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nagano_face.jpg   永野 文久

米国公認会計士

昭和17 年生まれ。  昭和41 年東京大学卒。同年三和銀行入社。
昭和58 年米国公認会計士。

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米国大統領候補の税制改革案比較
 

今号では、民主党オバマ候補と共和党マケイン候補の政策提案のうち、税制改革案に焦点を当てて比較してみます。

米国の金融市場の混乱により、本来両者の立場が明確に違うはずの税制でも、両者の主張が多少トーンダウンして近づいてきたものの、依然としてどちらかの候補が当選するかによって税務に与える影響は小さくはありません。

最近の各党のプレスリリース、米国シンクタンクの試算等から下記の様な対比が読み取れます。

 

オバマ候補の税制改革案

オバマ候補は、高所得層には増税、中低所得層には減税を行い、税制の累進性を高めるよう提案してきました (高額所得層の区分は、年収25万ドル以上の夫婦世帯、年収20万ドル以上の単身世帯としている)。これは、現在の米国経済の大きな問題点の1つは、「中間所得層に自由に使える収入が少ないことである」という考えに基づいています。

提案の例として、勤労家族を対象とした還付可能なMaking Work Pay Credit という税額控除を新設することにより、$8,100 までの所得に対する所得税が相殺されるという案があります。配当・キャピタルゲイン税については、高額所得者には最高税率20% (現行15%) を適用する方針ですが、中低所得層には所得税・キャピタルゲイン税・配当税・社会保険税を含め、いかなる増税もしないとしています。

また、年収5万ドル以下の高齢者は所得税の申告を免除されるとしています。(当初は、高額所得層に対するキャピタルゲイン最高税率を28%、社会保険FICA 税を増税すると提言していたが、これらは見送りとなった)

オバマ陣営は、全体としてマケイン候補の提案よりも大幅な減税案になると見込んでいますが、本質は減税項目と増税項目を再編成した「税負担の再配分」と言えます。キャピタルゲイン税率の変更だけでも、1,000億ドルの税収増加が見込まれると試算されています。

 

マケイン候補の税制改革案

対照的にマケイン候補は税制改革の狙いを経済成長の促進に定め、所得税・法人税の税率を低く抑えるべきだと主張しています。法人の最高税率を35%から25%に引き下げることを公約の一つとしていることがその顕著な例です。

夏季のガソリン税減税、税制の簡素化、富裕層だけでなく中間層も課税の対象になりつつある代替ミニマム税 (AMT) の段階的廃止等も提言しています。ガソリン税減税については、5月下旬のメモリアルデイから9月上旬のレイバーディまでガソリン・軽油に対する連邦税を停止することを提案しました。

その他、学生ローン向けの優遇措置、扶養家族の人的控除の3,500ドルから7,000ドルへの倍増や、社会保険税のうちメディケア (高齢者向け医療保険)の予算拡大も提案しています。メディケアについては、夫婦で16万ドル以上の所得がある世帯に負担増を求めています。

ガソリン税減税の予想総額は80億~100億ドル。今回提案した減税の予想総額は1,950億ドルとなりますが、マケイン陣営は歳出削減や課税逃れの防止、「景気拡大に伴う税収増加」で対応できると説明しています。

ちなみに、副大統領候補に指名され、最近話題を呼んでいるサラ・ペイリン アラスカ州知事は、昨年11 月にアラスカ州において法人税の増税法案を成立させましたが、これは石油企業を対象としており、且つ国税と州税の課税スタンスは別物なので、ペイリン知事の起用がマケイン候補の税制改革案に対して影響を与えることはないと思われます。

 

主な税制改革案の比較(9/12 時点)

▽ 個人税率

  • オバマ候補 →10%、15%、25%、28%は維持。33%を36%、35%を39.6%。年収5万ドル以下の高齢者の所得税免除。
  • マケイン候補 → 扶養者控除額を段階的に3,500ドル~7,000ドルまで増加。

 

▽ 法人税率

  • オバマ候補 → 変更なし。
  • マケイン候補 → 最高税率を35%から25%に。

 

▽ キャピタルゲイン・配当

  • オバマ候補 →15%から20%に増加。
  • マケイン候補 → 変更なし。

 

▽ 遺産税率

  • オバマ候補 → 500 万ドル以上には15% (夫婦合算申告は1000万ドル)。※現行200万ドル以上に45%。
  • マケイン候補 →350 万ドル以上には45% (夫婦合算申告は700万ドル)。

 

 

▽ 代替ミニマム税

  • オバマ候補 → 変更なし。
  • マケイン候補 → 段階的廃止。2013年以降exemptionを5%ずつ増加。

 

 

▽ その他

  • オバマ候補 → 還付可能な税額控除Making Work Pay Credit 新設、1世帯1,000ドルまでを8,100ドルまでの所得に対する所得税と相殺可。還付可能な子供扶養者税額控除を1人1,500ドルに。
  • マケイン候補 → 夏季ガソリン税の停止。国内生産活動控除の廃止。耐用年数3、5年設備の初年度控除。還付可能ヘルスケア税額控除の新設。



※注意:このコラムは米国での税務に関する一般論的概説ですので、実際の案件については個別に専門家の意見を求められるようにお願いします。
 
(2008年11月1日号掲載)


 
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