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狭心症は、西側先進国に多い病気で、食生活、ライフスタイルとの関係が強く、生活習慣病の一つに定義されています。言い換えれば、食生活やライフスタイルを改善すると、ある程度予防が可能な病気ということになります。
日本でも食生活、ライフスタイルの欧米化によって狭心症の罹患者数が増えてきましたが、アメリカに長期滞在すると、狭心症のリスクがさらに高くなる可能性がありますので、読者の皆さんもご注意ください。
狭心症とは
狭心症は、虚血性心疾患の一つで、心臓を構成する筋肉 (心筋) に十分な血液 (酸素) が供給できなくなった結果として起こる病気です。
原因は、心筋に血液を供給する冠動脈の狭窄(きょうさく)か、冠動脈のれん縮(けいれん)ですが、狭窄を起こす疾患としては狭心症以外に心臓弁膜症、肥大性心筋症、解離性大動脈瘤などが、また、れん縮を起こす原因としては後で説明する異型狭心症以外にコカインやニコチンなの薬物使用があります。但し、狭心症はほとんどの場合、動脈硬化により冠動脈の内腔がコレステロールなどの粥(じゅく)状物で狭くなって起こります。
狭心症の症状
狭心症の主症状である胸痛は、胸部中央部の押さえつけられるような感じ(圧迫感)、詰まった感じ、締めつけられる感じ、焼けるような感じ、あるいは不快感として表現されます。こうした痛みや不快感は胸部だけでなく、首、顎、肩、腕(特に左側内側)、背部などにも感じられることがあります。時には、みぞおち辺りの痛みで胃炎・胃潰瘍と誤解されることもあります。胸痛は1〜5分程度持続し、休息やニトログリセリンで改善します。
胸痛以外の症状としては、しびれ、冷汗、嘔気、呼吸苦などです。
胸痛のトリガーは、激しい運動、精神的ストレス、食べ過ぎ、極端な気温(暑すぎたり寒すぎたり)、喫煙や飲酒などです。運動は階段の昇降、小走り、歩行程度でも狭心症を誘発することがあります。但し、不安定狭心症やれん縮タイプの狭心症は静かに休んでいる時でも起こります。
安定狭心症と不安定狭心症
安定狭心症は、胸痛が労作(ろうさ)時(運動時)に起こる狭心症のことで、症状発生時がある程度予測がつきます。安静時には胸痛は起こらないか、ほとんど無視できる程度です。
不安定狭心症はいつ胸痛が起こるか予測がつきません。安静時、または軽い労作時に起こる狭心症、初めて経験する激しい胸痛を伴う狭心症、以前からある狭心症の頻度が増加、持続時間が長くなったり痛みが激しくなった場合に不安定狭心症と呼ばれます。
安定狭心症の場合、狭窄部の冠動脈はプラークと呼ばれる線維性のキャップで覆われ、比較的安定しています。それとは対照的に、不安定狭心症の場合はそのプラークが破れて血栓ができやすい状態で、冠動脈内腔をさらに狭くする危険性があり、心筋梗塞に発展する可能性が高くなります。
不安定狭心症を疑った場合は、心筋梗塞、重症不整脈や心停止を起こす可能性が高くなるので救急室をすぐに受診します。
狭心症の診断
狭心症の診断は、まず胸痛の性情、部位、程度、頻度、随伴症状、誘発因子、リスク評価などの問診と診察によって始めます。安静時の心電図(ECG)、胸部レントゲン、血液検査などの基礎的な検査を行います。心電図は、それを取っている最中に胸痛がない限り、安静心電図だけでは狭心症の診断はできません。
狭心症を診断するには、負荷心電図を行います。通常は運動負荷心電図であるトレッドミル・テストを行いますが、診断の困難な人は、放射性同位元素を利用し、安静時と運動時で行う心筋シンチグラムで診断します。
運動負荷試験ができない人には、薬物を利用した負荷心電図や画像診断によって評価します。
心臓カテーテル検査(心カテ)は、以上のような非侵襲性検査で診断がつかなかった人や、狭心症のある人で今後の治療法を選択する目的で行われます。冠動脈の狭窄部の数、部位、程度により、経皮的冠動脈形成術、CABGというバイパス手術、あるいは薬物でのみ――といった治療法が決められます。
薬物療法
症状の改善のために最も使われているのはニトログリセリンです。ニトログリセリンの作用は2つで、一つは静脈を弛緩させることによって心臓に帰る血液量を減少させ、心臓の仕事量を減らします。
もう一つは、冠動脈を拡張することによって心筋への血流量を増やします。すなわち、心臓の仕事量を減少させる =酸素必要量を減らすか、冠動脈の狭窄部を通過する血液量を増やす=酸素供給量を増やす —— のどちらかの作用によって狭心症の症状は改善するのです。
アスピリンは胸痛などの症状を直接改善しませんが、血栓をできなくするので、特に不安定狭心症の治療には大切です。
β遮断薬やカルシウム拮抗薬は心臓の負担および酸素必要量を軽減します。β遮断薬は症状の軽減だけではなく寿命にも貢献します。カルシウム拮抗薬や亜硝酸薬は血管を拡張します。ACE阻害薬も血管を拡張し、症状と病後の状態改善を促します。高脂血症に使われるスタチン系の薬は粥(しゅく)状動脈硬化のプラークを安定化させるのではないかと考えられています。Ranolazine という新しい狭心症の薬も出ています。
侵襲的な治療
冠動脈の狭窄を物理的に広げる PTCA (経皮的冠動脈形成術)は、カテーテルを大腿動脈などから冠動脈に挿入し、カテーテルの先端にあるバルーンを膨らませて狭窄部を広げます。狭窄部を広げた後、その部位が再度狭窄しないようにステントという金属性の網状筒を留置します。
レーザー冠動脈形成術では、レーザーが先端に付いているカテーテルを冠動脈に挿入して狭窄部を広げます。アテローム切除術は刃が付いたカテーテルで狭窄部にあるアテロームを切除するのですが、これらの処置の後にもステントを留置します。
冠動脈のバイパス手術は、狭窄の進んだ冠動脈の近くにバイパスを作って、血路を変える手術です。
こうした侵襲性のある治療を選択する時は、前述した心カテという冠動脈造影を行って狭窄部を評価することが必要です。
成人 stem-cell を使って、人工的に新しい冠動脈バイパスを作る治療も試みられています。
異型狭心症はれん縮によって起こる狭心症で、カルシウム拮抗薬が著効なので、亜硝酸薬と組み合わせて使用されます。冠動脈の狭窄がある場合は、通常の狭心症と同じく、侵襲性のある治療の適応になります。
狭心症のリスク・マネジメントと予防
狭心症のリスクになるものは、喫煙、糖尿病、高脂血症、高血圧、あまり動かないライフスタイル、若年性虚血性心疾患の家族歴、肥満ですが、食生活とライフスタイル改善によって、こうした狭心症のリスクを下げることができます。
運動は、長期の治療と予防に効果的で、ゆっくり時間をかけて行うようにします。短時間集中型の激しい運動は逆効果です。
食事は、全体のカロリーを抑えたバランスの良いメニューで、動物性脂肪、コレステロールのあまり含まれていない食品を選びます。体重オーバーの人は時間をかけて適正体重に戻します。
すでに糖尿病、高脂血症、高血圧のある人は、医師の指導に従って、その病気のコントロールを十分に行います。喫煙している人は禁煙が最も効果のある予防法になります。
すでに狭心症のある人は薬物による予防が必要なので、主治医や循環器専門医の指示に従った薬を服用してください。
医療機関への受診が必要な場合
狭心症を疑ったら、まず自分の主治医に相談してください。不安定狭心症の可能性が高い場合は救急病院に行くことになりますが、すぐに連絡が取れるようであれば主治医に相談をし、そうでなければ救急病院に直行してください。
激しい胸痛が20〜30分以上続く場合は、心筋梗塞、解離性大動脈瘤など、生命に関係のある重症疾患の可能性がありますので、救急車を要請してください。
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