喫煙者は禁煙をするということです。


医師の受診が必要な場合

  • しこりが触れる
  • しこりが大きくなったり形が変化する
  • 乳房や乳頭にくぼみ、へこみやひきつれがある
  • 乳房の形や大きさに変化がある
  • 乳房や乳頭に痛みがある
  • 乳房の皮膚が赤くなったり腫れたり変化がある
  • 乳頭が非常に痛くなったり内側にくぼんでいる
  • 出産もしていないのに乳頭から分泌物や血液が出てくる
 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年9月1日号掲載)
 
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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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狭心症(Angina Pectoris)
       

狭心症は、西側先進国に多い病気で、食生活、ライフスタイルとの関係が強く、生活習慣病の一つに定義されています。言い換えれば、食生活やライフスタイルを改善すると、ある程度予防が可能な病気ということになります。

日本でも食生活、ライフスタイルの欧米化によって狭心症の罹患者数が増えてきましたが、アメリカに長期滞在すると、狭心症のリスクがさらに高くなる可能性がありますので、読者の皆さんもご注意ください。

 

狭心症とは

狭心症は、虚血性心疾患の一つで、心臓を構成する筋肉 (心筋) に十分な血液 (酸素) が供給できなくなった結果として起こる病気です。

原因は、心筋に血液を供給する冠動脈の狭窄(きょうさく)か、冠動脈のれん縮(けいれん)ですが、狭窄を起こす疾患としては狭心症以外に心臓弁膜症、肥大性心筋症、解離性大動脈瘤などが、また、れん縮を起こす原因としては後で説明する異型狭心症以外にコカインやニコチンなの薬物使用があります。但し、狭心症はほとんどの場合、動脈硬化により冠動脈の内腔がコレステロールなどの粥(じゅく)状物で狭くなって起こります。

 

狭心症の症状

狭心症の主症状である胸痛は、胸部中央部の押さえつけられるような感じ(圧迫感)、詰まった感じ、締めつけられる感じ、焼けるような感じ、あるいは不快感として表現されます。こうした痛みや不快感は胸部だけでなく、首、顎、肩、腕(特に左側内側)、背部などにも感じられることがあります。時には、みぞおち辺りの痛みで胃炎・胃潰瘍と誤解されることもあります。胸痛は1〜5分程度持続し、休息やニトログリセリンで改善します。

胸痛以外の症状としては、しびれ、冷汗、嘔気、呼吸苦などです。

胸痛のトリガーは、激しい運動、精神的ストレス、食べ過ぎ、極端な気温(暑すぎたり寒すぎたり)、喫煙や飲酒などです。運動は階段の昇降、小走り、歩行程度でも狭心症を誘発することがあります。但し、不安定狭心症やれん縮タイプの狭心症は静かに休んでいる時でも起こります。

 

安定狭心症と不安定狭心症

安定狭心症は、胸痛が労作(ろうさ)時(運動時)に起こる狭心症のことで、症状発生時がある程度予測がつきます。安静時には胸痛は起こらないか、ほとんど無視できる程度です。

不安定狭心症はいつ胸痛が起こるか予測がつきません。安静時、または軽い労作時に起こる狭心症、初めて経験する激しい胸痛を伴う狭心症、以前からある狭心症の頻度が増加、持続時間が長くなったり痛みが激しくなった場合に不安定狭心症と呼ばれます。

安定狭心症の場合、狭窄部の冠動脈はプラークと呼ばれる線維性のキャップで覆われ、比較的安定しています。それとは対照的に、不安定狭心症の場合はそのプラークが破れて血栓ができやすい状態で、冠動脈内腔をさらに狭くする危険性があり、心筋梗塞に発展する可能性が高くなります。

不安定狭心症を疑った場合は、心筋梗塞、重症不整脈や心停止を起こす可能性が高くなるので救急室をすぐに受診します。

 

狭心症の診断

狭心症の診断は、まず胸痛の性情、部位、程度、頻度、随伴症状、誘発因子、リスク評価などの問診と診察によって始めます。安静時の心電図(ECG)、胸部レントゲン、血液検査などの基礎的な検査を行います。心電図は、それを取っている最中に胸痛がない限り、安静心電図だけでは狭心症の診断はできません。

狭心症を診断するには、負荷心電図を行います。通常は運動負荷心電図であるトレッドミル・テストを行いますが、診断の困難な人は、放射性同位元素を利用し、安静時と運動時で行う心筋シンチグラムで診断します。

運動負荷試験ができない人には、薬物を利用した負荷心電図や画像診断によって評価します。
 心臓カテーテル検査(心カテ)は、以上のような非侵襲性検査で診断がつかなかった人や、狭心症のある人で今後の治療法を選択する目的で行われます。冠動脈の狭窄部の数、部位、程度により、経皮的冠動脈形成術、CABGというバイパス手術、あるいは薬物でのみ――といった治療法が決められます。

 

薬物療法

症状の改善のために最も使われているのはニトログリセリンです。ニトログリセリンの作用は2つで、一つは静脈を弛緩させることによって心臓に帰る血液量を減少させ、心臓の仕事量を減らします。

もう一つは、冠動脈を拡張することによって心筋への血流量を増やします。すなわち、心臓の仕事量を減少させる =酸素必要量を減らすか、冠動脈の狭窄部を通過する血液量を増やす=酸素供給量を増やす —— のどちらかの作用によって狭心症の症状は改善するのです。

アスピリンは胸痛などの症状を直接改善しませんが、血栓をできなくするので、特に不安定狭心症の治療には大切です。

β遮断薬やカルシウム拮抗薬は心臓の負担および酸素必要量を軽減します。β遮断薬は症状の軽減だけではなく寿命にも貢献します。カルシウム拮抗薬や亜硝酸薬は血管を拡張します。ACE阻害薬も血管を拡張し、症状と病後の状態改善を促します。高脂血症に使われるスタチン系の薬は粥(しゅく)状動脈硬化のプラークを安定化させるのではないかと考えられています。Ranolazine という新しい狭心症の薬も出ています。

 

侵襲的な治療

冠動脈の狭窄を物理的に広げる PTCA (経皮的冠動脈形成術)は、カテーテルを大腿動脈などから冠動脈に挿入し、カテーテルの先端にあるバルーンを膨らませて狭窄部を広げます。狭窄部を広げた後、その部位が再度狭窄しないようにステントという金属性の網状筒を留置します。

レーザー冠動脈形成術では、レーザーが先端に付いているカテーテルを冠動脈に挿入して狭窄部を広げます。アテローム切除術は刃が付いたカテーテルで狭窄部にあるアテロームを切除するのですが、これらの処置の後にもステントを留置します。

冠動脈のバイパス手術は、狭窄の進んだ冠動脈の近くにバイパスを作って、血路を変える手術です。

こうした侵襲性のある治療を選択する時は、前述した心カテという冠動脈造影を行って狭窄部を評価することが必要です。

成人 stem-cell を使って、人工的に新しい冠動脈バイパスを作る治療も試みられています。

異型狭心症はれん縮によって起こる狭心症で、カルシウム拮抗薬が著効なので、亜硝酸薬と組み合わせて使用されます。冠動脈の狭窄がある場合は、通常の狭心症と同じく、侵襲性のある治療の適応になります。

 

狭心症のリスク・マネジメントと予防

狭心症のリスクになるものは、喫煙、糖尿病、高脂血症、高血圧、あまり動かないライフスタイル、若年性虚血性心疾患の家族歴、肥満ですが、食生活とライフスタイル改善によって、こうした狭心症のリスクを下げることができます。 

運動は、長期の治療と予防に効果的で、ゆっくり時間をかけて行うようにします。短時間集中型の激しい運動は逆効果です。

食事は、全体のカロリーを抑えたバランスの良いメニューで、動物性脂肪、コレステロールのあまり含まれていない食品を選びます。体重オーバーの人は時間をかけて適正体重に戻します。

すでに糖尿病、高脂血症、高血圧のある人は、医師の指導に従って、その病気のコントロールを十分に行います。喫煙している人は禁煙が最も効果のある予防法になります。

すでに狭心症のある人は薬物による予防が必要なので、主治医や循環器専門医の指示に従った薬を服用してください。

 

医療機関への受診が必要な場合

狭心症を疑ったら、まず自分の主治医に相談してください。不安定狭心症の可能性が高い場合は救急病院に行くことになりますが、すぐに連絡が取れるようであれば主治医に相談をし、そうでなければ救急病院に直行してください。

激しい胸痛が20〜30分以上続く場合は、心筋梗塞、解離性大動脈瘤など、生命に関係のある重症疾患の可能性がありますので、救急車を要請してください。

 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年10月1日号掲載)
 
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日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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脳卒中(Stroke)
       

アメリカでは毎年約80万人が脳卒中になり、15万人の方が亡くなっています。すなわち、40秒に1人が脳卒中になり、3〜4分に1人亡くなっていることになります。日本で脳卒中になる人は人口比ではアメリカよりも多く、年間13万人の方が亡くなっています (第3位の死因)。

 

脳卒中とは

脳卒中とは、脳内の血管あるいは脳に行く血管が詰まったり、破裂して起こる病気です。脳卒中によって脳の組織に血液が行かなくなると、脳の細胞は最終的には死んでしまいます。

脳卒中は、脳梗塞 (Ischemic Stroke) と脳出血 (Hemorrhagic Stroke)、それに一過性脳虚血発作 (TIA) の3つに分けられます。(日本では、この3つにくも膜下出血を加えて4つに分類することが多いようです)

一昔前までは、脳卒中というと日本では脳出血を意味していましたが、最近では脳梗塞の割合が多くなっています。小渕元総理が脳梗塞で亡くなられたのは記憶にまだ新しいところです。

 

脳梗塞

脳梗塞は虚血性の脳卒中で、脳血栓、脳塞栓、それにラクナ梗塞に分類されます。脳血栓は脳の血管が動脈硬化によって細くなり、そこに血栓が詰まることによって起こります。脳塞栓は脳の内部の動脈硬化とは関係なく、脳以外の組織から血栓が流れてきて、脳の血管を塞いでしまう病気です。心房細動など心臓の病気、心臓弁膜症、人工弁、内頚動脈という首の中の動脈や胸部大動脈の狭窄 (きょうさく) などが原因になります。他のまれな原因としては、血管炎、髄膜炎、梅毒、脳内外の解離性動脈瘤、血栓を形成しやすい血液病、経口避妊薬の使用などがあります。

ラクナ梗塞は脳の細い血管にできる梗塞です。ラクナ梗塞は本来、血栓による血管の閉塞ではなく、動脈内膜の変性により血管内腔が脂肪やコラーゲンに取って変わられることによって起こる梗塞です。高齢者で糖尿病やコントロールされていない高血圧のある人によく起こります。      

脳出血

脳出血は、脳の動脈の動脈硬化によって血管が脆 (もろ) くなったところへ、血圧の上昇によって血管が破裂するものと、動脈硬化以外に動脈瘤、動静脈奇形、もやもや病などの血管の異常で起こるものとがあります。くも膜下出血は脳を被う3層の膜 (脳軟膜、くも膜、脳硬膜) のうち、くも膜と脳軟膜の間の血管にできた動脈瘤が破裂して起こる出血です。

 

一過性脳虚血発作 (TIA)

一過性脳虚血発作は小さな血栓によって起こる一時的な脳の循環障害で、脳梗塞と同じように手や足に力が入らない、口が利けないというような症状が短時間だけ起こります。症状が1時間以上続くことはなく、大抵は5分以内で治まります。通常は意識喪失、意識障害を起こすことはありません。原因は脳梗塞の場合とほとんど同じで、ただ一過性というだけなのですが、脳梗塞の前兆なので、放置しておくと将来脳梗塞になる可能性が非常に高くなります。

 

脳卒中の症状

脳卒中の症状は、脳卒中のタイプと病巣の部位によって違ってきますが、一般的な症状としては、突然の片側の手足・顔の麻痺やしびれ、口が利けない、嚥下 (えんげ) 困難、物が二重に見えたり視野が狭くなるなど目の異常、歩行障害、体のバランスが取りにくい、箸を持ったり字が書けない、人格の変化、意識障害などです。ラクナ梗塞の場合は運動機能だけ低下したり、感覚だけ異常になったりしますが、言語障害はなく、多発性の場合は認知症になることがあります。

梗塞後2〜3日間に神経学的症状が悪化していくと脳の浮腫による可能性があります。脳卒中の症状が現れたら救急車を要請し、すぐに救急室に行って下さい。脳梗塞の場合、発症から3時間以内であれば血栓溶解剤の投与などで完治できる可能性があるからです。

 

脳卒中の診断

脳卒中を疑わせる症状があり、診察で麻痺などの神経学的異常があれば臨床的に脳卒中の診断は可能ですが、脳梗塞か脳出血かの区別はできないので、診断には頭部のCTやMRIが必要になります。CTは発症後24時間以上経たないと脳梗塞の部位が同定できないので、急性期の脳梗塞の診断はできません。脳出血やくも膜下出血はCTで発症直後にも診断はできます。CT上脳出血がなく、脳梗塞を疑わせる症状があれば間接的には脳梗塞と診断が可能なので、脳卒中を疑うとまず行う画像検査は頭部CTということになります。MRIは急性期でも脳梗塞や脳出血がが診断でき、CTよりも鮮明な画像でより細かい梗塞巣まで判断できます。

画像検査以外では、EEGなどの脳の電気的活動を調べる検査を行うこともあります。また、超音波を使った検査では、内頚動脈や脳低動脈の血流を調べることによって、脳梗塞のリスクとなった原因を発見できることがあります。

場合によっては、直接動脈にカテーテルという管を入れ、造影剤を流して脳の動脈の閉塞を調べる血管造影が行われます。最近では、CTやMRIを利用した非侵襲的な血管造影も行われています。

脳血栓の場合、血液検査でホモシステイン、血沈、梅毒などの血栓を起こす原因を調べることもあります。

 

脳卒中の治療

脳梗塞は発症後3時間以内であれば、血栓溶解剤を投与して、詰まった血栓を溶かすことが可能です。この治療法は発症後早ければ早い方がよく、3時間以上経過してしまうと、血栓を溶解できないばかりでなく、血栓溶解剤使用による重篤な副作用である脳内の出血を起こす可能性が高くなってきます。発症3時間以内に病院に到達する人は脳梗塞全体の5%にも満たないという報告もあるくらいなので、実際に血栓溶解剤の治療の対象になる人はそれほど多くはありません。救急室に到着しても、脳のCTを撮ったりする必要があるので、発症後1時間以内に救急室に到着していることが理想的です。

血栓溶解剤による治療法は脳梗塞にとって画期的な治療法ですが、その使用に当たっては多くの制限があり、誰にでも適応がある治療法ではありません。

最近の治療法としては、血栓の詰まった脳内の血管に動脈からカテーテルを入れ、詰まった箇所をバルーンで広げたり、直接血栓を取り除いたりする治療法も行われています。バルーンで血管を膨らませた後はステントというものを留置して、再び血管が狭くならないようにします。

脳出血に対する治療は脳梗塞ほどオプションがありませんが、できた血腫の除去や動脈瘤があれば、その頚部をクリッピングして動脈瘤の切除をします。動脈内にカテーテルを挿入し、「コイル」というものを入れて動脈瘤や動静脈瘤のある所をブロックする方法もあります。。

入院すると薬物治療で血圧のコントロールをしますが、脳梗塞の場合は収縮期が220、拡張期が120以上ない限り血圧を下げません。脳出血やくも膜出血の場合は脳梗塞の場合よりも血圧を下げます。解離性大動脈瘤、心筋梗塞、肺水腫、高血圧性脳症、網膜出血、急性腎不全などがあるとき、あるいは血栓溶解剤を使用する場合は早急に血圧を下げる必要があります。

脳卒中の予後は、高齢者、意識障害、言語障害、脳幹症状などがあると悪くなると言われています。

 

脳卒中のリスクと予防

脳卒中のリスクとしては、高齢、糖尿病、高血圧、高脂血症、もやもや病などの先天的脳血管病、喫煙、肥満、運動不足、家族歴、脳梗塞やTIAの既往、心臓病、心房細動、内頚動脈の病気、多量の飲酒などがあります。従って、脳卒中の予防はこうしたリスクを下げるのがメインになります。糖尿病や高血圧の徹底した管理、禁煙、適度な運動や適量の飲酒を行います。すでに脳梗塞やTIAの既往のある人は抗血栓療法 (ワ-ファリン) や抗血小板療法 (アスピリン) による更なる血栓の予防や、内頚動脈の内腔が極端に狭窄している人は狭窄部を外科的に切除する方法も行われています。

 
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神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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「アメリカ健康ノート」連載100回を迎えるにあたって
       

「アメリカ健康ノート」の連載を始めて、もう8年以上になります。皆さんの暖かいご支援のお陰で、今回連載100回を迎えられたことは非常に光栄だと思っています。このコラムでは、アメリカでの健康保険や病気についての解説、あるいは医療の日米比較を行っていますが、これからも益々内容を充実し、平易な解説ができるように努めていく所存です。

連載50回時に「『アメリカ健康ノート』のユニークなところは、アメリカ医療のスタンダード診療を日本人に分かりやすく日本語で解説している ―― ということです」と書きましたが、これが今でもこのコラムの基本的なスタンスです。このコラムは、日本に在住している日本人の方を対象にしているのではなく、あくまでもアメリカに在住する日本人の方が対象で、アメリカでの診療を理解し、健康の予防増進が出来るように願って書いています。

 

アメリカの医療

アメリカ医療の理解を困難にしている一因は、その健康保険の複雑さにあります。日本のように全国民が健康保険を持つことができる皆保険制度を採らないアメリカでは、健康保険のほとんどすべてが民間保険で、多くの人が雇用を通じて健康保険に入っています。 

メディケア (高齢者のための健康保険) やメディケイド (貧しい人を対象とした健康保険、カリフォルニア州ではメディキャルと呼ばれています) などを除いて、公的健康保険の少ないアメリカでは、雇用されているか、お金がある人でないと健康保険に入るのが困難になります。例えば、家族4人がPPOという保険に入ると、年間の掛け金が100万円近くもかかってしまうからです。

アメリカでは健康保険によって受診できる医療機関や医師、あるいは許可される検査内容や薬も制限されます。例えば、日本で頻繁に行われ、保険で容易にカバーされる胃内視鏡 (胃カメラ)、CT や MRIなどの諸検査は、アメリカでは保険の種類によっては事前許可 (preauthorization) が必要で、使用が制限されることがあります。

 

医療費の請求

Blue Cross, Blue Shield, Aetna, Cigna, Unicare といくつもの民間の保険会社がありますが、同じ保険会社が提供する健康保険でも、そのカバー率や個人負担は各保険により様々です。

Deductible (免責額) や Co-payment (追加負担料) の額、HMO や PPOの保険の種類、あるいは Out-of-network (契約外医療機関) か In-network (契約内医療機関) によっても個人負担は大きく違ってきます。また、受診する医療機関の In-network、Out-of-network に関わらず、そこで勤務する医師が同じ In-network、Out-of-network に入っているとは限らないのです。

アメリカの病院にはいろいろな専門医が出入りしています。そこの病院の職員ということではなくて、病院を検査や入院施設として利用している医師が多いのです。従って、それらの医師の医療費請求と病院からの医療費請求は異なります。例えば、アメリカの病院に入院して手術をすると、入院中の医療費の請求は入院した病院だけではなく、外科医、コンサルトされた専門医、放射線医、麻酔医から別々に送られてきます。

また、病院外で特殊検査を受けたり、クリニックで血液検査を受けると、その医療費請求は、医療機関とは別の検査会社から送られてくることがあります。

ご自分の持っている健康保険のカバー範囲、カバー率などを知ることはアメリカで医療を受けるにあたって非常に重要です。そうした情報は、ご自分や家族の入っている健康保険のパンフレットに詳しく説明されていますので、よく読んで理解に努めてください。

 

アメリカの救急医療

救急医療はアメリカと日本では大きな差があります。先日も東京で、出産間近で脳出血を起こした妊婦さんの受け入れが遅れて亡くなられた事件がありましたが、アメリカでは救急患者の受け入れ先がない ―― ということはまずありません。サンディエゴ市内では、UCSD, Scripps Memorial Hospital, Sharp Memorial Hospital といくつもの救急科のある病院が存在し、24時間患者さんを受け入れています。

アメリカの救急室は、救急医という救急医療の専門医や PA (医師アシスタント)などが何人も勤務し、大きな教育病院であればそれ以外に各科の研修医が病院に当直しています。そして、内科、外科、婦人科、小児科など全科の患者さんを診療の対象にしています。専門医受診が緊急に必要であったり、緊急手術が必要な時は、当直やオンコールの専門医、外科医が対応します。

緊急性の少ない病気で救急室を受診する時は、何時間も待たされることがあります。救急室なので、受診の順序は必ずしもチェックインをした順序とは限らないのです。トリア-ジナースという緊急度を判断するナースがいて、受診に来る患者さんの病気の緊急度を判断して、緊急度の高い人から診ていくからです。また、救急車で重症の人が運ばれてくると、救急医たちはそちらの患者さんを優先して診ます。

HMOなどの健康保険によっては、救急室を受診する場合、自分の主治医にまず連絡をして許可をもらってからでないと保険が規定程おりない場合があります。

また、自由に救急室を受診できる保険であっても、病気の程度が軽い場合は自己負担が多くなることがあります。

非常に頼りになるアメリカの救急室ですが、救急車の利用から診療まで、病気の程度によっては健康保険を持っていても高額になる可能性もあることを理解してください。例えば、私の娘が犬に噛まれ、近くの救急室で狂犬病に対する注射を打ってもらった時は請求額が1,400ドル弱、保険でカバーされて最終的な自己負担額が350ドル程度といった具合です。

 

コミュニケーションの問題

アメリカに在住して、日常生活や仕事上で英語でのコミュニケーションに不自由しない方でも、病気の話だと勝手が違うかもしれません。病気や医療に関しての理解がないと、医師とのコミュニケーションも難しくなります。そして、日本とアメリカの医療システムが違うということ以上に、医師と患者さんの関係も日本と大きく異なります。

例えば、アメリカでは医師が患者さんに治療の選択をさせることがあります。「手術をすれば80%、放射線療法だと60%、抗がん剤を使うと40%以下の確率で良くなりますが、どうしますか? 但し、手術の場合は2%の確率で手術中に死亡することがあります」などと、数字を示して患者さんに治療を選択させるのです。

こうした患者さんに治療を選択させるやり方は、病気が重症であればある程選択が困難になってきます。また、そういう治療の選択になかなか馴染めない人もいるかもしれません。

アメリカ人医師とのコミュニケーションの難しさは、英語という言語の違いと共に、こうした医師・患者関係の違いにも起因しています。

 

最後に

今後もこのコラムで、病気の最新の情報とアメリカ医療の説明を行っていきたいと思っています。「アメリカ健康ノート」の連載を150回、200回と続けていきますので、今後ともご支援の程を宜しくお願い致します。



 
この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2008年12月1日号掲載)
 
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dr_kim_new.png     金 一東

日本クリニック・サンディエゴ院長

日本クリニック医師。
神戸出身。岡山大学医学部卒業。同大学院を経て、横須賀米海軍病院、宇治徳洲会等を通じ日米プライマリケアを経験。その後渡米し、コロンビア大学公衆衛生大学院を経て、エール大学関連病院で、内科・小児科合併研修を終了。スクリップス・クリニックに勤務の後、現職に。内科・小児科両専門医。


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大人の予防接種
       

予防接種は子供のためのものと考えている人はいませんか?

予防接種が感染症予防に効果があるのは長い間認められてきました。それは子供だけでなく大人に対しても同じです。最近、子供に特有だと思われていた麻疹 (はしか) や百日咳が日本で大学生の間に流行 (はや) って、社会問題になったのはまだ記憶に新しいですが、それはアメリカでも同様で、約20年前に大学生の間で麻疹が流行し、多くの死者が出ました。その後、麻疹の予防接種が2回になりましたが、日本でも最近、麻疹は2回受けることになっています。

毎年受けるインフルエンザ、10年毎に受ける破傷風の予防接種を除いて、大人が受ける予防接種は1〜2回で済むのが大半です。特に、糖尿病、慢性腎不全、高血圧などの慢性疾患のある人は予防接種の対象になることが多いので、受診時に医師・看護師に聞いてみてください。

 

破傷風・ジフテリア・百日咳(Td or Tdap)

破傷風の予防接種は10年毎に受けることになっていますが、アメリカでは破傷風にジフテリアを加えた2種混合 (Td) を使用しています。最近では、これに百日咳を加えた Tdap という大人用の3種混合ができ、65歳までに1回受けることが推奨されています。Tdap は Td の代わりに接種することになっているので、65歳までに何回か受ける Td のうちの1回を Tdap に代えればいいのです。

子供の頃に3種混合 (破傷風、ジフテリア、百日咳) の予防接種を3回受けたことがはっきりしていない人は、Td を3回受ける必要があります。1回目と2回目は1か月、2回目と3回目は6〜12か月開けます。

 

ヒト乳頭腫ウィルス(HPV)

HPVは性行為でうつり、女性の子宮頚癌 (がん) や外陰部癌の原因になるウィルスです。HPVはいくつもの違うタイプがありますが、ワクチンはそのうち4つのタイプに効果があり、子宮頚癌を起こしやすい2タイプと性器いぼを起こしやすい2つのタイプをミックスしています。対象は27歳未満の女性で、3回接種し、1回目と2回目は2か月、2回目と3回目は4か月開けます。

子宮頚癌の7割、性器いぼの約9割は予防可能と信じられています。但し、予防接種をした後も定期的な子宮頚癌の検査 (Pap smear) は必要です。 

 

麻疹・おたふく・風疹(MMR)

MMRは、麻疹 (はしか)、おたふく、風疹の3種類の生ワクチンからなり、1957年以降に生まれた人は1回以上受けることが推奨されています。

アメリカでも日本でも、麻疹の予防接種導入前は毎年数百人から数千人の人が麻疹で亡くなっていましたが、麻疹の予防接種導入後、死亡者は激減しました。ただ、アメリカでは1989 年から1991年にかけて麻疹の患者数が増加し、そして何人かの死亡ケースも発生しました。

日本でも、10年以上前に予防接種が「義務」から「努力目標」に変わり、さらに MMR の副作用による MMR ワクチンの製造中止により、麻疹の予防接種率が下がり (5割程度まで低下)、最近の大学生間での麻疹の流行を起こす土壌になってしまいました

 

水疱瘡(Varicella)

水疱瘡 (みずぼうそう) の予防接種は、水疱瘡に免疫のない人は2回接種することになっています。1回目と2回目は最低4週間開けます。

 

インフルエンザ(Influenza)

インフルエンザは風邪に似たような症状を起こしますが、風邪よりも症状が重く、アメリカでは毎年3万人以上の人がインフルエンザ関連で死亡しているのではないかと推測されています。インフルエンザに罹患して死亡するのは、3歳以下の子供と高齢者、呼吸疾患などの慢性疾患を持っている人に多いので、インフルエンザの予防接種はそういうリスクの高い人をまず対象にはしていますが、誰が受けてもかまいません。インフルエンザワクチンは、前年の流行から予測して毎年新しく作られる (A型とB型の抗原を少し変え製造される) ので、毎年受ける必要があります。

 

肺炎球菌(Pneumococcus)

肺炎球菌は肺炎以外にも、髄膜炎、副鼻腔炎、中耳炎などの感染を起こす細菌で、予防接種は65歳以上の人、または喘息を除く呼吸器疾患、心臓血管系疾患、糖尿病、慢性肝疾患などの慢性疾患のある人を対象に接種されています。65歳以下で接種した人は65歳を過ぎて再接種します。

 

A型肝炎(Hepatitis A)

A型肝炎は、感染者との親密な接触や飲食物から感染する肝臓の病気ですが、接種対象者は慢性肝疾患のある人、男性の同性愛者、A型肝炎の流行している国・地域に旅行するか働く予定のある人です。

半年以上間隔を取って2回接種します。A型肝炎とB型肝炎が一緒になった予防接種 (Twinrix) は3回の接種が必要です。

 

B型肝炎(Hepatitis B)

B型肝炎は、性交渉や血液・唾液などを媒介にして感染する肝臓の病気ですが、接種対象者は透析患者、医療機関で働く人、性的に活発な人、男性同性愛者、B型肝炎感染者の家族、B型肝炎の感染者が多い地域へ行かれる方―― などです。

3回の接種が必要で、1回目と2回目は1〜2か月開け、3回目は1回目から4〜6か月後に接種します。

 

髄膜炎菌(MCV4)

髄膜炎菌は文字通り髄膜炎の原因になる細菌ですが、対象は脾臓を摘出している人、寮に住む大学1年生、髄膜炎の流行地に出かける人などです。

1970年代からある髄膜炎の予防接種 (MPSV4) とは別の、2005年に許可された髄膜炎の予防接種です。両方とも全てのタイプの髄膜炎菌に効果があるわけではなく、効果のあるのは4タイプだけですが、アメリカでよく流行る3タイプのうち2つをカバーしています。MCV4 の方が MPSV4 よりも効果があり、長く予防効果が持続すると考えられています。

 

帯状疱疹(Shingles= Herpes zoster)

60歳以上の人が対象です。1回の接種でかまいません。以前に帯状疱疹にかかった人も対象になります。

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この記事に関するご質問は日本クリニック(858) 560-8910まで。過去の「アメリカ健康ノート」の記事は、私のウェブサイトwww.usjapanmed.com またはwww.dockim.com で読むことができます。
 
(2009年1月1日号掲載)
 
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