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kanazawa_new.jpg     金澤 信二郎

東洋医学修士(MTOM)

全米及びカリフォルニア鍼灸師免許取得。日本における経路治療の第一人者である首藤傳明先生に師事。和漢薬学会員。北米東洋医学会々員。東京教育大(現・筑波大)哲学科卒。現在、カフォルニア州のリッジクレスト(Ridgecrest) で夫婦で鍼灸漢方に従事。

ご質問、ご連絡はこちらまで


       
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現代の難病に挑戦しよう ・その4
       
糖尿病と肥満

糖尿病は古典中国医学では「消渇(しょうかち)」と呼ばれ、古くから存在が知られていましたが、昔は結構な生活をしている支配者層のかかる病気で、庶民には無縁の病気でした。文明の進化と共に下り始め、現在ではむしろ最下層の悩む病気とさえ思われます。

糖尿病は文明病です。文明は人間が穀物を栽培し始め、余剰穀物を支配する層が生まれて発生しました。そして、糖尿病は穀物や糖類、つまり炭水化物を取り過ぎるため、炭水化物の消化にあずかる膵臓(すいぞう)が疲弊して起こる病気です。

糖尿病の人には肥満の方が多いのですが、肥満だから糖尿病になるというのは単なる錯覚で、糖尿病になると体脂肪を消費できなくなり肥満してしまうのです。


なぜ「難病」か

糖尿病は「難病」です。かかっても「痛みや苦しみ」がないので、本人に命に関わるという自覚が少なく、食事制限を守らないからです。江戸時代の将軍の多くが糖尿病で若死にしています。糖尿病は生命に関わる怖い病気です。

日本では糖尿病の食事療法として総合摂取カロリーを抑える方法が主に取られています。しかし、これでは膵臓を痛める糖分を控えるという消極的な方法だけで炭水化物の量は減りません。アメリカでは2000年を機に、糖尿病の食餌療法は「炭水化物ゼロ」に変化しました。


炭水化物ゼロにしよう

わたしは患者さんにこう説明します。「あなた、指を切ったら傷口を手当てして、治るまで使わないようにするでしょう。血糖値が上がるのは膵臓が悲鳴を上げているのだから、膵臓を使っちゃいけません。膵臓を休めるためには炭水化物を取ってはいけません」。

日本人は米を「主食」と呼んで小さい時から米主体の食生活に慣れていますから、炭水化物ゼロの食生活など思いも寄らないもので、肉だけの食生活などは体に悪いだろうと思い込んでいます。でも、人類は長い歴史の中で、穀物栽培を始めるまでは炭水化物はあまり摂取できませんでした。

とはいえ、実際に「炭水化物ゼロ」の食生活は至難のワザです。栄養が偏らないようにするには、どうしても幾らかは炭水化物も取らざるを得ないからです。できることは極力ゼロに近づける努力です。そして、ビタミンと食物繊維が不足しないように補うことも忘れてはいけません。


テキメンに減量!

人間の体は食べ物が体内に入ると、一緒にたんぱく質や脂肪があっても、先ず炭水化物から必要なエネルギー源にします。炭水化物を使い切ってから初めてたん ぱく質や脂肪をエネルギー源にする訳です。必要なエネルギー量に間に合う炭水化物があれば、脂肪は蓄えられてしまいます。蓄えられた脂肪は、炭水化物が供 給され続ける限り、余分な炭水化物も脂肪として蓄えられ、利用されることなく増え続けます。炭水化物を取らなくなると、初めて体は体脂肪を消化し始めるの です。

今流行のアトキンス・ダイエットとかサウスビーチ・ダイエットはこの原理を利用したダイエット法です。試しに1週間「カーボ・ゼロ目標」の食事をしてみてください。たちまち1〜2ポンドは体重が落ちるはずです。体脂肪が消化されるからです。

問題は「米を主食とする」日本人の悲しさ、「カーボ・ゼロ目標」の食事は大変な努力が要りますし、胃腸の調子もオカシクなることがあります。「命に関わる病気」という自覚が必要です。

(2008年8月1日号掲載)    
 
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kanazawa_new.jpg     金澤 信二郎

東洋医学修士(MTOM)

全米及びカリフォルニア鍼灸師免許取得。日本における経路治療の第一人者である首藤傳明先生に師事。和漢薬学会員。北米東洋医学会々員。東京教育大(現・筑波大)哲学科卒。現在、カフォルニア州のリッジクレスト(Ridgecrest) で夫婦で鍼灸漢方に従事。

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抗ガン・サプリメント・その1
       

ガンを宣告された方はもちろん、その家族や友人の方も何か良い手立てはないかと探し回られる気持ちはよく分かります。それに付け込んでの悪徳商法もはびこっています。ガンに効くという食品補助物は毎年のように新しいものが出現し、その信憑 (ぴょう) 性も計りかねる状態です。

そこで今回は、ある程度信頼できる「抗ガンサプルメント評価ウエブサイト」を紹介したいと思います。

出版しているのはメモリアル・スローン・ケタリング・ガン・センターというガン研究では世界的にも有名な、しかも西洋医学一本ではない統合的な態度を保持している病院です。アドレスはwww.mskcc.org/mskcc/html/58481.cfm#AでSearch About Herbsというサイトです。コンピュータに記憶させておいてはいかがでしょうか。サイトは英語ですので、今回から数回、幾つかのサプリメントの評価を訳して紹介しましょう。

気を付けていただきたいのは、信頼できる製品を選ばれることです。例えば、こちらで風邪や流感に効くと売られているエキネシアの商品の40%は、エキネシアが入っていないという調査があります。

 

霊芝  Reishi Mushroom

  • 中国語ではLing zhi。
  • 使用目的:疲労、高コレステロール、HIVとAIDS、高血圧、免疫活性、炎症、スタミナ補強、ウイルス感染。
  • 臨床要約:キノコの傘と茎を使います。有効成分はベータ・グルカン・ポリサッカライドとトリテルペンとされています。霊芝はHIVとガンの患者の免疫刺激剤として用いられます。霊芝の抽出物質はマクロファージを刺激し、腫瘍壊死因子とインターロイキンのレベルを変えることができます。                               臨床研究で霊芝はプラズマの抗酸化能を増し、進展した段階のガン患者の免疫反応を増強しました。また、霊芝は血小板の凝集を抑えました。ネズミの実験では霊芝抽出物は化学療法による嘔吐を押さえるようです。                          副作用は鼻や咽(のど)の乾き、吐き気、嘔吐および他の消化器官障害です。理論的には霊芝は免疫抑制薬、血液凝集抑制剤やある化学療法物質を妨げます。

 

 

アガリクス Agaricus

  • 別名ヒメマツタケ、カワリヒラタケ。
  • 使用目的:動脈硬化、ガン治療、糖尿病、肝炎、高脂血症、刺激剤。
  • 臨床要約:アガリクスはブラジル原産の食用キノコで日本で薬用に栽培されています。動脈硬化、肝炎、高脂血症、糖尿病、皮膚炎、ガンの治療に用いられます。ハツカネズミによる実験の結果、アガリクスは免疫変調、抗腫瘍、抗異変誘発素などの要素を持つことが分かっています。                                    アガリクスの含むポリサッカライドと抗脉管形成化合物が抗ガン成分とみなされています。その免疫活性が脈管形成を直接抑える働きがあると考えられます。           最近の無差別研究では、アガリクスの経口投与はナチュラルキラー細胞の活動を増進し、化学療法下の婦人科ガン患者のクオリティー・オブ・ライフを増進しました。今後、これを再確認する研究が望まれます。                            また、アガリクスには抗糖尿病作用が動物実験で認められていいます。それに加え、タイプ2糖尿病の人間対象の研究では、アガリクス抽出物がインスリン抵抗を増強する効用を見せています。アガリクスを服用した後の肝臓の被害と死亡が報告されています。      免疫活性効果があるので、アガリクスは免疫変調薬を妨げる可能性がありそうですが、そうした研究はされていません。

 

(つづく)


(2008年9月16日号掲載)    
 
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東洋医学修士(MTOM)

全米及びカリフォルニア鍼灸師免許取得。日本における経路治療の第一人者である首藤傳明先生に師事。和漢薬学会員。北米東洋医学会々員。東京教育大(現・筑波大)哲学科卒。現在、カフォルニア州のリッジクレスト(Ridgecrest) で夫婦で鍼灸漢方に従事。

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抗ガン・サプリメント・その2
       

ガンを宣告された方はもちろん、その家族や友人の方が何か良い手立てはないかと探し回られる気持ちはよく分かります。それに付け込んでの悪徳商法もはびこっています。ガンに効くという食品補助物は毎年のように新しいものが出現し、その信憑性も計りかねる状態です。

そこで、前回に続き、ある程度信頼できる「抗ガンサプルメント評価ウェブサイト」を紹介したいと思います。出版しているのはメモリアル・スローン・ケタリング・ガン・センターというガン研究では世界的にも有名な、しかも西洋医学一本ではない統合的な態度を保持している病院です。アドレスはwww.mskcc.org/mskcc/html/58481.cfm#AでSearch About Herbsというサイトです。コンピューターに記憶させておいてはいかがでしょうか。勿論、サイトは英語ですので前回に引き続き幾つかのサプルメントの評価を訳して紹介しましょう。

ただ、気を付けていただきたいのは、信頼できる製品を選ばれることです。例えば、こちらで風邪や流感に効くと売られているエキネシアの商品の40%はエキネシアが入っていないという調査があります。

 

フコイダン Fucoidan: Sulfated alpha-L-fucan

フコイダンは褐色の海草の細胞壁に含まれる硫化したポリサッカライドです。血液の凝固を止める作用があります。試験管内での抗腫瘍と抗脈管形成作用が報告されています。この作用はナチュラルキラー細胞を刺激し、細胞増殖に関係のある「AP-I」(注※)を制御するとみられます。しかし、人間にも効果があることを裏付ける臨床データは今のところありません。副作用は報告されていませんが、フコイダンは他の抗凝固剤の効果を増強するかもしれません。

(注※) AP-I:細胞の脈管形成と変形に関係する要素。

フコイダンは腫瘍が細胞外壁の基質に接着することを防ぐことで、ガンの転移を防ぐことが観察されています。また、フコイダンは成人T細胞白血病の原因である「HTLV-1」人間T細胞白血病ウイルスの壊死(えし)を起こすことも観察されています。フコイダンには免疫を活性化する働きがあり、腫瘍細胞の死に決定的な働きのあるナチュラルキラー細胞の働きを活性化します。

  • 禁忌と副作用:理論的にはフコイダンはワーファリンやヘパリンといった抗凝血作用剤を増強するでしょう。副作用は報告されていません。
  • 使用目的:アレルギー、バクテリアによる炎症、高血圧、免疫作用刺激、炎症、ウイルス感染。

 

アオジル

金澤の註:日本で「青汁」といえばケールの葉のジュースであり、被爆者の健康維持に役立ってきましたが、最近、大麦の葉barley grassのジュースである「リョッコウアオジル」なる商品が出て、「アオジル」の内容が変わってしまいました。ケールも大麦の葉もスローンケタリングの薬草リストにはなく、カリフォルニアで極く普及している麦の葉wheat grassがリストに入っているので、それを紹介します。

 

麦の葉 Wheat Grass: Agropyron

麦の葉ジュースには幾つかの効用があるという触れ込みがあります。体内の毒や発ガン物質を中性化し、虫歯を予防し、高血圧を下げ、ガンやエイズの治療と予防を助けます。また、消化を助け、白髪を防ぎ、風邪、咳、リューマチの痛み、慢性疲労症候群、腫瘍を防ぎ、皮膚の状態を保ちます。

しかし、いずれの効果も臨床的な裏付けはありません。葉緑素の摂取が血液に良く、体内の酸化作用を増強するという信仰は科学的な支持を受けておらず、臨床的な裏付けもありません。

非常に小さな臨床試験で、21人の患者を対象に、潰瘍性大腸炎が麦の葉ジュースの摂取で症状を和らげた報告があります。目立つ副作用の報告はありませんが、生で麦の葉ジュースを摂取することは微生物による汚染が心配されます。


(2008年11月16日号掲載)    
 
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東洋医学修士(MTOM)

全米及びカリフォルニア鍼灸師免許取得。日本における経路治療の第一人者である首藤傳明先生に師事。和漢薬学会員。北米東洋医学会々員。東京教育大(現・筑波大)哲学科卒。現在、カフォルニア州のリッジクレスト(Ridgecrest) で夫婦で鍼灸漢方に従事。

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健康薬 屠蘇散
       

新年を迎え、待望の新大統領がなんとかしてくれるかと思いきや、景気回復は即刻という訳にはいきません。こうしたドン底景気の時期には、健康ほど大切なものはありません。やって来る厳しい1年の無事健康を約束するのが屠蘇散 (とそさん) です。

お屠蘇を飲む習慣の起こりは諸説あり、ある人は中国古代の名医華佗 (かだ) が始めたと言い、ある人は唐時代 (618-907) に孫思バク (そん・しばく) という医者が始めたと言います。

日本には平安時代の嵯峨 (さが) 天皇の時に入ってきて、天皇が正月に飲む儀式があったようですが、昭和天皇の時にはされなかったようです。江戸時代に将軍の侍医が将軍にお勧めすると、町の医者たちも患者さんに奨めて習慣ができたとされています。屠蘇散の名前はある人は蘇という邪を屠殺する意味と言いますが、ある人は孫思バクの住んでいた家を屠蘇庵と呼んだと言っています。

もう小正月も過ぎようとしていますが、まだ今年の健康を約束する屠蘇散を飲んでいらっしゃらないなら、是非お勧めします。

 

屠蘇散の処方

日本では一般に山椒 (さんしょう)、細辛(さいしん)、防風(ぼうふう)、肉桂(にっけい)、乾姜(かんきょう)、蒼朮(そうじゅつ)、桔梗(ききょう)、陳皮(ちんぴ)の8種なのだそうですが、私は古代中国の処方と言われる肉桂、山椒、白朮(びゃくじゅつ)、桔梗、防風、大黄(だいおう)、イタドリ(虎杖)、烏頭(うず)の8種、八神散を使っています。

コンボイ・ストリートなどの中国の薬剤を売る店で漢字で書いたものを見せると欲しいだけ手に入ります。安いものです。

散というのは粉薬ですから粗(あら)びきにしてもらって、お茶を漉(こ)す紙パックを用意して茶さじ1杯ほどを詰め込んで、味醂(みりん) 1合に放り込み、30分ほど待つと上出来の屠蘇散ができます。ちょっとこってり甘いリキュールといった洒落た飲み物ですが、飲み過ぎると酔いが冷めた時に頭痛を起こしますのでご用心。薬効を高めたい向きは、一晩冷蔵庫で寝かせると一層深みのある屠蘇になります。

 

屠蘇散の効用

さて、どうして八神散が健康に良いのか説明します。

  • 肉桂:体の熱エネルギーともいえる陽気を作るとされています。冷え性の方や、年齢のせいで手足が冷え、小便が近いとおっしゃる方には肉桂がお勧めです。一方、カッカしやすい、頭に血の上りやすい方にも、肉桂は陽気をあるべき場所に帰すと言われるのでお勧めです。
  • 山椒:体の冷えを取ってくれます。
  • 白朮:日本の漢方では代わりに蒼朮を使うので日本ではあまり馴染みのない薬ですが、中国古代医学の臓器の中でも腎(じん)に続いて重要な脾(ひ)を補強する重要な薬です。胃腸を強め、気力を高めます。
  • 防風:読んで字の如し、風邪を防ぎます。風邪だけではなく、中国古代医学が「風(ふう)」と呼ぶ体の中を移動する痛みや、手足の震えにも使われる薬です。
  • 桔梗:咳止めに欠かせません。それに腫れ物の痛みを取ってくれます。
  • 大黄: 便秘を防ぎ、解熱作用があります。
  • イタドリ(虎杖):血液の流れを改善し、解毒作用があり、痰を取ります。
  • 烏頭:猛毒で知られるトリカブトの母根ですが、薬局で売られるものは熱処理が施されているので毒はありません。ご心配の方は、使う前にちょっと火通しするか30分ほど煮るとよいでしょう。寒さに勝って体を温めるのが主な働きですが、痛み止めとしても優れています。


こうした薬剤が甘いアルコールである味醂と一体になって薬効を高め、上品な香りを放ちます。もっとも古代中国には味醂酒はなかったので、味醂を使うのは現代版です。お酒にお砂糖でも結構です。




(2009年1月16日号掲載)    
 
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全米及びカリフォルニア鍼灸師免許取得。日本における経路治療の第一人者である首藤傳明先生に師事。和漢薬学会員。北米東洋医学会々員。東京教育大(現・筑波大)哲学科卒。現在、カフォルニア州のリッジクレスト(Ridgecrest) で夫婦で鍼灸漢方に従事。

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鍼灸は個人ワザ
       

わたしは日本鍼灸漢方を看板に治療しています。鍼灸漢方は中国のものと思っている患者さんに「一体どう違うのか」と聞かれることがあります。

 

中国古典医学と中医学

確かに、鍼灸漢方は中国で生まれた中国の古典医学です。中国では1949年に共産党が革命を起こしたとき、過去の文化遺産は全て否定され放棄されましたが、その中には中国古典医学も含まれていました。

でも、実際に天下を手に入れた時、独裁者の毛沢東は、中国には現代医学を教える学校も、そこを卒業した医者もあまりに少なく、とても何億もの中国人民の健康の維持はできないことに気付いて、君子豹変とばかりに180度方向転換して「西洋医学と中国医学を合併した中医学を創れ」と号令をかけました。

そこで、毛沢東の気に入るように古典医学を作りかえたのが現在ある中医学です。カリフォルニア州ではこの中医学を英訳したTCMが主流です。

 

日本鍼灸漢方の特徴

鍼灸漢方が中国から日本へ輸入された時期は大宝律令が制定された時代 (701) とみることができます。

この時、日本に初めて全寮制医学学校が作られ、日本各地から優秀な子弟を集めて無料で鍼灸漢方を教育すると同時に、宮廷内に典薬寮という国立病院を作りました。教材や医療技術、薬材は全て当時の中国、唐からの直輸入でした。

わたしは歴史の中に日本人の性格を決定した2つの文化が存在したと思っています。

一つは奈良・平安時代の貴族文化で、およそ400年に亙って「風の音にも驚いて涙する」ほど繊細な国民をつくり上げ、あまりシツコク強い刺激は心身ともに受け入れない体質を作りました。もう一つは江戸時代のサムライ文化で、およそ300年に亙ってサムライ好みの「論より証拠」という理屈嫌いで実践好きの国民をつくり上げました。

このどちらも日本の医学のありように強い影響を与え、少ない刺激を旨として、また理屈抜きの経験的な成果を旨とする医学を育てました。

 

中医学の特徴

一方、中国人は物事を系統立てる理屈を重んじ、また強い刺激こそ効果があるという医学を育てたのではないでしょうか。

日本の漢方鍼灸師はどちらかというと直感や感触に頼る診断治療をしますが、中医学では八綱弁証といって患者から得たいろいろな情報を理屈で組み立て直して診断治療します。

鍼灸では中国流は『得気 (デーチ)』といって、ハリが起こすエグイ感じがないと効かないと言って「気を感じますか?」と患者に聞くのですが、日本人は一般にこの感じが嫌いで、そのため「気至る」といって鍼灸師がハリに伝わってくる感じを大事にして、患者が感じ取る前にハリは抜いてしまいます。

煎じ薬でも、中国の鍼灸師は大量の薬草を2度煎じて濃い煎じ薬を作りますが、日本の漢方では少ない量の薬草を軽く煎じて使います。

 

鍼灸は個人ワザ

中医学と日本鍼灸漢方とでは、どちらが優れているか、わたしはそれは言えないだろうと考えます。患者さんが好みや体質で選ばれるのだろうと思います。

わたしの診療所には中国系の鍼灸師も一人いらっしゃり、患者さんは私のヤワイ治療に飽き足らずそちらに鞍替えしたり、中国流の強刺激に悲鳴をあげてわたしのところに来たり、いろいろです。

一つだけ強調しておきたいのは、一度ハリを試して効かなくても、それで鍼灸は駄目だと判断していただきたくないことです。鍼灸は特に鍼灸師の個人ワザですので、ある鍼灸師に治療できないことも、他の鍼灸師は神業のように治すことが少なくないのです。


(2009年3月16日号掲載)    
 
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