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わたしは日本鍼灸漢方を看板に治療しています。鍼灸漢方は中国のものと思っている患者さんに「一体どう違うのか」と聞かれることがあります。
中国古典医学と中医学
確かに、鍼灸漢方は中国で生まれた中国の古典医学です。中国では1949年に共産党が革命を起こしたとき、過去の文化遺産は全て否定され放棄されましたが、その中には中国古典医学も含まれていました。
でも、実際に天下を手に入れた時、独裁者の毛沢東は、中国には現代医学を教える学校も、そこを卒業した医者もあまりに少なく、とても何億もの中国人民の健康の維持はできないことに気付いて、君子豹変とばかりに180度方向転換して「西洋医学と中国医学を合併した中医学を創れ」と号令をかけました。
そこで、毛沢東の気に入るように古典医学を作りかえたのが現在ある中医学です。カリフォルニア州ではこの中医学を英訳したTCMが主流です。
日本鍼灸漢方の特徴
鍼灸漢方が中国から日本へ輸入された時期は大宝律令が制定された時代 (701) とみることができます。
この時、日本に初めて全寮制医学学校が作られ、日本各地から優秀な子弟を集めて無料で鍼灸漢方を教育すると同時に、宮廷内に典薬寮という国立病院を作りました。教材や医療技術、薬材は全て当時の中国、唐からの直輸入でした。
わたしは歴史の中に日本人の性格を決定した2つの文化が存在したと思っています。
一つは奈良・平安時代の貴族文化で、およそ400年に亙って「風の音にも驚いて涙する」ほど繊細な国民をつくり上げ、あまりシツコク強い刺激は心身ともに受け入れない体質を作りました。もう一つは江戸時代のサムライ文化で、およそ300年に亙ってサムライ好みの「論より証拠」という理屈嫌いで実践好きの国民をつくり上げました。
このどちらも日本の医学のありように強い影響を与え、少ない刺激を旨として、また理屈抜きの経験的な成果を旨とする医学を育てました。
中医学の特徴
一方、中国人は物事を系統立てる理屈を重んじ、また強い刺激こそ効果があるという医学を育てたのではないでしょうか。
日本の漢方鍼灸師はどちらかというと直感や感触に頼る診断治療をしますが、中医学では八綱弁証といって患者から得たいろいろな情報を理屈で組み立て直して診断治療します。
鍼灸では中国流は『得気 (デーチ)』といって、ハリが起こすエグイ感じがないと効かないと言って「気を感じますか?」と患者に聞くのですが、日本人は一般にこの感じが嫌いで、そのため「気至る」といって鍼灸師がハリに伝わってくる感じを大事にして、患者が感じ取る前にハリは抜いてしまいます。
煎じ薬でも、中国の鍼灸師は大量の薬草を2度煎じて濃い煎じ薬を作りますが、日本の漢方では少ない量の薬草を軽く煎じて使います。
鍼灸は個人ワザ
中医学と日本鍼灸漢方とでは、どちらが優れているか、わたしはそれは言えないだろうと考えます。患者さんが好みや体質で選ばれるのだろうと思います。
わたしの診療所には中国系の鍼灸師も一人いらっしゃり、患者さんは私のヤワイ治療に飽き足らずそちらに鞍替えしたり、中国流の強刺激に悲鳴をあげてわたしのところに来たり、いろいろです。
一つだけ強調しておきたいのは、一度ハリを試して効かなくても、それで鍼灸は駄目だと判断していただきたくないことです。鍼灸は特に鍼灸師の個人ワザですので、ある鍼灸師に治療できないことも、他の鍼灸師は神業のように治すことが少なくないのです。
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