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企業活動の国際化に伴い、会計のグローバル化も着実に進んでいます。2005年より、欧州連合 (EU) 加盟25か国をはじめとする多くの国々は、自国企業に対し国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards, IFRS)による財務報告を義務付けていくことを決定しています。
一方、米国財務会計基準審議会 (FASB) についても、国際会計基準審議会 (IASB) と協調しており、米国基準とIFRSの収斂 (しゅうれん) を進めていく方針を既に確認しています。過去においても「国際財務報告基準 (IFRS) の概要」を述べてきましたが、今回は、IFRSの背後にある一つの重要な考え方である「資産負債アプローチ」について考察してみます。
収益費用アプローチ vs 資産負債アプローチ
財務諸表の最も基本的な構成要素は、貸借対照表 (B/S) および損益計算書 (P/L) です。このB/SとP/Lについては、「どちらの方が企業活動を判断する上でより重要であるか」という、古典的な議論が存在します。
その一つとして、一定期間の経営成績を表すP/Lの方が、補助的機能を持つに過ぎないB/Sよりも重要であるという考え方があります。
これによると、B/Sは収益と収入、費用と支出および収入と支出の期間的なズレを収容する「残高表」、つまり当期の損益計算の結果を翌期以降に引き継ぎ、翌期以降の損益計算はこの引き継がれたB/Sを出発点として行う「連結環」の機能を取っており、P/Lを「補助」する関係にあるといえます。
例えば、前払費用は、支払い(支出)は実施したものの費用として発生していないものとします。この支出と費用の期間的ズレを前払費用として収容し、翌期以降の損益計算の連結環として機能します。
従来の企業会計では、このように期間損益上の収益、費用をいかに計上するかという点を重要視してきました。このような考え方を「収益費用アプローチ」と呼んでいます。
一方、B/Sの機能を重要視する考え方があります。単なる残高表、連結環という損益計算書 (P/L) の隠れた存在であった貸借対照表 (B/S) のリアリティを回復し、貸借対照表 (B/S) 上の資産負債の本当の価値を表そうという考え方です。
これは、かつてB/Sを重視した債権者保護を基礎とした19世紀ドイツ商法的発想とは異なり、投資家に企業価値評価に資する有用な情報を提供するという投資家保護の観点に基づいています。このような考えを「資産負債アプローチ」と呼んでいます。
IFRSにおける資産負債アプローチ
以下、国際財務報告基準 (International Financial Reporting Standards, IFRS)のIAS16号「有形固定資産」に関する規定を1例として参照して下さい。
(例) 2008年4月1日に社用車を400万円で購入、耐用年数3年、定額法による償却。残存価格100万円。2009年3月31日現在の同年同型車両の中古車市場における売買価格は350万円。
この場合、国際財務報告基準 (IFRS) では2通りの方法が認められています。「Cost Model」と「Revaluation Model」です。
「Cost Model」では、従来と同様、耐用年数に渡って減価償却費を計上するだけです。
これに対して、Revaluation Modelによると(2)のような処理になります。
(1) Cost Modelによる2009年3月31日の会計処理(単位:万円)
原価償却費 100 / 減価償却累計額 100
(2) Revaluation Modelによる2009年3月31日の会計処理(単位:万円)
減価償却費 100 / 減価償却累計額 100
車両 50 / 再評価差額金(資本の部) 50
この会計処理により、貸借対照表(B/S)上の車両は時価(350万円)で計上されることとなり、資産の本当の価値で表されます。この会計処理の背後には「資産負債アプローチ」の考え方が存在しています。
この10年ほどの間に、この「資産負債アプローチ」に基づく会計論が台頭してきています。なかでも、国際財務報告基準においてそれが顕著です。金融商品や税効果会計、固定資産の減損会計などでは、その基礎となる会計観として「資産負債アプローチ」が採用されています。
会計基準の変更があった場合、その背後に「資産負債アプローチ」の考え方があることを意識できれば、より理解し易くなると思われます。
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